607、アリスinワンダーランド開演っ!!
「やっとこの日が来たわね。」
アリスさん達と一緒に遊園地へやって来ていた。今日はついに“ギャラクシー・ファンファンパーク大賞”の審査員達を招く日。
世間ではS.N.S連盟がスクエア連盟へ改名した事、ウマミMAX社が連盟へ名を連ねボクのスポンサー入りした事で大賑わい。そんなスクエア連盟が関わった遊園地、“アリスinワンダーランド”もまた注目の的。
ハムハムで事前に紹介された遊園地の案内は表示回数100万越しの激バズ、期待を寄せる声が沢山届いていた。
勿論賞の選考は厳正に行われるけど、ギャラクシートイズ側からの期待も大きいと思う。アリスinワンダーランドが成功すれば、ギャラクシートイズからしても上がってくるマージンは大きいんだし、持ち運べる遊園地の宣伝効果も大きい。
「ま、この状況じゃ余程の事がなければ大賞は確実でしょ。ココを蹴ってどっかの無名な奴が作った遊園地に受賞させて何か意味ある?スクエアには嫌われるわ、世間から叩かれるわ、受賞者も何故かアンチに絡まれるわで散々じゃない。」
「ふふん、この状況を作るのも腕前よ。選ばれるか運否天賦、正々堂々勝負しましょう。学生コンクールならともかく、コーポのやり方じゃないのよ。勝って当然な状況を整えるのが大切なの。」
モモコさんからも日頃からよく聞かされていた。戦争は戦う前から決着が着いているもの。武力衝突はただの総決算に過ぎず、そこでの逆転を期待して挑むものじゃない。
企業戦争に慣れたモモコさんの言葉を、アリスさんも実践してみせていた。
『そういう所のセンスは彼ら企業社会のトップ層に通じるものがありますよね!将来的にはウマミMAXをシブサワ、ニッポンイチへ肩を並べる巨大メガコーポへ成長させる女帝となる素質があるのでしょう。』
こういうのをギフテットなんて言葉で言い表したくないな。アリスさんの努力あっての結果なんだから。あの事件以降、必死になって頑張ったんだなって顔を見れば伝わって来る。顔付きが一層凛々しくなったと思うんだ。
アリスinワンダーランドのエントランス、“ガイドラビット・フォレスト”。遊園地の出入り口になる施設で、大きな木の中をくり抜いて作られた風なデザインになっている。
持ち運べる遊園地は、ギャラクシートイズに認可を受ける事によって事業モードへ変更出来る。すると本来オモチャ箱の前へ立たないと中へ入れないのに、プライベートルームの技術を応用した出入り口を外の世界へ設ける事が出来た。
‥‥アリスさんが巻き込まれた事件は、この仕組みを特殊なハッキングで悪用して起こされたもの。あれ以来セキュリティ面でのアップデートが何度も行われたらしい。
ギャラクシートイズが、遊園地の入り口を一纏めにした施設を運営している。そこから行きたい遊園地のコードを提示して、お客さん達がドアを潜ってアリスinワンダーランドへやって来る仕組みになっているんだ。
皆の作った事業遊園地へのドアが沢山ある建物。今日は審査員達だけ特別に通行許可して、そこから来て貰った。
入り口のドアからやって来た審査員達をお出迎えするのは、この遊園地のマスコット達。可愛いウサギさん‥‥だけどどこかボクの面影があるような。アリスさんがデザインしたマスコット達。4頭身ぐらいで腰ぐらいの大きさ、抱いてお散歩してもOK。オウルさんの魔法で動いているから、繊毛AIよりもその動きは繊細。
オウルさんもお金になるって聞いてかなりやる気を漲らせていた。ダンジョンで使われた魔法を更に改良して、フィクサーさんの助言も受けながら魔法の秘奥をお人形さん達へ込めていった。
一度魔法を完成させれば定期的に魔力を補給するだけで、オウルさんは何もしなくても自律して動き続ける。オウルさん自身もボク達と一緒に審査員さん達を出迎える準備をしていた。
アリスさんはお姫様の格好、ボクはウサギさん衣装。頭にアニマトロニクスで生やしたウサギ耳がゆらゆら、懐中時計を腰に下げた可愛い赤黒のお洋服。男の子なのに‥‥でも童話のウサギさんもこんな格好だったし、これで良いのかな?
