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536、イーディウス

おやつの時間、グランドプリンスホテルのホールに用意されたケーキビュッフェ!そして飾られたイーディウスがボク達を見下ろす。矢継ぎ早手にお皿へケーキを盛り込んで、はむはむっ!なオウルさん以外、食べるよりもその美しさを語り合っていた。


「こんな物が飛んで来たとはな。」


「宝石‥‥それよりも美しい。空を切り取ったかのようっていう感想は言い得て妙だね。そうとしか言えない。」


プールを楽しんでいたモモコさんとレイホウさんは、ボク達の冒険話を聞きながらもイーディウスを見上げていた。


そろそろ良いかな‥‥?早速切り出す。


「それで、その。イーディウスが欲しいんです。皆で見つけた物ですが‥‥」


皆はびっくりしたようにするけど、すぐに。


「ラフィくんが欲しいだなんて。私は良いよ!」


「何遠慮してんだい。そもそもラフィの転移前提の探索だったんだ。それが無きゃそもそも辿り着けたかも分かんないね。」


ラズベリーさんとヒミコさんが声を上げて、


「別に深未踏地探索体験をさせて貰った上に、成果を寄越せなんて言う奴は居ないわよ。あの地を冒険出来ただけで1億掛かる許可証分の価値があったのよ?」


グミさんの声に皆が同調する。


「そうだのぅ。そう言われれば相当貴重な体験だった。」


「まぁ普通の開拓者はあんな奥地に行けもしないし。」


「撮れ高良かったし、おねだりするラフィくんも可愛いからオッケー!」


皆の声が温かくて。


「ありがとうございます!」


流石に食べちゃう、なんて言う訳にはいかないから。イルシオンで巻き上げて掲げて見せた。


「しかしラフィがそんなに欲しがるなんて‥‥」


そこまで言ってモモコさんは察する。ボクが綺麗な物が大好きなのは知ってるけど、こういう風に欲しがった事は無かったよね。イーディウスがそれだけ特別‥‥飾っておく為だって思わないと思う。そうなると思い付くのは。


魔王の力に関係する何か。


レイホウさんもモモコさんの様子を見て、そういう事かと呟いた。魔王の件はレイホウさんも知ってる筈。ボクのスポンサーになるのに、一番大事な部分を隠すとは思えないし。


皆はそんな2人の様子にも気付かないで、一度パンタシアへコソコソ帰るボク達を見送っていた。


プライベートフォレストにて。皆に囲まれてボクはイーディウスと向き合った。ツキシロとアルビスも寄って来る。モモコさんとレイホウさんも一緒に眺めていた。


少しして洗浄を終えたブランさんが戻って来る。


「それではラフィ様、より成功率を上げる為に当機がデータを共有致しましょう。」


「お願いします。」


ブランさんの目がスキャンモードに、イーディウスの設計を一通り調べ上げてくれた。不明な所をオウルさんにもR.A.F.I.S.Sを繋いで共有して行く。


『少し教えただけでよく理解出来るね。』


『当機は超高性能を自負しておりますので。バイオマジックが絡んでいますが、マギアーツ化可能で御座います。既存のマギアーツに近い物がありますので。』


ボクの中にしまわれた設計図に、何でイーディウスの情報があったんだろう。未来の世界で何が起きたのかが分からない。数奇な運命を辿って、スーパーセルから落下したイーディウスが発見されていたのかも。


ブランさんの演算がイーディウスを解析した上で、ボクに合わせて最適化。全部が共有されたボクは早速アニマトロニクスを起動した。しゅるん、九尾の尾が生えるとオウルさんはびっくり。思わず伸びた手が尾先をモフった。


「きゃうっ‥‥くすぐったいです。」


「柔らかい。ふわふわ。オポックル。」


おぽっくる?ボク達の知らない動物かな。尾先からシャボン玉がぷくっと膨らんで噴出。あっという間にイーディウスを包み込んだ。


モモコさんも、レイホウさんもボクの捕食を初めて見る。シャボン玉の泡が萎んで‥‥イーディウスが消失した事に驚いた声を上げた。


「わっ?!聞いてはいたけど‥‥こんな感じなんだ。」


「ふむ、恐ろしいな。泡の中に消えるのか。」


オウルさんは何が起きたか分からなくて、


『何処に消えたんだ?』


『‥‥ボクのお腹の中です。』


ボクの胃は空間拡張のマギアーツによって、必要に応じてとっても大きく拡張される。胃酸の性質も変化して、ヒトならざる消化効率が一瞬の消化吸収を可能にしていた。


魔王は捕食した文明の利器を再現する。普通は高度な物を捕食しても1発で再現出来ないけど、しっかりとした前提知識があったのなら。ブランさんからイーディウスについて共有されたボクに欠けていた知識、それはイーディウスの材質だけ。欠片じゃ足りないから、全部。


胃が第二の脳のようにボクへハッキリとイーディウスの全部を教えてくれた。


そして、展開する。


新しい拡張パーツ、イーディウス。


ボクの背中の収納から、すぅっと姿を現した空を切り取った美しい翼。イーディウスの鳥翼のような見た目だけど、その羽先はあまりにも鋭利に尖っていた。


巨大なナイフ型に切り取られた空を羽として。それが幾つも連なって鳥翼に。美しさと武器の冷たさを兼ね揃えたイーディウスが、ボクの背中で輝いた。


皆はその造形に唾を飲んで、声も出せない。ホロウインドウの中のフィクサーさんすら見惚れていた。


「これが新しい拡張パーツです。機能としては、とっても速く飛べる事です。」


パーツが展開するとイーディウスの全部を思い出す。1気圧の条件下なら最大速度、時速1300km。おおよそマッハ1の速度で飛行出来ちゃう凄いパーツ。アクアマリンの水路で駆け回るのよりも更に速いし、空の自由度は圧倒的にイーディウスが上。


