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525、積乱雲の中にある海洋

今日はトウキョウシティからヤマノテシティが出発する日。かなり長い間滞在していた気がするけど、やっぱり首都なだけあってタマシティの時よりもずっと長い。


「転移タワーは数日前から激混み、ほらラフィ見てよ。」


ボク達はトウキョウシティの転移タワーを眺められる、大きなビルの屋上階に居た。開拓者や傭兵達の道の駅になっているここは、今日は見物人が沢山。夕食とビールを片手に皆ワイワイ騒いで、ボクのお口にもハンバーガーがはむりと。


「最終日に来るのは決まってコーポの社畜連中に御座います。最後まで残って仕事させられた挙句、この地獄の行列に突っ込まれるのです。」


よく見ればスーツ姿のヒトが多いような。目線がスマイルに向いているけど、暇つぶしをしているというよりはお仕事モードな視線。


‥‥お疲れ様です。


『トウキョウシティでも大暴れしてやりましたね!バッチリ存在感を見せつけて、世間の話題を掻っ攫い、開拓者としてチャンスをモノにしてやりました。』


「そーね。まぁここまで派手に暴れたのはラフィが初めてでしょうけど。」


「皆で戦ったんですから。タマさんも、ブランさんも。」


カテンさんが長蛇の列を見下ろして、


「しかし転移で数組ずつ纏めて送るのだろう?何故そんなに時間が掛かるのだ。」


答えたのはブランさん。


「理由は幾つも御座います。先ずは転移前の事前の説明に掛かる時間。都市間移動に対する規則の確認です。手荷物検査のスキャンで問題があれば時間が取られますし、持ち込み関係での揉め事はこういう状況では頻繁に起きます。」


そういうヒトが関わるトラブルもそうだけど、


「転移陣に掛かる負荷が規定値を超えぬよう、定期的に休ませる必要が御座います。その間にメンテナンスも行われます。時間にして精々10分ですが。」


転移で万が一の事故があったら大変だから、連続稼働させた際はメンテナンスを定期的に挟む必要もあった。平時はともかく、激混みするような時は営業時間中でもメンテナンスが行われる。


「要するに転移の筈なのに案外スラスラ行かないのよね。」


トウキョウシティからヤマノテシティへ移住するヒト達はもう転移し終わっている頃だろうし、ゆっくりとした転移行列に巻き込まれた大勢はウンザリした顔をしていた。


『こちらトウキョウシティ、転移管理センター。こちらトウキョウシティ、転移管理センター。転移最終受付時刻まで、残り1時間となりました。以後の受付は出来ません。都市間移動のご予定の方は速やかに受付をお願い致します───』


聞こえてくる都市放送。もう夕日も沈んで辺りはビルの灯りが照らしている。


「後1時間でこの行列が無くなりますか?」


「ラフィはいつもワープゲートだし、意識する機会無いわよね。終わるのは受付だけ。時間過ぎたらもう行列には並べないの。でも並んでいさえすればちゃんとヤマノテシティへ行けるわよ。」


つまり徹夜で行列に並ぶのかもって事?わぁ‥‥


『出発時刻は明日の明朝。にゃは、転移タワーの行列が無くなった後です。』


カテンさんはお肉を齧りながら、大変そうだななんてヒト並な感想を。


転移タワーの夜は更けて行き‥‥翌朝。


ハムハムへヤマノテシティ入りした大勢がわちゃわちゃと話の種を投下していた。ニホンコクの娯楽の中心地とも言えるヤマノテシティは見どころ満載な観光都市。‥‥ただ、下層区へ移住したヒト達は治安の悪さに驚く声を多く上げていた。



ヤマノテシティ下層区マジ治安終わってる

カモン守護天使様!

#ヤマノテ下層区 #ユターニ◯滅しろ


自警団ブームの話聞いてたけど本当に自警団ワラワラでXD

イージス警察も腐ってたけどヤマノテ警察も大概だな

#ヤマノテ下層区 #もう終わりだよ下層区


ヤマノテシティは元々多文化共生都市だぞ

齧歯族の件でも運営委員会は見捨てなかっただろ?サキュバス匿って専用の亜人街設けてるだろ?

下層区にて亜人様は最強

#ヤマノテ下層区 #ユターニ◯滅しろ


亜人様の犯罪が全自動で不起訴で闇に葬られるのヤバすぎでしょ

ラフィ!ミツホシもとっちめちゃって!