タマさん達はエキストラのヒト達が着る、賑やか楽しい童話の登場人物的な衣装だった。オーバーオール、チェック柄の派手なシャツ。羽飾りオシャレな中折れ帽子、大きく目立つ丸みを帯びた靴。猫耳に付けたトランプのイラリングがワンポイントオシャレ。
遊園地へ続くドアを潜ると、マスコット達がわちゃわちゃと寄って来る。早速審査員達が群がられる様子が監視カメラ映像に流れて来た。
「来ましたわよ。皆さん、準備は宜しくて?」
「大丈夫です!今日は目一杯楽しんで貰いましょう!」
案内はボクとアリスさんで、タマさん達は入り口で出迎えた後にエキストラとしてサポートを。審査員達は5人来るから、バラバラに動いて見回るかもしれないし。その時に案内役をお願いするかな。
入り口からはお菓子のようなデザインの長いエレベーターで下るようになっている。その間もひょこひょこ動くマスコットを撫で回したり、薄暗い木の穴の奥へ進んで行くワクワク感を味わって貰う。少し進むと軽快なBGMが聞こえて来て、ボクが収録した音声が心をノックするんだ。
『皆さん!ラフィですっ!この先にはとっても楽しい世界が広がっているんですよ?綺麗なお城、明るい城下町、お空のトランプの橋、大きなひまわりの大地、キノコの森に竜宮城!』
審査員達が早速ワクワクして来た心情がR.A.F.I.S.Sに伝わって来た。
『だけど、今この世界は悪いお人形さん達が暴れていて大変なんです!この世界を救ってくれませんか?』
『悪いお人形さんをやっつけて、この世界の隅々まで冒険して、ワンダーポイントで美味しい料理に可愛いお土産をお得にゲットしちゃおう!条件満たしてアチーブゲット!カッコいいから可愛いまで豊富なコスプレ衣装も!』
『今まで見た事の無い、不思議で楽しい世界へご招待ですっ!』
丁度ボクの案内が終わったタイミングで、パァッ!と明るいエントランスへ!
「お待ちしていました!アリスinワンダーランドへようこそっ!!」
ボク達は一斉に声を出し、両手を広げて歓迎した!
一緒に出迎える沢山のお人形達が手を振って、小踊りしながら審査員達に付き添う。その動きの軽快さに驚いた風だった。繊毛AIとは原理が違う、もっと滑らかで複雑な動きが出来るんだ。
モーションキャプチャーで動きを反映させたみたい。その動きは機械的じゃなくて生きているかのよう。長い年月を掛けてエルフ達は劇場でこの魔法を使う為に洗練させていった。背景を賑やかすモブ達が本当に生きているかのよう、その所作への拘りは何百年分も費やされた技術の積み重ね。
それがお人形達へ活かされていた。
「これは凄い。流石スクエアですね!技術力から一線を画すものを感じれます。ああ、すみません。今回審査員長を務めさせて頂くユウヤと申します。ギャラクシートイズ、宣伝本部長ですのでアリスさん。今後も宜しくお願いします。」
「こちらこそ、宜しくお願い致しますわ。ウマミ・アリスです。」
「ラフィです!この遊園地、初のお客様ですから!沢山楽しんで行って欲しいです。」
審査員のお姉さんの目線がボクのウサ耳を追っている。クールな顔なのに目線は正直。
先ずはここの紹介とルール説明を。
「アプリのインストールは宜しいでしょうか?」
「はい。アプリも中々良く出来ています。UIの洗練具合も、動作の軽さも。事前に説明には目を通しましたが、アプリ内の説明だけでも動画付きで分かりやすい。ショート動画形式なのも良いですね。」
もう審査は始まっていて、遊園地に関する全てが審査対象。勿論アプリもしっかりと審査対象になっていた。
「では改めてご説明を。‥‥それともスキップ致しますか?」
アリスさんの冗談めいた口調に、ユウヤさんは笑って説明お願いしますと促した。ここからはボクが説明するよ!今のボクは案内ウサギだもん。手にした懐中時計がパッとAR映像を投影した。
「ここではレーザー照射型のトイ・ウェポンを使って、遊園地内に沢山居る悪いお人形さんをやっつけるんです。コレをどうぞ、トイ・ウェポンを収納出来るリストバンドになります。」
リストバンドを手渡しつつ、世界観の説明を。
