606、スクエア連盟が贈るとびきりのオモチャ箱
「ラフィのスポンサーにならせて頂きますわ。」
アリスさんの提案に皆してびっくり顔。
スポンサー契約。声を掛ければ誰でも簡単になれちゃう‥‥訳でも無くて。特にボクのスポンサーになるのなら、S.N.S連盟の認可は絶対。共同で支えるにあたって信頼出来る企業か、企業社会の天辺に居るようなメガコーポ3社の厳しい審査を受ける。
重要なのはスポンサー契約を結ぶだけ結んで大した支援も無しに、ボクの上げた冒険の成果にタダ乗りするような事をしないか。ボクを支える為のスポンサーであって、利権を貪る為に寄り集まった訳じゃ無い。
「私はヤマノテシティへラフィがやって来た時、この命を救われたのです。巨大な犯罪組織が私の遊園地を踏み潰して、何もかもを壊してしまおうとした時にラフィは手を差し伸べて下さいました。」
アリスさんは1歩進んでボクを向く。
「まだ実績も経験も足りていない事は承知の上です。それでも、ウマミMAXはラフィを支えられる力があると信じていますわ。私だけでは無く、ウマミMAX社のお話ですから。」
アリスさんの連絡を受け、パンタシアに特別ゲストがやって来る。応接室のドアを開けて、アリスさんのご両親がやって来たんだ。
ウマミMAX代表、ウマミ・アジモトさん。
そして代表夫人にて、会社を裏から支える女帝。ウマミ・ジュリアさん。
「今アリスのした話はウマミMAXの総意と捉えて頂いて構わない。元々娘の遊園地事業は、アリスの成長を促す為に課題として任せていたもの。それがこうも本格的な企画案を出されてはな。親として応援するしかないだろう。」
「そうね。うふふ、強引なやり方でごめんあそばせ。でも、娘がS.N.S連盟の皆様に飛び込み営業するって聞いたらね。」
ジュリアさんは妙齢でも若々しい雰囲気で、気品のある金髪を靡かせる。女帝というか、女傑って感じでカッコいい。
『ジュリアさんは初めて見ますが、確かにアジモトさんが尻に敷かれてしまう訳ですね!覇気のある方ですよ!』
コソッと囁くフィクサーさん、けれど聞こえていたのかジュリアさんはボクの方へサムズアップを送ってウインクした。
レイホウさんとセイテンさんの視線がモモコさんへ向く。こういう機会じゃなきゃ、ボクのスポンサー入りなんて中々言い出せないし交渉テーブルに着くのも大変。アリスさんが切り開いたこの瞬間に、チャンスを見逃さずに堂々と乗り込んで来た。
『不意打ちでしょうが、コーポ社会はこういうモノです。やられた方が悪いですね。遊園地事業の相談も本心、隙あらばこの話をねじ込むつもりだったのでしょう。』
モモコさんは困った風にするけど、ボクの視線を受けて苦笑する。
「急な話だね。まぁ‥‥共同を言い出したのは僕だけど。」
「そうですわ。共同で遊園地事業を通して関わり合うのですもの。それもラフィが私と作った遊園地でしてよ。とっても深い関わり合いになると思わないかしら。」
そんな状況でウマミMAXをS.N.S連盟に深入りさせずに、遊園地の運営だけ共同だなんて薄情な対応。
S.N.S連盟はボクを支える為の集まりであって、利権を貪る為の集まりじゃない。それを最初に提案したのはモモコさん。そんなモモコさんがボクが関わる利権に一枚噛むだけのポーズを取るなんて出来ないよね。
つまりこの提案、断れない。
やっぱりオウルさんの魔法をアリスさんに掠め取られたような状況を前に、モモコさんは動揺を隠せずに引くに引けない状況へ追い込まれしまっていた。ここでこの話にしっかりとした形で関われないと、オウルさんの魔法の権利を今後共同で使おうって交渉が出来ないから。
‥‥けれど一つ、モモコさんは大きな勘違いをしていた。
アリスさんはそもそもオウルさんへ協力を募っただけで、魔法の権利を独占的に買ったりしていない。S.N.S連盟が値段を付けていなかったから、掘り起こして価値を定めただけ。何事も先駆者がイニシアチブを握るけど、オウルさんがS.N.S連盟へこの魔法を売ろうが止める理由は無かった。
ブラックボックスアーツを買い叩いて権利を独占。良くある話なだけに、アリスさんがそうしたってモモコさんは思い込んでしまったように見えた。アリスさんが敢えて仕込んだブラフ。
流石にシャーリアで見つかったブラックボックスアーツを、勝手に買って独占したら揉めるのは明白。けどオウルさんの素っ気ない態度も相まって、完全に乗せられてしまった。
でもこの状況はアリスさんとボクの遊園地計画に有利に動いているし、ネタバラシをしちゃう訳にもいかないよね。結局モモコさんはアリスさんに勢いで押されて、共同運営とスポンサーの件に首を縦に振るしか無かったのだった。
「モモコが認めるのなら私は構わん。ウマミMAXは食のエキスパート、深未踏地の開拓にしても現地の住民との交流にしても頼れる企業になるだろうからな。」
「私も同じさ。折角同じ連盟になるんだ。赤翼とのコラボ企画とか興味ないかな?」
2人もボクの顔を見て賛成意見、スポンサーが増えるのは嬉しいしアリスさん達なら歓迎だよ。
「結局ラフィ様の意向が最重要で御座いますので。ラフィ様が信用すると言えば問題ありません。」
ブランさんも賛成してくれて、改めてボクはアリスさんへ手を差し伸べた。
「でしたら、宜しくお願いします。」
