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546、そして判明した事実が次の戦争へ繋がっていく

タマさん達が帰還して来た。お疲れ顔なタマさんをエンジェルウイングに包んで出迎えて、上機嫌なセイテンさんとビャクヤさんへモモコさんとレイホウさんがご挨拶を。


「赤翼は空を開拓するメガコーポだと言うのに、空気を読むのは苦手だったかな?先んじて楽しんで来たご感想を伺いたいね。」


「まったく、代表だというのに落ち着きのない。早速随分暴れたようだと報告を受けている。向こうで武勇伝を聞こうか。」


セイテンさんの視線の先でタマさんは首を振り、次いでボクも首を振る。そんな様子にバーズさんは、


「ささ、セイテン代表。モモコ様とレイホウ様が貴方を労わりたいとの事。貴賓室の方へどうぞ。」


さっさと行けとでも言いたげに代表の身柄を受け渡してしまった。


「あ、あははは。成果は上げて来たのだぞ?語って聞かせようか。」


「そうですわ。私達は空の開拓を担う者としてちょっと現場を確認して来ただけですの!」


お空の暴れん坊な2人が引っ張られて行ってしまう。タマさんはザマァ見ろと見送った。勢いが良いのは一緒に冒険していて楽しいけど、やっぱり立場も大事だからね。バーズさんはボク達に苦笑いを向けた。


「大丈夫です。いつも“ああ”なんです。今回代表のケツを引っ叩くのがモモコ様とレイホウ様に変わっただけ。夫人様の雷が落ちるのは毎度の事でして。」


気質は好ましいですが、少々軽率さがですね。なんて困った風に笑っていた。昔テツゾウさんと一緒にベンチャー企業を立ち上げたって聞いたけど、その時の様子が目に浮かぶようだった。テツゾウさん、お疲れ様です。


「とは言え、しっかり結果は出す辺り、代表の座に長年腰を下ろすだけはあるようで御座います。」


『方向性は違えどテツゾウ代表と同じようにまた彼も、メガコーポを牛耳る傑物なのでしょうね!にゃはは。』


ブランさんが先んじて調査レポートを送信したお陰で、長い報告業務もあっさり終わる。セイテンさんが目を付けた拠点候補が最有力となった。


会議室、ギガスを発進させる前に一度調査内容を共有する事に。セイテンさんはいつも通りな調子で振る舞い、モモコさんとレイホウさんは呆れ顔で見やっていた。2人の間に座ってエンジェルウイングで肩を包む。


「まったく、反省しますって言ったのに。切り替えが早いねホント。」


「上辺だけの拗ねた反省で無くしっかり反省しておいて、それはそれコレはコレで済ませてしまう辺り常人とは違う。」


勝手にギガスを飛び出さない、という反省点を叩き込んだみたい。でも成果を上げた以上、事実ギガスで待機していただけの2人はあまり強く出れずに苦言を呈する事しか出来なかった。成果主義、それは企業社会の鉄則。極論成果さえ上げれば無茶も押し通せる。


そうやって今まで突き進んで来たんだろうな。ボクはセイテンさんの凄みを垣間見た気がした。


ドラゴンさんがギガスの防衛記録を報告する。


「ここへやって来てから、散発的な襲撃に遭っています。小規模ですけど、私の意見としては“様子見”でしょうか。」


話題の中心はあのワーム。1m程の体長で空中をすばしっこく飛び回る。鋭い牙で噛み付いて集団で獲物を捕食した。


他の征天丸で探索した班も襲撃を受けたようで、それぞれ意見を報告し合った結果疑問が浮かび上がって行った。


白喰みさんが研究センター長として、ワームの調査結果を述べる。


「あのワームの特性はあまりにも異様だ。極端な攻撃性は犠牲を厭わず、例え全滅してでも果敢に攻め掛かる。例え一齧りでも出来れば御の字と言いたげにな。様子見でギガスへ攻撃を仕掛けるのもおかしいと思わないか?」


一般にどんな気性の激しい原生生物でも、結局は一番大事にするものが命だって事に差はない。死んだら元も子もないし、死ぬぐらいなら獲物を諦めるか縄張りを放棄して逃げる。


そもそも戦って勝てそうな相手以外に手を出さないのも当たり前。逃げようがない状態ならともかく、手痛い反撃を受けそうならやっぱり逃走を選ぶ。自然界にはお医者さんは居ないから、大怪我を負ったら魔法生物でも無い限り死んでしまう。


