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601、守護天使を支える巨柱がまた一つ

式典が終わった後、モモコさん達がボクを呼んだ。タマさん達とも合流して、パンタシアの応接室へ。急にどうしたのかな?


「ラフィ様の今後に関わる話で御座います。当機も何度か打診を受けており、丁度良い機会ですので話を進めてしまおうと。」


首を傾げるボクの前、タマさんがブランさんを小突く。


「アンタね。ラフィが関わる話を裏で勝手に進めんじゃないわよ。ホウレンソウは敏腕メイドさんにとって難易度高かったかしら。」


「期待させておいて破談になったらラフィ様が悲しむでしょう。重要な話ですが、緊急性の薄い話に御座います。」


応接室のドアを開けると、モモコさん達が既に集まっていた。待たせちゃったかな?ごめんなさい!


「今来た所だよ。ラフィは式典で忙しかったんだ、謝らなくていい。」


モモコさんは気楽そうに構えていた。深刻な話じゃなさそうで良かった。そして早速セイテンさんとビャクヤさんがボクの前へ。


「えー。今回のプロジェクトを通して、ラフィという人物の多くを知れたと思っている。我々赤翼はその在り方を高く評価したのだ。」


「そうですわ。その力、その勇気、そのカリスマ、そして結果を出す実力。可愛いと崇高を併せ持つ貴方に惚れ込んだのです。」


急に褒められてびっくりするボクへ、差し出された2つの手。


「是非とも我々赤翼ホールディングスにも、ラフィを支えさせてくれ。」


「私達もスポンサー企業の一つに加えさせて頂きたいのです。勿論、判断を急かすような事は致しませんから。ご一考願いますわ。」


スポンサーになりたいの?急な話、でも迷うのは失礼だと思うから。赤翼の皆と一緒にお空を冒険して、彼らの事をボクもちゃんと見ていた。


冒険の為にお金を惜しまず、魔王が相手でも臆さず戦う。ボクの正体を知って尚支えたいと伸ばされた手を、断る理由は無かった。


「ありがとうございます。ボクからも宜しくお願いします!」


その手にぴゃっ!と飛び付いた。2人の顔が明るくなって、モモコさんとレイホウさんは苦笑い。


「ラフィを中心にS.N.S連盟を組んだものの、正式にスポンサー契約を結んだ訳じゃなかったからね。」


「今回のプロジェクトだけの連盟だと考えていたが、今後も長い付き合いになりそうだ。セイテン代表は強引な男だよ。」


スポンサー企業が増える程、ボクの冒険の成果は山分けになっちゃう。でもボクからしたら多い程により強いバックアップを受けれた。


「ラフィ様は企業連中の利益構造などお気になさらず。元々シブサワ独占にするには大き過ぎた富で御座います。数社で分配して丁度いいのです。」


2人と握手するボクの頭をタマさんが撫でる。


「またラフィの仲間が増えたわね。これもアンタの冒険の成果よ。」


「えへへ。皆でこれからも未踏の大地を冒険するんですから。」


話が決まったらセイテンさんの動きは早い。


「じゃあ早速赤翼の新製品のイメージキャラクターとして採用だ!CMを撮影するぞ!それとラフィのボイスで話すタクポ機能AIも前々から構想を練っていたんだ!」


ブランさんへ交渉。モモコさんとレイホウさんが横槍を入れて、ボクのスケジュールが過密になっていく。タマさんが週休制度を申し入れて、ボクもシャーリアと自由に関われる時間が欲しくて乗っかった。


「それに、ゲームして1日過ごしたり。都市を観光したり。ヒトらしい生活もしたいんです。ですから定期的にお休みを頂きます。」


「いやいや!申し訳ない。つい気持ちがはやってしまった。勿論ラフィの予定が最優先で構わないとも。ブランとよく交渉しておくよ。」


と、ビャクヤさんがボクへコードを送った。


「赤翼はラフィさんへスポンサー契約を結ぶ手土産として、都市用にカスタマイズした最高級タクポを贈呈致しますわ。」


これはボクの生体認証に紐付いたタクポのキーコード。”ピュア(澄き通った)クラウン(君主)“って言うんだ。


『赤翼タクポブランドの中でも一級品、ピュアシリーズのラフィさまカスタム品と言った所でしょうか。メガコーポの代表が趣味使いの1品として持つような物ですね。』


ビャクヤさんは自慢げに紹介してくれた。


「征天丸をベースに、都市・深未踏地探査両用品として再設計したタクポで御座いますの。A.M装甲で魔法の影響を防ぎ、5重のバリア装甲で物理的な衝撃もシャットアウト!その防御性能は軍用品にも劣らない性能ですわ!」


パッと表示された外観は美しい白と青、そして金に塗装されたタクポ。サイズ感は普通のタクポサイズだけど、空間拡張技術とプライベートルームに使われるP.A.R.S技術の融合によって内部はかなり広いらしい。


簡易的だけど異空間が内部に広がっているような。正に移動式別荘。そんなタクポは将来的に、深未踏地でキャンプをする上流階級へ売り込む為に設計された。空からの深未踏地開拓を目指す赤翼なりに、その後を見据えた技術開発をガンガン押し進めているようで。ここで培った技術が赤翼PMC空挺旅団大隊で採用されたり‥‥なんて事も多いのだとか。


「深未踏地の開拓性能は征天丸以上。今回の探査で征天丸がギガスの付属物となって以降も、その可能性を更に広げるべく開発が進んでいましたの。他のピュアシリーズと比べて、より挑戦的で革新的な機体に仕上がりましたわ。」