「ここはお人形さん達が暮らす平和な世界、ワンダーランド。けれど平和だからこそ刺激を求めてヤンチャをしたくなっちゃう困ったお人形さんが現れちゃうんです。この世界に招かれたアナタ達は、困った悪いお人形さん達をやっつけてめっ!と叱ってあげましょう!お礼にワンダーポイントをプレゼントします。」
身振り手振り、ウサ耳ゆらゆら。プレゼントっ!とウインクを贈ればクールなお姉さんも思わずニヤニヤ。
「沢山やっつければ経験値をゲット!レベルアップでもっと沢山の銃に、面白ウェポンをゲット出来ちゃいます!例えば‥‥」
サッと誰もいない、試し撃ち空間へ収納から大きな花火の筒を取り出す。パッと撃てば綺麗な花火が広がった!勿論AR製だから危険は無いよ。審査員達もおおっ!と声を出す。
「お気に入りの武器で思う存分活躍しちゃおう!えへへ、一緒に世界の平和を取り戻しませんか?」
細かい説明はアプリが分かりやすく教えてくれる。皆早く遊びたいって風に楽しげだった。
「ここ、ガイドラビット・フォレストを含め、園内には悪いお人形さんが寄り付かない安全エリアがあります。また、園内のアトラクション内以外の場所では一部の武器の使用に制限が掛かりますのでご了承下さい。」
今の花火をそこかしこで打ったら、園内が無茶苦茶になっちゃうからね。でも専用の空間が用意されるアトラクション内だったらOK。
基本的に施設内には悪いお人形さんは入って来ないし、施設内から撃てないよう射程内へ近付かない。また悪いお人形を含め、園内のお人形さんへ過度な接触をする行為は厳禁。抱き付いたり撫でたりは良いけど、殴ったり突き飛ばしたり蹴ったり。そういうのはアプリが感知して警告を出すし、悪質な場合は器物損壊で警察沙汰!
現実的なお話だけど、重要だからしっかりアプリ内でも警告が入っていた。
迷惑行為禁止、皆で楽しく遊ぶ空間だよ!
遊園地と言えば、アトラクションの待ち時間がそのまま退屈な時間になりがち。だからこそ、遊園地内に居る間は常に遊べる。そんな場所を目指して色々な技術を結集していた。
「では皆さんには先ずは武器を選んで貰います。こちらへどうぞ。」
エキストラの衣装を着たブランさんが、審査員達へ武器を配っていた。
「ワンダースマートライフル、ラビットガンM10からどうぞ。レベルアップ時には園内各地にあるウェポンカウンターにて追加装備の入手、又は装備の入れ替えが可能で御座います。弾薬の概念は御座いませんので撃ち放題になります。次のレベルアップでワンダーアサルト、ラビットガンM20が追加入手可能です。持ち運べる銃は2種類ですのでお気を付けを。」
収納内に銃器は2つしか入らないからね。一般的な開拓者でも2丁の銃を使い分ける戦い方をするヒトは多い。それ以上あっても使いこなせなかったり、いざという時にどれを使うかで迷って隙を生んだりするから。理に適った仕様なんだ。
初期装備は一般的なスマートライフルとハンドガン。レベルアップでより性能が上がったアップグレード版や、新武器種をゲット出来る。例えばラビットM20は、M10と比べて装弾数と射程が上がっていたり。そういうカタログ性能はアプリで確認出来た。
「武器のデザインも凝ってますね。ギャラクシートイズ製ではないようですが。」
「武器は全てオーダーメイドですの。勿論専用の生産ラインがありますので、多数のお客様に対応出来ますわ。」
モモコさんへ相談して、個人的に持っている工場で武器の生産をやってくれた。ボクがお願いしたら直ぐに良いよって。トイ・ウェポンを作るだけなら簡単だって言っていた。どのトイ・ウェポンも材料が硬化樹脂製、3Dプリンターで製作されたもの。実弾を発射する機構が無ければかなり安価に仕上がった。
‥‥因みに武器のスキンもワンダーポイント引き換え、又は課金で販売していた。カッコいい系からリアル系、お人形さんみたいなふわもこ可愛い系、ネタ系まで同じ銃種でも10種類ぐらいある。
3Dプリンター製な上、材料の硬化樹脂もシブサワから安く卸せるからそこは拘った。
早速審査員達は武器を手に遊園地へ。そして直ぐにびっくりした顔で遊園地を見上げていた。
制作側のボク達は見慣れているけど、初めてモモコさん達をここに招待した時も同じ反応だったっけ。
モモコさんが言うには、
『目の前に童話の‥‥いや、神話の世界があった。全てが幻想的で、美しくて、何よりも壮大だった。』




