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二日目

今日も自室にこもりながら勇者襲来を待つ。いや、別に来てほしい訳ではないが。

以前勇者に金を握らされて勇者を【終焉の間】まで通した部下の一人に人族の街まで人間に化けさせて買いに行かせた菓子類を漁る。

イチゴ飴を買ってきたセンスは悪くない。多少処分を軽くしてやろう。イチゴ飴は気に入っているのだ。

小袋のピンクの包みを開け口に放り込む。美味い。

その時だった。

♪ピンポンパンポーン『▼勇者が現れます。魔王様は速やかに【終焉の間】にスタンバイしてください。』

この…このタイミングで勇者襲来だと!?

イチゴ飴を口に入れた直後に勇者襲来の知らせ。ふざけるなよ。この口の中の飴はどうしたら良いというのだ!?

勇者空気読めや!

流石に飴を舐めながら勇者を迎え撃つ訳にはいかない。たとえ飴を舐めながらでも勝てる相手だとしても。

この場において俺に与えられた選択肢は3つ。

1,飴を捨てる

2,飴を噛み砕く

3,居留守を使う

菓子をこよなく愛する俺としては1番は有り得ない、光の速さで却下だ。

2番についてだが世の中には飴をすぐに噛み砕くような輩もいるがそんなのは邪道だ、認めない。最後まで甘さを味わってこその飴なのだ。

何より、このイチゴ飴はただのイチゴ飴ではないのだ。なんとこれはイチゴ飴にミルク味の飴が内包されているのだ。

自分の中では飴部門において1,2を争うお気に入りなのだ。幾ら中のミルク味キャンディがサクサクしていたとしても噛み砕くことは俺のプライドが許さない。

因みに3番だが、もしこれを実際にしたら側近の冷血秀麗吸血鬼に心身ともにボコボコされた上に最低3日は甘いものを禁止され、机の菓子類は全てハバネロ味の何かにすり替えられるだろう。

2番にすべきか3番にすべきか…

ふと【無駄に大きい扉】の外に先日設置した監視カメラを思い出した。

今までは取り付けていなかったが、セキュリティーの為に付けることにした。…別に某勇者が楽しみで付けた訳ではない、断じて。

小さめのモニターには一人の勇者が映っていた。

「あいつか…」

無意識に口角が上がる。

以前【檜の棒】一本で乗り込んできた色んな意味で凄い勇者がまた一人で来ていた。

…まああいつなら良いか。

選択肢4の飴を舐めながら迎え撃つ、を選び自室からでた。


ぎぃぃい、と無駄に大きな音を立てて【無駄に大きい扉】が開く。たとえ扉が喧しく軋んでも壊れることはない。これが魔王クオリティ。

▼勇者が現れた。

「よく来たな勇者よ。」

幾らふざけた勇者でも一応勇者なのでテンプレート通り進める。前回は此方が唖然としたが今回は勇者が呆けている。

「いや、えっと魔王?何食ってんの?」

「イチゴ飴だ。」

真顔で答える。

「お前その顔でイチゴとか…その顔で飴とか…」

「ほっとけ。」

「つか何で飴舐めながら勇者迎え撃とうとしてんの!?前に『仕事何だと思ってんだ』って言ってた奴がやって良いことじゃねぇよ!?」

くわっと目をかっ開いて勇者を見る。

「俺が飴を舐め始めた直後にお前が来たからこうなってんだ!!空気読んで来い!」

「ちょっ、瞳孔開いてかなり凶悪な顔に…って【魔王城】内の空気を人国の街に住む俺が分かる訳ねぇだろ!!」

「頑張れよ勇者だろ。」

「勇者関係ないし!」

「…まあ良い。それで、まともな装備はしてきたか?」

自分でも不毛な遣り取りとは分かっているので適当に切り上げる。

前回こいつはパーティーメンバー無しに【檜の棒】で挑んできた。流石に多少まともになっていると信じたい。

「ふっ、魔王よ…今日はなんとパーティーメンバーがいるうえにお前が決して今まで見たことのない武器を連れてきた。今は扉の外で待機している。」

武器が待機しているというのはよく分からないが些末なことなので特に気にしない。

「なん、だと…!?貴様のようなふざけた勇者に付いて来る仲間がいるとは…。にしても、俺が見たことのない武器だと…?ふっ、この魔王が見たことのない武器などありはしない!」

「ふっ、見て腰を抜かすなよ!」

そう言って【無駄に大きい扉】に近付き開け放つ。


そしてそれらは勇者の後ろをぞろぞろと付いて来た。

ある程度は覚悟していたが、愕然としてしまった。

▼【棺桶】が現れた。

「どうだ!!」

「いやどうだ!!じゃねぇよ!!何で既にパーティー全滅してんのぉぉお!?魔王直前で!つか【終焉の間】の前に【回復ポイント】あったじゃん!!そこでパーティーメンバー生き返らせることできるだろ、何でそこに寄って来ないんだよ!?」

棺桶引き連れた勇者何て前代未聞だよ!?一応俺の優しさで設置してある【回復ポイント】をなぜスルーする!?しかも何で勇者はしれっとしてるんだ!?

