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9話 「襲撃」

見てくださる方が増えてきて嬉しいです。

いつもありがとうございます。

よろしくお願いします。


レオ達は村の近くまで帰ってきた。


 前方の空に黒い煙が見える。


 ダンは顔が強張る。


「サイラス、あそこ……」


 サイラスは表情が凍りつく。


「……なんだ、あれは」


 煙だけじゃない。


 遠目にも分かるほど大量の影が動いている。


 ゴブリン。


 数え切れないほどのゴブリンだった。


 村の周囲を覆っている結界も所々砕けている。


「おいおい……」


 ダンが目を見開く。


「冗談だろ……」


 レオも言葉を失った。


「そんな……」


 村が襲われている。


 今まさに。


 自分たちの村が。


 サイラスは拳を握った。


「サラ……リア……」


 次の瞬間。


 馬車から飛び降りる。


「ダン!」


「サイラス?」


「レオを頼む!」


「お、おい!」


 サイラスは剣を抜いた。


「俺は二人を助けに行く!」


「お父さん!」


 レオが立ち上がる。


「僕も行く!」


「ダメだ!」


 サイラスは振り返らない。


 いつになく強い声だった。


 レオは息を呑む。


 サイラスは続ける。


「絶対にダンの側を離れるな!」


「お父さん!」


「約束だ!」


 それだけ言うと。


 サイラスは村へ向かって走り出した。


「はぁ、行っちまった…」


 ダンはため息をつきながら走りゆくサイラスを見つめる。


 そして。


 遠くで光が爆発した。


 眩い閃光。


 ゴブリンが何体も吹き飛ぶ。


「お父さん……」


 レオは呟く。


 さらに光が走る。


 またゴブリンが消し飛ぶ。


「相変わらず無茶苦茶な野郎だぜ……」


 ダンも頷いた。


 しかし。


 レオは拳を握った。


「ダンさん」


「あん?」


「僕も行かないと」


「ダメだ」


「でも!」


「ダメだ」


「このままじゃお母さんもお姉ちゃんも!」


 ダンは歯を食いしばる。


「だからってお前を危険な目に合わせられるか!」


「でも!」


 レオは叫んだ。


「僕の家族なんだ!」


 ダンは黙る。


 サイラスは強いが1人しかいない。


 数が多く、村に侵入するゴブリンを止める事はできない。


「くそっ……!」


 ダンが頭を掻きむしる。


「くそったれ!」


 そして立ち上がった。


「俺もやっぱ黙っちゃいられねぇんだ!」


 レオの顔が明るくなる。


「ダンさん!」


「ただし!」


 ダンは指を突きつけた。


「絶対に俺の後ろを離れるな!」


「うん!」


「死ぬ気で守ってやるが、勝手なことしたらぶん殴るぞ!」


「わかった!」


 二人は馬車を降りた。


 ダンは近くの木へ馬車を括り付ける。


「よし」


 レオはそっと花束を荷台へ置いた。


「お母さんとお姉ちゃんに渡したかったのに……」


 小さく呟く。


「必ず渡そうぜ」


 ダンが言った。


「うん」


 二人は走り出した。


 村へ。


 家へ。


 家族のもとへ。


ーーーーーーーーーーーー


「ギギャアア!!」


 ゴブリンが飛び出してくる。


 ダンは巨大な剣を振った。


「邪魔だぁ!」


 ドゴォン!!


 ゴブリンがまとめて吹き飛ぶ。


 木へ激突する。


 さらに一体。


「ギッ!」


「失せろ!」


 蹴り飛ばす。


 レオは目を輝かせた。


「すごい……!」


「感心してる場合じゃねぇ!」


 ダンが怒鳴る。


「走れ!」


「うん!」


 しかし。


 レオは木剣ではなく真剣を握りしめる。


「ダンさん」


「なんだ」


「僕も戦わせて」


「ダメだ」


「僕だって!」


「ダメなもんはダメだ!」


 その時だった。


 ダンの横から一体のゴブリンが飛び出す。


 棍棒を振り上げる。


「ギャアア!」


「っ!」


 ダンの反応が僅かに遅れた。


 レオは考えるより先に動いた。


「うおおおおっ!!」


 剣を振る。


 ザシュッ!!


 ゴブリンの身体が斜めに裂けた。


 そのまま倒れる。


 静寂。


「……え?」


 レオは固まった。


 倒した。


 自分が。


 初めて。


 魔物を。


「やった……」


 胸が高鳴る。


「やった!」


 だが。


 背後。


 別のゴブリンが迫っていた。


「ギシャアア!!」


 レオは気づかない。


 棍棒が振り下ろされる。


「レオ君!!」


 ダンが飛び込んだ。


 ガキィン!!


 棍棒を受け止める。


 そのまま剣で両断した。


 レオは振り返る。


「ダンさん!」


「馬鹿野郎!!」


 怒鳴られた。


「戦いの最中に気を抜くな!」


「ご、ごめんなさい!」


 ダンは息を吐く。


「ったく……」


 そして倒れたゴブリンを見る。


「レオ君」


「なに?」


「お前くらいの歳でゴブリンを一太刀で斬れる奴なんてそういねぇぞ」


 レオは少し照れた。


「基礎をいっぱいやってたからかな?」


「はっ」


 ダンは笑った。


「これがサイラスの息子か」


 だが次の瞬間。


 真顔になる。


「レオ君」


「うん」


「これは本当の戦いだ」


「……」


「気を抜いたら死ぬ」


 レオは頷いた。


「はい」


「よし!」


 ダンは剣を肩へ担ぐ。


「このまま家まで突っ走るぞ!」


「うん!」


ーーーーーーーーーーーー


 一方その頃。


 リアは祭壇の前に座っていた。


 外では戦いが続いている。


 叫び声。


 爆発音。


 結界が軋む音。


 それでも。


 家の中だけは静かだった。


 リアはロザリオを握る。


「女神様……」


 祈る。


「どうか……」


 その時だった。


 バァン!!