「こちらこそ、宜しくお願いしますわ。貴方達の食をサポートしますから。どんな料理でも食材でもお任せですの。」
今まではシブサワフードカンパニーや、ニッポンフーズの系列店をシャーリアへ展開していた。けれどエルフ達の部族的な食生活に対する配慮や対応が正直難しい所もあった。
脂っこいご飯のせいで将来的に生活習慣病が危惧されていたり。けれど系列店舗が扱う食材は生産区で纏めて用意された規格品。フットワークは軽くないし、その為に生産ラインを増やすとなると投資が嵩んだ。
そこを食の専門家のメガコーポが負担してくれるのなら、よりエルフ達へ寄り添ったご飯を提供出来ると思う。やっぱり食に特化した企業だからこそ、生産ラインのフットワークの軽さは多角化したメガコーポの傘下企業を凌駕するんじゃないかって。
喜ぶボクを見て、モモコさんもまぁ良いかと構えてくれた。あっ!そうなると連盟の名前をどうしよう。
「S.N.S連盟じゃウマミMAX社の社名が入りません。名前を変えますか?」
スポンサー契約に至って、本格的な話し合いは後日。だけど先ずは名前から決めないと。先に名前が決まっていた方がサクサク話が進みそうだし。
「S.N.S.U連盟じゃダメかい?」
「前から思っていたけど、1番手前のSがシブサワ、最後のSが赤翼だよね?同じ連盟内でそういう順位付けは良くないなぁ。」
「それにシンス連盟‥‥というのも語感が悪いし妙だ。根本的に呼び名を変えようか。」
「4社でラフィを支える連盟でしょう?スクエア連盟なんて如何かしら。」
スクエア連盟‥‥語感が良いし分かりやすいな。
「ボクはアリスさんの意見に1票です!」
「ふふ、ラフィは分かってるわね。単純明快がキモなのよ。」
結局スクエア連盟に名前が決まった。
遊園地事業計画に対して、シブサワと提携して計画を進める事が決定。でもボク達の拘りで、運営に対する提携がメインで遊園地の工事や備品の管理はこっちでやる事に。
運営もアジモトさんが用意した専用部署が、シブサワと連携を取って動いてくれる話になっていた。アリスさんが運営責任者だけど、下で働くヒト達は沢山要るからね。
オモチャ箱の中の遊園地の運営は、シブサワからしても前例が無い事業。普通は遊園地を作るのなら規模は欲しいし、そもそもギャラクシートイズへマージンを支払わなきゃいけない場所に開園なんてしない。
でもここだかこそ出来る仕掛け満載な遊園地にするんだ。結局は趣味でやっている訳で、ついでに皆にも楽しんで欲しいって気持ちで作り上げていた。
仲間が増えた事で一気に遊園地プロジェクトが動き始める。欲しいと思った物は何でも用意してくれるし、それでいてちゃんとコストカット出来る所は皆で話し合って詰めていった。
「遊園地なんですし、お食事だけじゃなくてワンダーポイントをコスプレと引き換えたり出来るのはどうですか?AR衣装ならデータをアプリに入れるだけで大丈夫です。」
「ARでマスコットを投影する小型ドローンを配備しよう。より一層賑やかになって良いじゃないか。」
「赤翼がこの為にデザインしたタクポで遊園地を周遊出来るようにしましょう。空から眺める遊園地もまたオツなものですわ。」
「ぬいぐるみが店番する屋台をそこかしこに置きましょ。駅前とかにある無人屋台と同じ機構の物使えば店番が何でも大丈夫よ。」
「アチーブ実装するのは良いけどよ。何百種類考えないといけないんだ?AI自動生成した分だけで良いじゃねぇか。」
「マスコットを主役にした短編動画をTUBEとハムハムに流そうか。そういう宣伝はニッポンイチに任せろ。」
「ホテル滞在で経験値とワンダーポイント入手量にブーストが掛かる仕組みを取り入れましょう。Pay to Winは正義でしてよ。」
「パレードはどうでしょうか。雑魚敵群がるパレードをレイドボス扱いにして、思う存分銃で薙ぎ払って蹴散らしてやるので御座います。」
次々と面白そうな案が出ては全部盛りな勢いで追加されて行く。アプリ開発チームもスクエア連盟から人員が出されて、ブランさんとフィクサーさんを中心に仕様が盛り込まれていった。デバッカーのタマさんが毎回ハッキングして脆弱性を指摘、イタチごっこなセキュリティ対策合戦が裏で始まっていた。
スクエア連盟から出された人員は少数だけど皆精鋭。なのにタマさんのハッキングを止められずに舌を巻いていた。在野にとんでもないハッカーが居るぞって。
ボク達で作った街だけでは、やりたい事を詰め込み切れるスペースが足りなくなって。
「ここに初めて来た時は色んなマップに飛ばされました。同じようにマップを複数用意しましょう。」
ボクとアリスさんで意見を出し合って、特殊ステージがドンドン追加!ステージ制作をチズルさんの部下のおじさんや、同好の皆が参加して急ピッチで仕上げて行く!ギャラクシートイズへガンガン追加の資材を発注して、届いたアトラクションパーツが所狭しと組み上げられていった。
アリスinワンダーランド、テーマは冒険!
冒険して成長して全部を楽しみ尽くす新感覚遊園地!!
「これはこれは。」
「想像以上の出来栄えだ。」
「早速ビャクヤを連れて遊びに来よう!」
モモコさん達も満足させる、輝かしい遊園地が出来上がったのだった。
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