611、悪の巨大ネズミロボをやっつけろ!‥‥でも骨格パーツは高いから暴力厳禁!!
「ブランさん!」
「ラフィ様、レイドボス管理はオウルでしたがやらかしたようで御座います。」
秘書業務に忙しいブランさんは、最初はキャストとして皆と一緒に出迎えたけどその後はパンタシアで仕事をしていた。パンタシアに新しく設置された秘書室、業務用の専用端末と睨めっこする間に緊急事態が起きちゃった。
スマイルにはオウルさんから平謝りするメッセが。実はレイドボスをサプライズで披露する予定だったけど、システム的な完成度はまだまだプロトタイプ。Aモードの試運転こそ済ませていたけど、Bモードで広場に投入出来ないように‥‥とかそういうシステム制御は後回しになっていた。
審査に間に合わせる為に遊園地開発は急ピッチ。先ずは今日問題なさそうに動かそうって方向で動いていて。でもレイドボスは目玉コンテンツ、お披露目したいなって皆勇み足。ミスが無ければ問題無し、ヨシッ!
安全性二の次設計が裏目に出ちゃった。いつだって初歩的なヒューマンエラーが現場で起こる。オウルさんが切っ掛けになったけど、オウルさんだけの責任じゃ無いよって返信しておいた。
広場でガオー!と暴れ回る巨大なネズミロボ。体長15m、骨格にシャーリア産の金の糸で出来た工業素材‥‥“ラプティ”。それを卸して貰って使っていた。軽い、頑丈、魔力伝達率が高いとミスリルには及ばないけど非常に上質で使いやすい。
まだまだラプトゥヌスの数を増やす為の交配実験が始まったばかり。将来的にはコストも大きく下がるってお話。ボク達がラプティを仕入れられたのは、スクエア連盟の一角にウマミMAX社が参画出来たお陰だった。
広場を中心にタマさん達が動き回らないよう、ヘイト管理リレーで釘付けにしていた。設計上、攻撃して来たヒトを狙ってネズミ風船爆弾を発射する。けれど1人狙いにならないよう、数秒狙った後に同じヒトにヘイトが向かないクールタイムが設けられるんだ。レイドボスだから、大人数で戦う事が前提だし。
立ち位置を調整しながら皆で攻撃を繋げれば、理論上その場から移動させずに倒す事も出来る‥‥筈。
ばら撒かれるネズミ風船爆弾は、緩く追尾しながら時間経過でBoom!!範囲にダメージを与えるんだ。範囲の広さと追尾も相まって、かなり動き回りながら戦わないと厳しい設計だった。
「ラフィ!緊急停止が効かないのよ!」
「元々バグが多かったんだ!特にBモードは未完成だしよ!」
ぶっ飛ばして中の骨格を壊しちゃったら大変だし、ちゃんとルール通りに戦わないと。
「戦って体力を削り切れば自動で停止する筈です!正規の手段で倒しましょう!」
『ワタシが周辺の被害を抑えましょうか。』
ネズミロボが振り回した腕が近くの民家を殴りそうに‥‥けれど空間が歪んで空振った。フィクサーさん!お願いします!
「いいかお前ら?!実弾撃つんじゃねーぞ!骨格たけーんだからな?!」
チズルさんも部隊の皆へ通信して、トイ・ウェポンを構えた。ボクもお気に入りの武器を構える。
Wレインボーライフル。2丁で1セットの小型ライフル銃、可愛い虹ステッカーがワンポイントオシャレ。ボクの撃った斜線上に虹色の綺麗な線が1秒残る。乱射すれば虹のリボンで戦場をメルヘンに。
そしてライフルと持ち替えずに使える、両肩と腰に装着出来る小型ミサイルポッド!ARの派手な小型ミサイルを同時に16発放って戦える。少し集中が要るけど、脳波で簡単操作。フルアーマー気分で大活躍出来る!
皆の武器は現実装分の最上位tierの武器種達。硬派路線のリアルウェポンシリーズ、華やか楽しいウルトラメルヘンシリーズ、光学兵器チックなサイバーミリテックシリーズ。3種類の武器を構えて大立ち回り。
辺り一面にばら撒かれるネズミ風船爆弾を、駆動魔具を駆使して逃げ回る。こうやって戦うのは広場のレイドボス戦の本来の戦い方じゃないけど‥‥走り回って逃げるのは一般のヒトには辛過ぎるし、1回やったら報酬が美味しくてももう参加しないと思うから。
駆動魔具で避けるとなると意外と大変で、思った以上に攻撃チャンスが少なかった。追尾する、結構長い間場に残る、爆発範囲が広い!