 玄関が勢いよく開いた。


 リアが跳ね上がる。


「サラ!リア!大丈夫か!」


 聞き慣れた声。


「お父さん!」


 リアは立ち上がる。


 祭壇から飛び出した。


 玄関へ走る。


 そこにいたのは。


 剣を握った父だった。


「お父さん!」


 リアは抱きつく。


「怖かった……!」


「ああ」


「会いたかった……!」


 サイラスが頭を撫でる。


「よく頑張ったな」


 リアは泣きながら聞く。


「お母さんは?」


「どこだ?」


「みんなと戦いに行ったの」


 サイラスは少し黙った。


 そして。


「よし」


 立ち上がる。


「サラを連れて村を出るぞ」


「う、うん」


 リアは頷く。


 だが。


 ふと気になった。


「ねぇお父さん」


「ん?」


「レオは?」


「………」


「お父さん?」


「ぐ……っ……」


 リアは顔を上げた。


 そして。


 見た。


 父の胸から。


 剣が突き出ているのを。


「……え?」


 理解できない。


「お父さん?」


 血が流れる。


「お父さん……?」


 サイラスの身体が揺れた。


「に……げろ……」


 どさり。


 倒れる。


 血が広がる。


「お父さん!!!!!」


 リアは叫んだ。


 震えながら。


 剣の持ち主を見る。


 そこにいたのは。


 頭に角を生やした青い肌に、黒い装束を着た人物だった。


エスタークだ。


「ふむ」


 エスタークは静かに呟く。


「私のゴブリンの多くがやられていたのは、この剣士でしたか」


 そして。


 リアを見る。


「あ、ぁ……」


 へたり込む少女。


「おや?」


 エスタークは微笑む。


「あなたは村長のところまで案内してくださったお嬢さんではありませんか」


 リアは震える。


 声も出ない。


「おかげさまで探していた魔剣、『断絶の魔剣』を手に入れることができました」


 そう言って。


 片膝をつく。


 手を伸ばす。


 リアは壁際まで後退った。


「ひっ……!」


「おや?」


 エスタークが首を傾げる。


「何故そんなに怖がるのです?」


 微笑む。


「あなたと私の仲ではありませんか」


 リアは理解できない。


 何を言っているのか。


「…………」


 リアは震えるだけだった。


 エスタークはため息をつく。


「そんなに怖がられては私もショックです」


 魔剣を持ち上げた。


「試しに」


 にこりと笑う。


「この剣に宿る特別な魔法で、恐怖を解放して差し上げましょう」


 ゆっくりと。


 リアの胸へ剣を突き刺した。


「ぁ……」


 血は出ない。


 だが。


「うぐっ……!」


 苦しい。


 苦しい。


 身体の中を何かが這い回る。


「ぁ……あ……」


 その時。


「おい!!」


 声が響いた。


 エスタークが振り向く。


 リアの胸から剣を抜く。


 リアは床へ崩れ落ちた。


「はぁっ……はぁっ……!」


 入口には。


 レオとダンが立っていた。


「あなた達は?」


 エスタークが尋ねる。


 レオは息を呑んだ。


「な……なんだあいつ……」


 見たことがない。


 青い肌。


 角。


 人ではない。


 ダンが怒鳴った。


「ダチん家で何してやがる!!」


「ダチ?」


 エスタークは首を傾げる。


「あぁ」


 身体をずらした。


「もしかしてこの方ですか?」


 そこには。


 倒れたサイラス。


「お父さん!!」


 さらに奥には。


 リア。


「お姉ちゃん!!」


 レオは走り出そうとする。


 しかし。


 ダンが腕を掴んだ。


「ダメだ!」


「離して!」


「お父さんのところに行かせてよ!!」


「ダメだ!!」


 怒鳴り声。


 レオは止まる。


 ダンは一息吐いて低い声で言った。


「レオ君」


「……」


「俺があいつを引きつける」


「え?」


「お前はリアちゃんを連れて逃げろ」


「お父さんは?」


 沈黙。


 そして。


「サイラスは……置いていけ」


「そんな……」


 信じられない。


 あの父が?


 最強だと思っていた父が?


 負けた?


 ダンは肩を掴む。


「分かったな?」


「……」


「お前ならやれる」


「……うん」


「ゴブリンも倒しただろ」


 ダンは説明する。


「俺があいつを動かしたらリアちゃんを連れて馬車まで走れ」


「うん」


「縄を切って馬を走らせろ」


「馬は?」


「手綱を叩け!」


「うん…」


「どの方向でもいい!」


 ダンが叫ぶ。


「とにかく逃げろ!!」


「…分かった」


 ダンは頷いた。


「よし」


 そして。


「レオ」


「なに?」


「目を閉じろ」


 閃光玉を取り出す。


「光ったら俺が斬りかかる」


「うん」


「その隙に逃げろ」


「分かった」


 ダンは息を吸う。


 そして。


「うおおおおおおおおおおっ!!」


 閃光玉を地面へ叩きつけた。


 眩い光が爆発する。


 ダンは剣を構えた。


「お前だけは……!」


 地面を蹴る。


「絶対に許さない!!」

ありがとうございました。

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