パンタシアがあっても、ドアを取り付けられる場所が常にあるとは限らないし。それに深未踏地にドアを貼り付けるのも、ドアを攻撃されるリスクを考えると最低限にしたい。パンタシアのドアと繋がったキャンピングカーもあるけど‥‥車が通れる地形って殆ど無いし。あくまで都市警戒区域内の長距離移動用だからね。


今回の探査でも征天丸はすっごい便利だった。これからも私用で使えると考えたら、ワクワクしてくるお話だった。


「良いもの貰ったわねー。それ買ったら何億するやつかしら。」


「ラフィさん専用品ですので市場価格はありませんの。ピュアシリーズの相場は30〜50億円ですわね。それそのものが資産として大きな価値を持つ、所有する事をステータスに出来るブランド品ですもの。上流階級の中でも更に上澄みを目指したい、格を周囲へ分らせたいお客様向けの商品ですわ。まぁ、ピュア・クラウンは現在カタログにある機体よりも更にコストが掛かっていますから。設計思想を受け継いだ機体の量産体制が整うのはいつになる事やら。」


そ、そんなに高いの?!うう、乗り回して良い物なのかな?何処かに飾ったりぃ‥‥!


「勿論永年修理費用はこちらで負担しますわ。深未踏地開拓用なんですもの。壊れてナンボ!当たって砕けても懐はノーダメージ理論でお願い致しますの!」


良い実地データが取れればノーダメージですの!と技術者な顔をするビャクヤさん。当たって砕けろは赤翼の中では合言葉みたいなものなのかも知れない。でも敢えて突っ込むよ!


「砕けちゃダメですよ!!ですが、ちゃんと冒険する時は使わせて貰います。」


実際に使ってデータを集めるのは確かに大事な事。将来的に量産体制を整えるのにも、実際に深未踏地にどれだけ通用したかはとっても大事。何が出来て、どんなアクシデントに弱かったか。使ってみないと机上の空論で、沢山量産した後になってとんでもない脆弱性が見つかったら大事になっちゃう。


「ふむ。次に我がお守りをするまん丸はコレか。おっ?巻きやすいよう突起が付いておるな。前に出したアンケが反映されたか。」


ブランさんがスポンサー契約に対して話を纏める間、赤翼からのプレゼントに話題が尽きなかった。


そして早速ピュア・クラウンのお披露目が行われる。後で記者達の前で正式にやるけど、先ずはボク達だけで確認しないと。


「ブランさん、ちょっと行ってきます!」


「大丈夫で御座います。後程ラフィ様へ内容を共有致しますので。」


頼れる秘書のメイドさんは手を振って見送ってくれた。ビャクヤさんに連れられ、宮殿の中庭に移動する。既に式典が終わって、エルフ達はそれぞれ日常に戻っていた。貴族達は宮殿の管理がお仕事だから、宮殿前の式場の片付けをやっていて。


中庭に現れたボク達の様子を窺いに、ロゥさんとアッハさんがお付きのヒトと一緒にやって来ていた。


「それでは呼び出しますの。ラフィさん、コレをどうぞ。」


ビャクヤさんに手渡されたのは、ピュア・クラウンのミニチュア。タマさんも興味津々に覗き込んで、尻尾の先でミニチュアを突く。


「コレを放ればデカくなるのかしら?」


キャンピングカーもそういうタイプだよね。空間圧縮技術だっけ。本物は異空間にあって、手のひらに収まるミニチュアはアイコンのようなもの。スマイルのアプリみたいに、アイコンを起動するとポンと異空間に収納されていた実物が飛び出す。だから重量は軽いし、簡単に持ち運べるんだ。


「それは一昔前の技術ですわね。確かに便利ですけど、紛失しやすい欠点もありますの。起動キーを買い換えれば、生体認証に基づいた同じ物を呼び出せますけど‥‥紛失したキーが原因で、盗難ハッキング被害が起きた事例もありますわ。」


呼び出すのに収納から取り出さないといけなかったし、偶にズボラなヒトがそのままポケットに突っ込んで無くしちゃったりするって。タマさんを見上げる。そう言えばこの前キャンピングカーをしまった時、小さくなったミニチュアをパーカーのポッケに突っ込んでたような。


タマさんは目を逸らした。


「コレはスマイルの収納脳波感知システムを応用して作られた、収納に入れたまま呼び出し操作が出来る次世代型の起動キーですの。これなら紛失の可能性を無くせますし、よりスマートに呼び出せますわ。」


試しに収納へピュア・クラウンのミニチュアをしまいながら、スマイルにポンとインストールされた操作アプリを起動した。


目前にピュア・クラウンのARが投影されて、邪魔になる物が無いか僅かな時間でAIが判別。幻想的な濃い青と金の粒子のARを纏いながら、僅かにひやりとする冷気と共に姿を現した。


「おおっ?!」


「なんじゃ?!」


ロゥさんとアッハさんの驚く声。


「わっ?!凄い!!」


ボクの声も一緒になった。呼び出した時のすっごい高級感のある演出がカッコいい!


「ラフィさんのファンタジアを参考にさせて頂きましたわ。私はあの幻想的な霧が大好きでしたの。」


タマさんも上機嫌に口笛を吹き、フィクサーさんも思わずホロウインドウから飛び出して実体化。楽しげにピュア・クラウンを見上げていた。


「うぬぅ、この高級品。巻いてしまって良いのか?躊躇してしまうな。」


「大丈夫ですわ。先程も説明しました通り、余程の事が無ければ傷付きませんもの。ミサイルの1発にも耐える設計ですのよ。」


「にゃは、理論上はですね!征天丸の時も何回かそんな自信満々な文句を聞かされました!」


フィクサーさんに茶化され、ビャクヤさんはヤレヤレと。


「赤翼は常に業界の最先端を行きますの。その時の最新を自信たっぷりにお届けするまでですわ。」


そんな様子をタマさんはジト目で見やっていたのだった。

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