「ふはははは!甘いな魔王よ!死んでいるからこそ役にたつのだ!!」

「訳分かんねぇうえに態度が魔王より魔王っぽいんだけど!?」

「闘えば分かる!!いくぞ魔王、覚悟!」

無理矢理テンプレートのセリフぶっ込んできたのでとりあえず闘うことに。

「え、マジ?ひ、捻り潰してくれるわ!!」


▼勇者の攻撃。

▼【棺桶】を投げつけた。

ドカァッ!

▼魔王に5のダメージ。

「いやいやいやいや、待て待て待て待て!?」

「おおっ!攻撃効いたな。」

勇者は【パーティーメンバーの棺桶】を魔王に投げつけたのだ。

「お前っ死んでるとはいえ仲間だろっ!?仲間の死体で何しちゃってんの!?」

色んな意味でびっくりしすぎて避けられなかったわ!!

「ふっ仲間など…代わりは幾らでもいる。」

「それ前回の俺のセリフゥゥウ!!お前この前俺に向かって冷酷だとか抜かしてただろ!?お前は冷酷どころか鬼畜外道じゃねぇかぁあ!!」

「どうだ!!見たこと無いだろこんな武器!」

勇者は得意満面ドヤ顔で聞いてくる。

「ああ確かに見たことも聞いたこともねぇよこんな酷い勇者の武器なんざ!!どんな発想してやがんだこの鬼畜!!」

仲間を仲間と思わぬ所業…本気で勇者のやることじゃない。

「死者への冒涜も甚だしいわ!!」

「魔国で魔王に死者への冒涜云々で説教される日が来るとは思わなかった。」

「俺もまさかそんなことについて勇者に説教垂れる日が来るとは思わなかったさ。それで何を思ってその武器のチョイス?」

「いや、もう魔王倒すとかじゃなくて魔王を驚かすことが主旨だから…」

「全力で職務放棄してんなお前ぇ…」

魔王驚かすために【魔王城】に乗り込む勇者なんて聞いたことがない。

「まあ良いや、魔王攻撃受けたし、棺桶でちまちま魔王のHPを削ってやるぜ!!」

一応微妙に魔王退治を覚えていたらしい。

「ふはははは!流石の魔王も棺桶を壊すなんて心の傷むこと出来ないだろ!」

「ほざけ。」


▼魔王の攻撃。

▼【地獄の業火】

▼【棺桶】は燃え尽きた。

木でできた、ただの【棺桶】は普通に消し炭になった。

「お前っ、人の死体をなんだと思ってんだ!?」

「その仲間の死体を投げつけてくるようなお前にだけは言われたくないセリフだな。」

唯一の武器【棺桶】を失った勇者は再び丸腰。

「…選択肢をやろう。」

「2の帰るでお願いします。」

まだ何も言っていないが展開は読めたらしい。

ふと口の中の飴が溶けきったのに気づいた。

「…ところで勇者よ。お前は飴を食べるときに噛み砕くか?最後まで舐めるか?」

「唐突だな…最後まで舐めきるぞ。」

「!」

噛み砕くというなら一撃くらいいれてやろうと思っていたが…心得ているらしい。

「ふっ、そうか。」

「?」

訳がわからないという顔をしているがわざわざいうことでもない。

「んじゃ、帰るわ。また来る。」

「次は土産を持って来い。」

そういうと勇者は驚いたように瞬きをしたが相好を崩し、

「甘いもん選ぶから楽しみにしとけ。」

といって【終焉の間】から出て行った。

▼勇者は立ち去った。


一人になった俺は【無駄に豪華な椅子】から下り自室に戻る。机のイチゴ大福を一つ手に取りもっちゃもっちゃ食べ始める。…思ったより餅が伸びる。

餅をみょいーんと伸ばしながら振り返る。

何というか…前より装備品が酷くなっている気がする…。こんなことのためにパーティーを組まされたメンバーが哀れすぎる。勇者を見る目がなかったな。

今回の武器には本気で驚いたがアレを越える武器や装備品が在る気がしない。というかもうあいつが何を出しても驚かないようにしよう。ポーカーフェイスを極めよう。

にしても次回あいつは土産に何を持ってくるだろうか?一応期待しておこう。気に入ったら紅茶くらいなら出してやろう。

勇者をもてなそうと思う魔王も、魔王に土産を持ってくる勇者も、そろそろ転職を考えた方が良いのかもしれない。

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