#ヤマノテ下層区 #ミツホシは国賊


中層は都市警察も仕事してるイメージあるけど、ラフィが来るまではディープネオンの半グレ共が大通りを我が物顔で歩いてたし

元々全国から犯罪者拾って来ちゃうヤマノテシティの治安はトウキョウと大差無いのよ

#ヤマノテ下層区 #只今下層区はカオスの温床


そもそも下層区が今の状況になったのラフィのせいじゃ‥‥

あ、これ以上は消される奴っすねXD

#ヤマノテ下層区 #ラフィの闇


EXPOにミツホシが出資しながらも深く関われなかったのも市井からの悪名高さが原因ですし

運営委員会として出資しない訳にはいかないけど、ミツホシの名前を聞いただけでキレる連中が結構居る

ニホンコク人よりも亜人を愛する売国企業だからな

#ヤマノテ下層区 #ミツホシは国賊



そっとハムハムから目を逸らした。


トウキョウシティでも色々あったけど、タマシティの時程の感慨深さは無いかな?応接室でもワープゲートでも、いつでもトウキョウシティの皆に会えるんだし。ボク自身がトウキョウシティへ出戻るのも簡単。


『ヤマノテシティ都市運営委員会からのお知らせです。只今より、トウキョウシティから出発致します。都市駆動による揺れが発生しますので、安全放送が終わるまで椅子に座る等安定姿勢を取るようお願い致します───』


都市放送が鳴って‥‥ヤマノテシティは再び旅立った。次の大きな目的地はキョウトシティ。到着は暫く先になる距離だけどね。道中の小都市を何個か経由するんだ。


「この時期はお上りさんな観光客でどこも激混み、アタシらには関係ないけど。」


そう、ボク達が向かうのは空の彼方。ヤマノテシティを後にして、再び前線基地までやって来た。急ピッチで征天丸の改造工事が終わって、ドローンにも実弾兵器が装着されていた。征天丸自体にも大型の機銃が備え付けられて、より厳ついデザインに。



「カッコいいです!」


キョロキョロ見回すボクへビャクヤさんはドヤ顔で語った。


「征天丸用に前々からちゃんと武装開発がされていたのよ。ドローンもラフィの演算容量を間借りする事を前提に、たっくさん数を増やしたわ!」


試運転するタマさんはグッと親指を立てた。


「操作性も最適化された感じがするわね。」


「機銃の方も動作に問題ないようで御座います。」


レイホウさんもボクの肩を叩く。


「アプリに先日戦った原生生物のデータを登録しておいた。簡易的だが縄張りの可能性のあるエリアをARで視覚的に分かりやすく警告してくれる。」


「ありがとうございます!」


あの厄介な群体生物のダンゴムシ達。不意に襲われたらすっごい危険だから、事前に身構えられるようになるのは心強いな。


モモコさんも見送ってくれて、早速お空へ飛び立った。


ぐんぐん高度を上げていって、そのまま1階層目の珊瑚の森を見下ろす。ダンゴムシ達を警告するARが森全体を覆っていた。今後も似たような地形や環境があったら警告してくれるんだ。分かってない事の方がずっと多いから万全じゃないけど。


「カテンさん!そのまま上へお願いします。」


「おう、少し揺れるぞ。」


珊瑚の塔の隙間を通って更に上へ。上に行く程一層雨が激しく、風が強く雷鳴が重たく。3層分上がったタイミングで、急に周囲の環境が変わった。ソファーにお尻を置いていたボクは思わずぴょんこっ!と跳ね上がる。


「わぁっ!!綺麗です!」


大きく開けていて、数100m上にある4層の陸珊瑚が霞んで見える空間はお空の海洋。横を埋めていた積乱雲の魔法雲が途切れていて、開いた大穴から色んな生物が飛び込んで来ていた。


空を舞う無数のマンタは大小様々、体長1mから50mぐらいまで。


平べったい体を持つお魚の群れが、遠くで鱗を輝かせる。群れが高さ200mぐらいの渦を巻いて、とめどなく飛び続けていた。


タコさんのような生き物が触手を四方八方に伸ばしながらお食事中。カテンさんの鱗にも触手が引っ付くけど、尻尾で払われたら黒い墨を噴射しながら逃げて行った。


「生物の楽園って感じね!」


「海の中と見まごう光景に御座います。このような世界があったとは。」


『ここは濃厚な魔力の渦巻く積乱雲の内部、簡単に入り込める横穴から次々と魔力を欲する原生生物が入り込んで来ています。差し詰め誰にとってもここはブッフェ形式のレストランという所でしょうか。』


漂う魔力を全身に浴びて、ここの原生生物達は美しく輝く。真っ暗な積乱雲の中を、発光する誰もが存在感たっぷりに飛び回った。


「我々に興味津々だな。警戒しつつも、ラフィの癒しの力を鋭く感じ取っているようだ。」


エンジェルウイングを展開、征天丸の中で癒しの力を外へ浸透させるよう意識して振り撒いてみる。わっ!と一斉に付近の色んなものが寄って来て、しきりにカテンさんが口先で突き回された!