ボク達が昔倒したキメンだって、小さなボク達を縄張りから追い出そうと戦った。でもあっという間に削られて、撤退判断を決める前にボコボコにされて倒されちゃった。もしボク達が致命傷を入れられずに膠着してたら、多分途中で逃走したと思う。死んでまでも戦わなきゃいけない理由は無いから。


それに比べて、あのワームはやっぱりおかしい。群体生物特有の少数の切り捨てありきな生存戦略。それでは説明出来ない全滅してでも戦う姿勢。


それはまるで。


「ああ、怪物だ。」


今まで海竜種の近縁種だと思われていたあのワームは、その実魔王が放った怪物である可能性が高かった。


場はざわめく。その可能性が全く考えられていなかった訳じゃないけど、スーパーセルの中に魔王が居る可能性が大きく高まった。


「空の上の魔王。まぁ、空を飛ぶ怪物自体昔から確認されている。広い範囲の生物を捕食しやすいし、この環境なら入れ食いだろう。理に適っているね。」


浮島がある限り、そこにダンジョンが根付く可能性はある。生み出されたダンジョンコアを、飛行する怪物に持って行かせたのかな。


「魔王‥‥?それはやはりマズイ事なのか。」


理解出来ていないオウルさんへ、ボクから魔王の概要を伝えた。人類の敵対者で、全てを貪欲に捕食する者。オウルさんもボクの件で魔王を知ってはいるけど実感が無いみたい。‥‥ボクはそうならないでいたいな。


「なら知っている。シャーリアの主人は、魔王だ。」


オウルさんの一言で皆びっくり、オウルさんはR.A.F.I.S.Sを交えて説明した。


昔シャーリアの住人であるエルフ達は地上に住んでいて、魔王に支配されていた。


「魔王が喰らい尽くさずそうやって高度な知的生命体と共存関係を結ぶ事は珍しく無い。捕食に貪欲でもバカではないんだ。」


魔王の専門家、白喰みさんも一言添える。


オウルさんが言うには、魔王は支配する代わりにエルフ達を危険な原生生物から守っていた。エルフ達は作物を栽培し、畜産に勤しんで魔王の食い扶持を維持する。


「ニホンコクの抱える魔王のイメージは肉食だろうが、実際は雑食で草木を含めて何でも食べる。まぁそれでは力は付かないし、ただの生命維持に終始してしまうが。他の魔王や原生生物の捕食を免れる為に高度な知性を持つ生き物の脳を狙うのだ。」


けれどエルフ達を捕食してもそれ以上の知性が付かない以上、食べ尽くすよりも共存した方が有利なのは間違いなくて。過酷な世界を生き延びる為に支え合っていた。


『だけど帝国が世界を席巻する中、私達の都にも使者がやって来た。帝国の傘下に収まり、文化を捨てて共通語を使い税を納めるように脅迫して来た。魔王は強大でも、帝国には真っ向から倒せるだけの力を持つ英雄が沢山居た。』


魔王がそれまで蓄えた莫大な魔力と、エルフの魔法の知恵。この事態を想定して長年構想が練られていた人口浮島計画が始動する。そして遂にエルフの都が空へと浮かび上がり、帝国が手を出せない彼方へと姿を消した。


『空は寒く、空気も薄い。生きていける環境を歌で作り上げるまでに大勢死んでしまった。それでも魔王が私達を飢えさせないよう身を削って食糧を用意し、私達も都市を栄えさせて食糧の安定供給が出来るように策を凝らした。』


オウルさんも当事者の1人。当時の混乱と凄惨さをR.A.F.I.S.Sへ乗せて伝えて来た。空の上の暮らしはとっても厳しくて、想定を上回る過酷な環境が都市に大打撃を与えてしまったんだ。

それでも空の上の原生生物を何とか捕まえて養殖出来ないか模索した。その結果。


『にゃは、魔力たっぷりの魔法雲を生成して、空の原生生物が棲まう巨大コロニーを作ってしまったと。向こうから住処にする為に集まって来る環境が整えば確かに飢えずに済みますね。』


『勿論当時はこんな規模じゃなかったし、私達の制御下にあった。』


白喰みさんはだからこそ、と繋げる。


「エルフの住人が軒並みダウンしてしまった今、魔王は意図的に魔法雲生成の魔法を暴走させてスーパーセルを作ったのだろう。管理者の居ない魔法陣は本来魔力を失って休眠状態に移るからな。この事態が証拠だ。」


それは何故か。


「魔王はより膨大な魔力を、力を欲している。そして不明な技術を扱う私達を認知した。はははっ、大変だぞ。もう後戻りは許されない。仮にギガスを放棄して逃げてみろ。量産されたギガス型の大怪獣が都市へ空から攻めて来るかもな。」


