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547、高度6000mの上空、更に3000m上の頂を目指す

ギガスが山の中腹へ着陸、すぐさま軍事基地の建設が始まった。元々簡易的な拠点をパパッと組み立てられる、便利なキットが持ち込まれていたからガワはあっという間に完成。


都市防壁並みの最高硬度のバリア装甲が全方位を覆って、例え魔法雲の中を突き破って攻められても防げるよう防御を固める。


「今回造るのは軍事拠点、簡易的な基地じゃないのよ。これから沢山資材を搬入しなきゃね。」


ドラゴンさんとシグさんが顔を合わせ、合同で建設を進める方針で行くようだった。レイホウさんもニッポンイチのPMCに連絡を取って、工事のお手伝いをするみたい。ミニフィーで手伝おうとしたら、ボクは大丈夫だって言われちゃった。


「ラフィは冒険を続けていて良い。必要があれば応援も用意しよう。工事を手伝わせるよりも、開拓を任せた方が適任だろう?」


モモコさんはウインクを送って、ボクも笑顔で返した。


「じゃあこのままホワイト・シーを見て回って来ます。タマさん、皆!行きますよ。」


タマさんの腰に抱き付いてグイグイ。行くよっ!と押せば尻尾がボクをくすぐる。


「分かったから。どの道周辺の事もあやふやなまま建設だけ進めんのも良くないわね。先ずはこの山を‥‥何て名前で呼べば良いかしら。」


タマさんの視線がボクを見て、ブランさんもボクを覗き込む。ボクが決めて良いの?でもこの山とか、あの山じゃ不便だよね。フィクサーさんがホロウインドウの中で便利なラテン語辞典を開いてくれた。


「じゃあ、カンディダで。とっても白い物を指す言葉みたいです。」


和名で大福山とかでも良いけど、何となくここの神秘的な雰囲気に合わないと言うか。ホワイト・シーの大福山とか言っちゃうと、何だかカッコ悪い。


モモコさんも受け入れてくれて、


「じゃあカンディダでいこうか。ニホンコクの一部じゃない、異界っぽさが良いと思うよ。」


「ありがとうございます。自分で考えた名前が地図に載るって良いですよね。」


きゃっ!と笑って皆より数歩先へステップを刻む。早く行きましょう!と誘うボクはふと思い出してモモコさんへ手を振った。


「すみません、ミライさんをお借りしても良いですか?開拓者志望ですし、一緒に冒険したいです。」


モモコさんの後ろで黙って控えていたミライさんは、思わず自分を指してビックリ。モモコさんはミライさんの背中を押した。


「行きたいのなら構わないさ。ここは安全だからね。それに護衛はキミ1人じゃない。」


スゥ、と光学迷彩で姿を消していたコウジさんが現れた。あっ!お久しぶりです!