「厄介ね!ああ、3M50で蜂の巣にしてやりたいわ。」
「ダメですよ!流れ弾で遊園地がボコボコになっちゃいます!」
「ラフィ様。アリス嬢から要請が。今はBモードですが、難易度イージーでのAモード戦闘参加でしたら安全圏から支援可能で御座います。」
ボクの判断は一瞬。
「アリスさんが行けると思ったのでしたら、ボクも大丈夫です。現場判断でもリスクは少ないと思います。」
R.A.F.I.S.Sに他の皆からもOKの意思が流れて来た。直ぐに何処からともなく、迷彩で透明化したレールの上を走るジェットコースターがやって来た。空を飛んでいるように見えるジェットコースターは、審査員達とアリスさんを乗せて広場の外周をグルリと一回転!皆装置で体を固定しながらも、ジェットコースター備え付けの機関銃をネズミロボへ向けていた。
このモードのレイドボスは、ジェットコースターに乗ってボスの周囲をぐるぐる回りながら、派手に機関銃を撃ちまくって爽快感全開なバトルをしようってコンセプト。飛んで来る大量の風船爆弾を撃ち落としながら、ボスに沢山機関銃を撃ち込んでいく。
だから走り回る必要は無いし、ジェットコースターのスリルとボス戦の楽しさを味わえる。レベルに応じてプレイヤーの体力も増えるから、高レベルなら報酬の美味しい高難易度へ挑戦出来るんだ。
Aモードのレイドボスは参加する際、難易度を選択出来る。難易度毎に広場の周囲を回るジェットコースターのレールがボスへ近付いて、それだけネズミ風船爆弾が発射されてから迎撃するまでの時間が狭まった。
イージーなら1番外周をジェットコースターで回るから、ボク達がレイドボスを釘付けにして動かないように出来れば安全な筈。
「ハハハハハッ!!!これは面白い!!」
ユウヤさんの高笑いが聞こえてくる。ジェットコースターへ発射されたネズミ風船爆弾を撃ち落としながらも、皆の攻撃がレイドボスの体力をガンガン削って行った。
ボクも思いっ切り飛び回って戦うよ!アクアマリンとステラヴィアを起動、薄虹の水路の上を一気に走ってレイドボスの目前へ出る。2丁レインボーライフルでお顔を撃ち抜いてヘイトを買う。
発射されたネズミ風船爆弾をレイドボスの周囲を走り回って撹乱、その一部が巨体へ引っかかって爆発した。全身から発射した小型ミサイルが更に体力を削って行き、振るわれた腕の真下を潜って急接近。
「攻撃しても怯まないのが厄介ですね。」
『まぁレーザーを発射して機械的に判定を出しているだけですし。ジェットコースターで戦う事が前提ですから怯みモーションは未搭載なんですよ。』
肩の上へ着地したボクは、全弾一斉発射でヘッドショット!でも皆の撃つ機関銃程の火力は出ずに、直ぐに振り払われて近くの民家の屋根に着地した。
やっぱりジェットコースター組がメイン火力になっちゃう。アリスさん達が頼りだよ!
「ヒャハハハハハッ!!ヒィー!!ヒィー!‥‥ひっふ?!」
ユウヤさん大丈夫かな?日頃溜まっているストレスを、思う存分架空の弾丸に乗せて暴れられるここは最高の遊び場。ちょっと過呼吸気味なのが怖い。
「トリガーハッピーって言うタイプね。一定数銃を握ると平静を保てなくなる奴が居るのよ。」
ユウヤ自身も知らなかったであろう一面が明らかに。他の審査員達も戦っているけど、ちょっとユウヤさんのテンションに引き気味だった。
でもジェットコースターの支援もあってレイドボスの体力はどんどん削れていっている。暫くの戦闘後、遂にレイドボスはその場で倒れ込み転移で姿を消して行った。
「如何でしたでしょうか?当機はもっとAモードにスリリングさが要ると思うのです。大きな動きが欲しくなると思いませんか?」
「うーん‥‥爆弾を撃ち落とすだけじゃ無くて、振りかぶった手を止めるとか‥‥?シューティングゲームにはある演出ですよね。」
「失敗したらワンパンでジェットコースターごと殴り飛ばされて、バカみたいに吹き飛ばさせましょ。」
それじゃ危ないよ。でもまだ洗練出来るかなって思った。今回はBモードで戦ったけど、これぐらい暴れていないと戦ってる感が薄いかな?