場に緊張が走る。知らない間に虎の尾を踏んだみたい。本来関わらなければ、そのままスーパーセルはニホンコクの国土を離れて海の向こうへ姿を消した筈なのに。


「スーパーセルの進路を魔王が操れないとも思えん。勿論この規模となれば相応に消耗するだろうが、私が魔王ならニホンコクの国土へしがみ付く為にリスク覚悟で舵を切る。」


ワーム型の怪物を何度か放って、ボク達の反応を伺っていた。魔王の反応は慎重で、膨大な魔力を持っていても安易な力押しはしない。


そしてもう一つ、厄介な問題があった。


「この浮島は魔王の力によって制御されている。ふむ。完全な制御下というよりは、半暴走状態にも見えるが。確実なのは魔王を滅ぼせばあの浮島がスーパーセル事墜落する可能性があるという事だ。」


白喰みさんの意見に皆して頭を抱える。魔王は脅威だけど、倒すとこの超巨大な魔法が暴走した凄まじい質量体が遥か上空10000mから墜落する大災害が起きうるという事。浮島自体エルフの魔法で作られた物だし、それを現在維持しているのも魔王。浮島単体で墜落するだけならともかく、コアを失ったスーパーセルがどんな影響を受けるか全く分からない。


その衝撃はとんでもない威力だろうし、辺り一帯吹き飛ぶ所の騒ぎじゃ済まないかも。巻き上がった土砂が天を覆って気温が急激に下がったり、ニホンコクの気候を変えてしまうレベルになる。それに、リヴァイアサン級の原生生物が巻き添えで地上へ落下すれば、どんな影響を及ぼすかも未知数。


オウルさんも顔色を変えて俯く。魔王とも面識があるせいか、色んな想いが胸中を巡っていた。


場の重い空気を晴らす為、ボクはパッと立ち上がってエンジェルウイングを大きく開いた。


「大丈夫です!!ボクが魔王を説得します。その。ボクなら出来ると思うから。」


なんの根拠も無い啖呵じゃ無いって言うのはR.A.F.I.S.Sで伝わっていく。モモコさんとレイホウさんは納得した顔をする中、そんな態度を怪訝に思ったセイテンさんは少しの間思案した。


そしてふと、その野生的な勘の鋭さで何かを思い当たる。ボクを見る目を大きく見開いて、額を一筋の汗が伝った。


「信じて下さい。ボクは、皆の味方です。支配者になる気もないですし、ただ皆の未来を照らして行きたいだけなんです。ずっと未来、300年後で待っているボクのお母さんが産まれる世界が、魔王に侵されない明るい未来で無いとダメなんですから。」


お空の上の魔王が目を付けて来たのなら、ちゃんと魔王同士お話しして説得しなきゃ。


「その為にも一度戦って、ボク達の力を見せつける必要があります。追い詰めるんです。絶対勝てないと分からせて、二度と手出し出来ないように。」


だからその為に。


「先ずはここに軍事拠点を作りましょう。ギガスだけだとダメです。用意出来るだけ全部用意して、総力をぶつけて戦争するんです。」


これはタマシティを魔王が襲った事件と同レベルの国家存亡の危機。絶対勝つ為に全部を投入するしかない。


「ボク達がここに踏み入らなかったとしても、虹渦島へあのワームが入り込んでいた以上ニホンコクへ目を付けていた可能性が高いです。ここまで飛び込んで冒険して来たから、向こうが完全に準備を済ませて戦争を仕掛ける前に、戦う準備を整えられるチャンスが出来たんだと思います。」


遅かれ早かれ。あのワームは多分偵察用。スーパーセルで世界を周遊しながら振り撒いて下界の様子を探っていたんだと思う。ニホンコクの都市をもっと前から知っていたとしてもおかしくない。


「そうよ、空の上の大規模ダンジョンを制覇してやりましょ。そんな危険物体が今まで無管理だったのがおかしいのよ。勝てば大規模なダンジョンの運営権を手に入れられるんじゃないかしら。」


タマさんの意見に皆が口々に意見を言い合う。ふぅ、と最初に意見をぶつけたボクのR.A.F.I.S.Sを突くオウルさんの心。


『勇敢なんだね。カッコいい‥‥と言うんだったかな。』


『そうですか?えへへ。』


『その笑顔は可愛いな。』


『もぅ。』


ここに居る誰もがとっても優秀なエリート。意思の決定は素早く、即座に軍事基地の建築計画が立てられたのだった。ギガスが発進する。


魔王との戦争を見据えて、人類の極まった文明の剣先を研ぎ澄ます為に。

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