「何だ?!やめろ!くすぐったい!」


「きゃー(,,>᎑<,,)!寄って来てます!綺麗!」


「サンプルを幾つか頂いて行きましょうよ。」


カテンさんに確認を取って、征天丸の上へタマさんと転移。風は防いでくれるから良いけど、横殴りの猛烈な雨が!!思わず空間に固定したミスリルシールドを呼び出して、2人で遮蔽に身を隠した。


R.A.F.I.S.Sで囁き合う。


『立っていられません!』


『吹き飛ばされるかと思ったわ!』


そんなボク達はミスリルシールドの隙間からキャプチャーネットを覗かせる。ホロウインドウに現環境での射程が表示され‥‥


『射程50cm?!嘘でしょ?!』


『ダメです!ネットが軽過ぎて一瞬で雨に押し流されちゃいます!』


『カテン!なんとかしてよ!』


「無茶言うな!風を防ぐだけでも手一杯だ!」


サンゴサラマンダー達と違って、ここの原生生物達はR.A.F.I.S.Sで呼びかけても反応が薄い。知性は普通のお魚さんとかと同じぐらい。簡単な呼び掛けで寄って来たりはするけど、具体的に意思を交わす事は出来そうになかった。


『にゃは、大丈夫。ここに空間を操る悪魔さんが居ますよー?ラフィさま、お好きな子を見繕って下さい。ワタシが引き寄せてしまいましょう。』


フィクサーさん!ありがとうございます!


『じゃあ、あのすっごい綺麗な鱗の子と‥‥その周囲のダイヤモンドみたいな鱗の群れを‥‥』


R.A.F.I.S.Sで繋がっているからボクの視線の先が直感的に理解できちゃう。グン!と距離が折り畳まれて、キャプチャーネットがお魚さん達を捕獲した!


やった!ブランさん!


征天丸の中、パッケージ内に出て来たお魚さん達をブランさんが確認して行った。


『ラフィさま、こちら問題ありません。まだまだ沢山収納出来ますので、出来るだけ色んな種類を集めて下さいませ。』


暗闇の空が光る!!一閃を描いた雷が、お魚さん達の鱗に反射して拡散した?!


『ピィッ!』


『わっ?!』


ミスリルシールドの影に屈んだボク達の、直ぐ頭上を雷が通り抜けて行った!カテンさんが咄嗟に大気を操って直撃を回避したようだった。


「船外活動は手早く終わらせろ!かなり危険だぞ?!」


ええと‥‥!じゃあアレとあの子とあの子も‥‥!あの子も欲しいです!えっと!えっと!


シールドの影からぴょこぴょこ顔を覗かせて、フィクサーさんに欲しいっ!欲しいっ!と伝えて行った。タマさんも被らないよう、無理な体勢で冷静に下の隙間から覗き込んで指示を飛ばす。


取り敢えず肉食性じゃなく、魔力と雨水で生きていそうな‥‥温厚そうなお魚をピックアップ!観察していると肉食性の原生生物も多かったけど、そうじゃない子達とかなり動きに差があった。


『ラフィさま、頭上です!』


肉食性のお魚が、鋭い牙を覗かせて真上から迫って来た!この強風じゃ銃での迎撃も難しい。イルシオンも飛ばされちゃうし‥‥!激しい雨の中だと光学銃も威力が大きく減衰しちゃう。


タマさんが咄嗟に収納からグレネードを投げつけた。手を離れた直後に爆発!!けれど爆風も衝撃波も無くて。その代わりに‥‥


「ぬおっ?!何だ?!気持ち悪い?!」


カテンさんが身じろぎしたのと同時、肉食の魚達も酷く混乱して逃げ出した!フィクサーさんが距離を操って、数匹キャプチャーネットに捕える。危険な生物はちゃんとサンプルも確保しておかないと。


魔力のショックウェーブを起こす特殊グレネード。魔力に敏感な原生生物を怯ませる効果だけに特化した物で、殺傷能力は皆無だけどこういう状況でも使える自衛手段。‥‥魔法生物のカテンさんは巻き添えでクラクラしてしまった。


フィクサーさんはホロウインドウ内にいるお陰か効果無し。ボク達は一旦征天丸の中へ退避する事にした。ミスリルシールドをしまって、慌てて転移で戻って行く。


バリア装甲が雨水の直撃で傷付いてしまっていた事にビックリ。雨水なのに凶悪な速度で叩き付けられたら穴が空いちゃう!


強化外装は貫かなかったけど、改めて危険性に身を震わせた。


「あー、死ぬかと思った。カテンのお陰でなまじ征天丸の中が安全な分、つい外が地獄だって事を忘れちゃうわね。」


「カテンさん、大丈夫ですか?」


「うぐぐ‥‥まぁ、我がこれしきの衝撃で怯む事は無い。次から使う時は事前に言って欲しいぞ。」


「悪かったって。」


タマさんと2人、ソファーに身を投げ出してブランさんが差し出した飲み物に口を付けた。外は極寒だったから、あったかなココアが沁みる‥‥


ワープゲートを小さく開いて、モモコさん達にもこの場所の光景を共有した。


『おお?!凄い場所だな!本当に空の上に深海がある。』


『ふむ。しかし聞くに地獄のような環境だったそうだな。』


『無理な船外活動はおやめなさい。もぅ、心配しちゃうから。』


あまりに綺麗な光景で、つい。


「ボク達はこのまま進みます。この空間はすっごい広くて、横穴から珊瑚の塔の外にも出られそうです。」


積乱雲の中には魔法雲に覆われた空間が点在するようで。珊瑚の塔もその一つ。丁度良いし横穴から別のエリアを見に行こうって思った。


『くれぐれも気を付けてね。』


通話を切って、次の行動への準備を整えていったのだった。

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