怪我の功名、ミスも大事にはならなかったし新しい課題を発見出来た。元々レイドボスはまだまだ調整待ちのコンテンツ。もっとブラッシュアップさせないとね。
『現代人は誰もが辛口レビュアー、ニホンコク人は減点方式での冷静な評価と分析が得意です。そんな彼らを面白さでぶん殴って、噴出したドーパミンの快感を脳へ刻めなければ覇権コンテンツにはなれません。』
フィクサーさんもまだ上を目指せるって意見だった。にゅっ、ボクの影が狐さん型に。オボロさんも意見があるようで。
「ヨウジュツは元よりエンタメ向き。悪戯は妖の性じゃ。タマモに一枚噛ませてはどうじゃ?妾自身だから分かる、ラフィが可愛くお願いすれば聞いてくれる筈だのぅ。」
ボクの影が更に分裂して二股に、獅子の影が身振り手振り激しく。
「もう1体巨大人形を用意して、広場の真ん中で取っ組み合いをさせるのはどうだ?!味方の人形を攻撃すれば体力回復する仕様で応援するのだ!一部の攻撃は味方の人形無しでは防げない仕様にしよう!」
グジャさんの意見はボクをワクワクさせる。実現出来たらもっと面白そう。正義のヒーロー人形と皆で共闘!悪の巨大レイドボスを打ち倒せ!みたいな。
「グジャって見た目イカつい癖にやたら的確な案を出すわよね。」
「芸術にも秀でたケモノで御座います。脳筋にしか見えない風貌ですが。」
チズルさんはそんな様子を仲間達と見て、少し困惑した声で。
「そもそもラフィの影はどうなってんだよ。見る度にどんどん人外じみていくな。」
狐さんと獅子の影がチズルさん達を嘲笑う。うにょうにょ動いた後、しゅるんと元の影の形へ戻って引っ込んで行った。
「ボクの仲間達です。支えてくれるヒトが増えるのは嬉しいんですから。」
「‥‥まぁ、悪魔も連れてるし今更か。詮索しねーよ。だからタマもそんな顔すんなって。」
ボク達は一先ずジェットコースターの降り口へ向かった。上気したユウヤさんは良い汗かいたみたいで、さっぱり顔。アリスさんもちょっと汗っぽい匂いが。審査員の皆の顔は明るかった。
「いや、はや。すみません。つい興奮してしまって。シューティングゲームとか大好きなんですよ。しかし年甲斐もなくはしゃぎ過ぎました。部下達の視線がイタイイタイ。」
「‥‥こほん、これが当園のレイドボスコンテンツですの。まだ細かい調整が済んでいませんから、今後実装される際に内容の変更が入る可能性が御座います事を注意して下さいませ。」
アリスさんは謝らず、あくまで仕様ですって顔で通した。そう通せそうなら安易に謝らない。コーポ流の交渉術。誠実さを伝えるには謝罪が1番、でも簡単に下がる頭は価値を失いやすい。
今回は結果無事に終わったし、楽しんで貰えたようだったし。これで良いのかな?
今日の審査を一通り終えて、審査員達は帰って行く。とっても楽しんで貰えたようで、大満足って顔をしていた。
「ここの後に審査を受ける遊園地は可哀想ね。」
悪い顔のタマさんは尻尾でボクを突く。
「ボク達はここを1番にする為に頑張ったんですから。」
ボクも絶対に大賞を獲れるって自信満々だった。
「じゃあ早速、打ち上げと行きましょうか。酔いどれネズミ街で好きに騒ぐわよ。」
アリスさんの号令でお酒が解禁、タマさんとチズルさんの部下のおじさん達がはしゃいで声を上げる。酒気の漂う遊園地は大人の遊び場。ボク達未成年組は、甘いジュースとスイーツメニューを楽しんだのだった。




