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紅の獣は銀竜を  作者: 銀タ
本編
21/42

大地に降るのは





 空に飛び立った戦乙女達は、村までの行程を順調に進んでいた。

 

「どぉ?ウイネちゃん、ちゃんと皆着いてきてるかしらぁ?」

「問題ありませんね、速度も普段と変わりません。これは日頃の訓練がきいてるようですよ、アウエル様」

「そうねぇ、今回の大掃討に向けて、かなり体力面を強化したものねぇ。いい感じに仕上がってるんじゃないかしら」

「ええ、みなウルディルドの騎士に負けたくないと、厳しい訓練も必死にこなしてくれましたからから。その点に関しては、今回ここに来て良かったと言えますよ」

 

 今から戦いに赴くという特別な気負いもなく、落ち着いた様子で会話をする二人。城を飛び出し目的地までは約半分を過ぎ、このまま順調に行くと、あと少しで問題の村が見えてくるだろう。救援の早馬が来てからの事を考えると、通常ではあり得ない早さで村に着くことができそうだ。

 もうすでに先行させた飛竜は到着しているだろうし、ウルフェイン達が付く頃には、先に到着する自分達だけで全て終わっているかもしれない。ユェドゥラの背に乗りながら、そんな事を考えていたウイネの視界に、段々と目的地が見えてきた。

 

「アウエル様、見えますか?」

「えぇ、みえてるわよぉ。元気な這い蟲ちゃん達がいっぱいねぇ」

 

 確かに村の近くには、元気そうな這い蟲がうぞうぞと蠢いてる。しかし、その周りに点々と転がる飛び蟲の死骸を見るに、どうやら飛び蟲に関しては、先行した飛竜達が全てを討伐し終えているようだった。

 

「ひぃふぅみぃ……あんの騎士団長めっ!なにが四十ほどだ!這い蟲だけで六十は居るわっ」

 

 ぎゃぁぎゃぁと騒ぐサエナの言う通り、どう見たって四十ほどではない。ざっと見ても六十は居る蟲達に、先に着いた飛竜達が必死に応戦しているが、その数にかなり苦戦しているようだ。

 

「飛竜達を呼び戻して!一気に畳み掛けるわよっ!」

 

 はいっ!と声を揃えた乙女達は、戦っている飛竜達に向かって指笛を吹く。その音に反応して、地上にいた飛竜達が次々とこちらに向かって飛んできた。

 

「相棒から落ちるなんて間抜けを晒すなよっ!気を引き締めていけっ!」

 

 ウイネの言葉を切っ掛けに、二人乗りで後ろに騎竜していた乙女達が、次々に空中へ飛び降りていく。

 空から雨のように降る彼女達を受け止めるのは、先ほどまで地上で戦っていた飛竜達だ。華麗に空中で捉えられていく彼女達の顔には、恐れなどは一切無かった。皆、己の相棒が自分を落とす筈がないと信じているのだ。

  

「隊列整えて一気にいくわよっ!わたくしと補佐にそれぞれ分かれて着いてきなさい!」

 

 はいっ!と声を揃えた戦乙女達は飛竜とともに、一斉に空から落ちていった。

 

 

 

 ――ギュルルルルッ

 ――ギシャシャーーッ

 

 蟲達の断末魔を聞きながら、空に舞い上がる。槍をくるくると回しながら、また蟲に向かって舞い降りる。先ほどから繰り返されるヒラヒラとしたその動きに、蟲はついてくることができない。

 

 ――ギュルルルッ

 

 威嚇の体勢をとった蟲の腹部に素早く潜り込み、柔らかいその部分に槍を突き立てる。ズシャッという音をたて、次いで槍を抜いた傷口から黒い霧が吹き出てくる。

 この黒い霧こそが蟲の正体であり、蟲の元となっている瘴気と呼ばれるものだ。死んでいった蟲達は体から霧を噴出し、いずれ干からび砂になって消えていく。研究者達は、その砂もまた瘴気になるのではと考えているらしいが、まだはっきりとはわかっていない。


 空から降りては蟲を突き刺すウイネに、ユェドゥラも息を合わせ、鋭い牙と爪で援護する。

 

「ユェドゥラ、飛べっ!」

 

 クルルッと喉をならしたユェドゥラが、地上から離れる寸前近づいてきた蟲を、バシッと長い尾で弾き飛ばす。

 

 ――ギャシャシャシャッ

 

 すぐ横に来た蟲の開いた口に槍を突き刺し、ユェドゥラの飛翔に合わせて引き抜く。弾みでひっくり返った蟲をユェドゥラが爪で切り裂き、とどめをさした。

 基本的に戦乙女の戦法は、接近して攻撃しすぐさま離れる、つまりヒットアンドアウェイだ。元々肉弾戦には向いておらず、飛竜の背に乗りながら隙を突いて攻撃し、深追いはしない。今回も乙女達は、飛んだり降りたりを繰り返しながら、順調に討伐数を増やしていた。

 

「ウイネ様!騎士団の連中が着きましたよ!」

「……思ったよりはやいな」

 

 ウルフェイン達が来るまでに終わるかと思っていたが、予想より多い蟲に、案外時間が過ぎていたようだ。

 

「騎士達は西から蟲を減らしてきてます。我々はどうします?」

「そうだな、もう終わりも見えているし、先に向かわせていた二番隊から三番隊は引き上げさせてくれ。無理をさせる必要は無いだろう。サエナ達はこのまま戦闘を続行、よろしく頼む」

 

 了解!と元気に返事したサエナが空に舞い、空中で指笛を操りながら乙女達に合図をだす。それに答え、半数ほどの乙女らが地上から飛び上がり、戦場からどんどんと離脱していった。

 蟲も乙女らも数が減り、かなりすっきりとした戦場を見渡せば、アウエルが豪快に蟲を凪ぎはらっているのが見える。私たちも負けていられないな、とユェドゥラに目配せし、まだ生きている蟲達に勢いよく突っ込んでいった。

 



 

 

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