「ボクの最高速度は音と同じぐらいなんですよ。」


航行中はイーディウスの翼で羽ばたく訳じゃなくて。イーディウスに搭載された加速のマギアーツを幾十にも発動させて、指数関数的に速度を引き上げて飛び立てた。大気の壁を穿つよう、イーディウスの羽の先端を合わせて見た目を流線的に。ロケットみたいな姿勢でひとっ飛び。


説明するボクの前、遂にタマさんが。


「本当にラフィは綺麗ね。」


皆イーディウスの美しさにうっとりしていたお陰で、説明が入って来ていなかった。


「ああ、今までのも凄かったけど。これはなんというか。神秘そのものに感じる。」


「背中に青空が広がっているのだ。薄っすら白い雲が流れる様は、いつまでも見つめていられる。」


だけどオウルさんはボクに。


「魔王‥‥なのか?」


識っていたのか、勉強して知った事かは分からないけど。ピタリと言い当てた。正確に伝えたいからR.A.F.I.S.Sで返事をする。


『ボクはずっと先の未来からやって来ました。ニホンコクを滅びの歴史から変える為に。ずっと先の世界で、兵器として家畜化されたダンジョンコア。人類を護る魔王。それがボクの正体です。』


その場の皆は知っているから、何も言わずにオウルさんを見る。オウルさんは少しの間動揺して、乾いた笑いを溢した。


『この事を皆は知っているのか?』


『ここに居る皆だけです。オウルさんにも秘密を守って欲しいです。』


タマさんはいつの間にオウルさんの背後に、ブランさんも直ぐ隣で静かに沙汰を待って待機していた。オウルさんは観念したよう、ため息を吐く。


『別に触れ回ったりはしない。魔王は馴染みが深くてね。秘密にして欲しいのなら約束しよう。恩義があるし、助けて貰う側なんだ。』


タマさんは指先に持っていたビームシュナイダーを収納へしまった。オウルさんもそんな気配に気付いていて、信用が無いなと呟いた。


「まぁ、話が纏って良かったよ。ニホンコクに於いて魔王の存在は些か特別でね。ラフィの正体に色んな考察が出回っているけど、僕達が危険な意見を封じ込めているんさ。」


「そうだ。迂闊な詮索で消息を絶った者も少なからず居る。気を付ける事だな。」


ボクを護る巨影は余りにも大きくて。おー怖い怖い、とタマさんは茶化していた。


『にゃは、イーディウス。新たな力はスーパーセルの探索で多いに役立つでしょう。空の探索に悪戦苦闘していましたが、これでようやく本格的な探索の準備が整ったと言えるのではないでしょうか。』


「はい。お空を自由に飛べる力なんですから。早速ちょっと飛んで来たいです!」


「なら我がラフィに共しよう。」


カテンさんがボクに付いてくる。ワープゲートが虹の浜へ繋がっていた。ぴょい!と飛び出して、イーディウスを起動!ブワッ!とボクの体が浮き上がる。背中に引っ張られる感じじゃなくて、体が急にとっても軽くなったような。


「おおっ!そうやって飛ぶのだな。」


カテンさんの頭上までひとっ飛び。普通に飛ぶだけなら羽を前へ持って行って、流線型な航行モードにならなくて良い。時速300kmを超えた辺りから傾斜バリア装甲でも風を受け流すのがキツくなって、航行モードに移行する必要があった。


ビュン!虹色に輝く浮島を巻いた雲の中を飛び回る。やってみたかったんだ!目の前が虹色一色、雲の中には薄っすらと小さな粒子が舞っていた。小瓶を翳して飛ぶと、あっという間に瓶の底が粒子で一杯に。虹の浜で見る結晶よりも更に細かな砂のような粒子。すっごい綺麗で、瓶を振れば引っ付いて虹色の瓶へ早替わり。


粉末塗装ってあったっけ。そんな印象だった。


カテンさんの鱗は魔力的な影響を弾きやすいから、このぐらいで色が付いちゃう気配は無いみたい。


飛び回っていると、虹雲の更に上空に浮島の一部が浮かんでいる事に気付いた。本当に小さな岩の塊で、砂状の虹の粒子で全体が塗装されているお陰で気付かなかった。薄っすらと虹色に光る浮島は5mもあるかなってサイズ感。


「カテンさん!」


「あの岩が気になるのか?」


岩の上へ着地!わわっ?!滑る!!転びそうになってヨタヨタ。強化外装の姿勢制御が働いて直ぐに復帰した。表面は虹砂でざらざら、ステラヴィアで擦っても色が落ちない。


「わぁっ!良い景色です!」


ここから見る景色は虹渦島全体を見下ろせる。視界の周囲を虹雲が覆っていて、虹渦島が虹雲の壁に囲まれた箱庭のよう。


ふと、いつの間にボクの隣にオウルさんが居た。びっくりするボクにお構いなし、一緒に景色を見下ろす。


『イーディウスの乗り心地はどうだい?』


『とっても良いです。お空を自由に飛び回るのが楽しいんです。』


アクアマリンとステラヴィアでも空を移動出来たけど、飛ぶというよりは駆ける感じだった。


『なら良かった。神聖なものだけど、役立ててこそ。飾って置くものじゃない。』


役立てるって所に拘りがあるのかな?オウルさんは嬉しそうにしていた。


「‥‥貴様はどうやって来たのだ?」


カテンさんの疑問に小さな笑みで返す。答えないオウルさんを不思議なヒトだなって思った。

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