「良いんですか?ええと、でしたら。」


ミライさんはぺこぺこしながら側を離れる。最後にコウジさんとモモコさんへペコっと深くお辞儀をしてから、ボクの元へ駆け足で。


「誘ってくれてありがと!後ろに付いて見てるだけでも色々あってドキドキだったけど。今からあの綺麗な世界を冒険出来るんだ!」


そんなミライさんへタマさんが警告を飛ばす。


「言っとくけど、さっきも危なかったわよ。参加するなら自己責任、基本自分の身は自分で守る。自立した者による連携プレイが前提なの。社会科見学は受け付けていないわ。」


ミライさんはシャキッと背筋を伸ばしてはいっ!と威勢の良い返事。


「座学は一杯頑張ってるし!装備も揃えたよ!あはは、流石に億単位は全然手が届かないけど。」


キュエリさんから色々アドバイスして貰って、シークレットサービス用と開拓者用の装備を紹介して貰っていた。


「ふふん♪何か発見したら金一封あったり?」


「浮かれポンチで御座いますね。足を引っ張るようでしたら当機がモモコ様の元へ強制送還致しましょう。」


それは勘弁!とミライさんは征天丸へ飛び乗って行った。イーディウスで飛んで行きたいけど、やっぱり皆で冒険もしたい。ボク達を乗せた征天丸がふわりと浮かび上がった。


征天丸の中に用意された大きなソファー席を囲んで、皆で探索内容の確認を。


乗員はボク、タマさん、ブランさん、フィクサーさんにオウルさん。そしてミライさん。カテンさんは征天丸の外で追従していた。


「今回の探索目標はこのカンディダです。早速投票と行きましょうか。」


ブランさんが進行役をしてくれて、いつも使う匿名多数決アプリで上へ行くか下へ行くかを決める。


結果は上が6票、下が1票。


やっぱり上から攻めたいよね。景色も良さそうだし、頂上に何があるか見ておきたい。


『さてこのまま征天丸の中でぬくぬくしながら探索しても良いですが、実際に土を‥‥雲を踏み締めてこその開拓者です。』


フィクサーさんの言う通り、この中は快適だけどやっぱり直接見て回りながら登頂したい。完全に空にするのも良くないから、ブランさんとオウルさんが残る事に。


「この辺りは比較的通信が繋がりますので、当機が基地と連絡を取り合いましょう。」


「歌で援護する。」


「お任せします。」


ボク達はパパッと転移で飛び出した。カテンさんがボク達を見下ろして、山の遥か頂を小さな指で指した。


「出発の時だな。我が見ている。踏み外して転がり落ちても任せろ。」


「そんな無様をする奴は居ないわよね〜。」


タマさんの意地悪な視線の先、ミライさんはプー!と頬を膨らませていた。


「この感触、不思議。柔らかくてふわふわだけど沈まない。これが雲の上を歩く感触なの?」


一歩一歩、足元を確認するミライさん。不思議な感触だよね。土の地面とは全然違うし、ふかふかする。


ミライさんは少し足早に、頂上が見えない山の先を見上げた。


「どんぐらい先なのコレ。」


ブランさんからの通信。


『頂上まで直線距離で1500m程で御座います。』


ここはカンディダの中腹。3000m級の山だから確かにそんぐらい。けれど見上げただけでも道は険しくて、大きく膨らんで真っ直ぐ進めなさそうな場所も多かった。積み重なった魔法雲だから、土と岩石の山と違って地形がすっごい立体的。平らな山道なんて無いし、直ぐ目前にも5mの隆起した魔法雲。横を見れば100m以上は崖が続いていて、その先はもっと大きな崖で塞がっていた。


ステラヴィアでぽふっと踏めば重力が横向きに。ボク達は崖を無視して真っ直ぐに登り上がって行く。


「すっご。」


思わず漏れたミライさんの感想は、そのまま崖の上の谷底へと吸い込まれていく。


「うーわ、谷になってるわね。深さはどんぐらいかしら。」


『にゃは、200mは超えますね。魔法雲なお陰で底が青く光ってよく見えます。』


イルシオンを巻いた1体のミニフィーを降下させて、R.A.F.I.S.Sで谷底を探ってみる。何かいるかな?宙ぶらりんなままミニフィーでキョロキョロ。イルシオンはグングン伸びて行って、遂に谷底へ着地した。


ミニフィー越しに真っ青な世界が見える。デコボコで視界が通らない世界で、のそりと動く原生生物がミニフィーを見やった。


「カニさんが居ます。脚がすっごく長くて、ハサミが細長いです。」


「タカアシガニの近縁種かしらね。」


「いやデカくない?!10mぐらいに見えるんだけど。」


お空の上の生き物は大きくなりがち。ミニフィーをハサミで捉えようとしても、ぴょいと躱して股下を潜って行く。動きは緩慢で全然追い切れていなかった。


少しして洞窟の入り口らしき地面の切れ目を見つけるけど‥‥


「今回は山頂を目指していますので。」


後の楽しみに取っておく。ブランさんが場所を記録してくれるから安心。フィクサーさんもこの谷で掴めた情報を、情報整理アプリに一纏めにしておいてくれた。


ミニフィーをイルシオンで回収した後、幅40mある谷をアクアマリンの水路で超える事に。ミライさんは駆動魔具がエアキャットなせいで水路と相性が悪いから、カテンさんに掴まって飛び越えた。


水路の上をステラヴィアで滑走していると、フィクサーさんが急にボクの後ろで実体化する。


「おや?先程から気になっていましたが、やはりこの反応は。」


水路の一部に手を突っ込んで、そのまま引き剥がすように薄い水の膜を取り出す。


「あっ!ウィンディーネですか?!」


氷晶へ案内してくれたウィンディーネ!あそこでお別れだと思っていたのに、アクアマリンの中に潜んで付いて来ていた。


谷を超えた場所でウィンディーネを囲う。フィクサーさんの指から逃げようとしても、空間を操る指先からは逃れられない。


「これがウィンディーネ?水の塊?変なの。」


「知らない間に寄生されていたって考えるとゾッとするわね。」


「水の精霊とは珍しいものだ。」


ボクはR.A.F.I.S.Sをウィンディーネへ繋ごうとする。けれど、やっぱり深くは繋がれなくて感情が伝わって来るだけ。だったら。


魔王の力を使う。ボクを中心に簡易な異界化が広がった。透明で見た目じゃ分からないけど、R.A.F.I.S.Sへ強制的に接続されるもの。ウィンディーネの意思がよりハッキリと伝わって来た。


『コワイ!タスケテ!』


『大丈夫です。傷付けません。どうして付いて来たのですか?』


ウィンディーネはボクの意思に驚いて、でも何とか答えようと意思を捏ね回す。勿論ウィンディーネには言語という概念が無いから、帰って来る答えを理解するのは難しい。


『オオキイ!ウルオイ?ミズ?マザル?タイ?混ざりたい?オヤ?ナカマ?大きな。』


支離滅裂でも何となく言いたい事が伝わる。


「そうですね、ウィンディーネの発生原因は諸説ありますが。水龍のブレスが原因という説もあります。にゃはは、アクアマリンは水龍の龍玉を元に作られた神器。ウィンディーネとしてはやはり惹き寄せられるものがあるのでしょう。」


そうなんだ。このアクアマリンの元になった水龍と直接関わりがあるかは分からない。でも親の気配に惹かれる気持ちは分かった。この広いホワイト・シーで一人きりだったのかも知れないし。付いて来たいのなら、良いよ。


フィクサーさんはアクアマリンの中へウィンディーネを帰したのだった。


「ま、ワタシが見ていますから大丈夫ですって。ラフィさまの珍しい生物コレクションへ加えてしまいましょう。」


コレクションって言うとアレだけど、仲間が増えるのは嬉しいな。


「ラフィが良いならアタシは良いけどさ。妙なイタズラしないかフィクサーが見てなさいよ。」


「はいはい。では、冒険を再会しましょう!」


フィクサーさんはホロウインドウへ、皆の足は再び山頂へ向いたのだった。

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