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座敷童になるとは思うまい  作者: 猫野住処
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第十三話 地脈について その二

 あなたは、飛行機に乗ったことがあるだろうか?


 私は往復二回、計四回乗ったことがある。

 

 その時の感想は、めちゃでけー! だった。

 

 何がと問われると、まず飛行機そのものがたくさんの人数を押し込めて尚、空に浮かぶことができる、それを実感したことで1でけー。

 そして、実際に離陸して、日本列島の海と陸の境目がばばーんと目に入った瞬間で2でけー。

 雲の中で飛行機が大きく揺れて、風を受ける翼を見て3でけー。

 

 飛行機とかヘリコプターとかを知識で知っていても、実際に間近にするのとでは、はるかにスケールが違う。

 と、その時に思ったものだ。

 車ほど身近ではないのもポイントが高いと思うけど、要するに何が言いたいのかと言うと、日本でけー、ってことだ。

 

 

 その時のスケールを、あの黒いわさねばから感じ取った故に、私は超ビビったのであった。

 そのビビり具合に二人は驚いたようで、慌てて先ほどのミニこたつが用意された。

 

 「世界地図と、日本地図をご用意しました。あおい様はあの瘴気から、何を感じ取られたのですか?」

 

 早速、こたっちゃんが二つの地図を広げてくれた。

 

 「その前に、一呼吸。お茶ありがとうねん」

 

 ベティさんがそんなことを言いながら率先してお茶に手をつけた。

 私もつられて、一口。はふぅ。

 

 「こたっちゃんも飲みー。私が用意したんじゃないけどね」

 

 こたっちゃんが一口「いただきます」とお茶を含んだところを確認して、私は二つの地図を見比べた。

 

 世界地図と日本地図だねえ。

 

 それは私の知っている地図とほぼ一緒だった。見比べたら、欠けてるとこ増えてるとこあるのかもだけど、そんなに詳しい訳じゃないし。

 天気図で見る、地理で見たことがある感じの地図に見えた。

 

 「これさ、関東地方だけ細かく見れる?」

 

 「では拡大しますね」

 

 こたっちゃんがそういうと、すっと手をかざして関東地方が地名付きで表示される。

 スマホじゃなく普通の用紙にこんなことができるとは、科学技術発達してんなー。

 

 「いえ、これは霊力科学連結システムのちょっとした応用です」

 

 えっ……え、まじで?

 

 「って、ようき様が似た言い回しをしていました。実際には単なる霊力ですよ?」

 

 こたっちゃんのジョークは分かりづらいんだよ!

 家主の、特にようきの影響受けすぎ。ってか、単に混ざりたいだけかも、せとさんたちと。

 まあ、それは一先ず置いといて。

 

 「東鏡、埼珠、千場、茨樹、土地義、群真、神流川……」

 

 「どういたしました?」

 

 「うーん、ここ、やっぱり私の知ってる世界じゃない」

 

 こたっちゃんは小首を傾げて、こちらを見つめてくる。

 今更、何を言っているのか、と。

 

 「そうだよね、そうなっちゃうよね。でも、ここは……いや、私が、違う世界なんだね」

 

 世界の違いに、やっぱり馴染めなくて、ちょっとへたれた顔をしていてしまったのだろう。

 こたっちゃんを困らせるつもりはないんだけど。

 

 「キトゥンちゃんは、この家を整えるのは嫌?

 嫌なら、そう言っても良いのよ?」

 

 「ベティ様、そんな……」

 

 こたっちゃんが青ざめた顔でベティさんを見ている。

 相対したベティさんは涼しい顔だ。

 

 「貴女は座敷童が大事なの? キトゥンちゃんが大事なの?

 それとも?」

 

 長い沈黙の後、返答は返ってきた。

 

 「……座敷童様の為さり様に従います」

 

 力なくそう言って、こたっちゃんは目を伏せた。

 そういえば、私はゴミ屋敷を嫌がって逃げ出すことについて、複数回文句を言った気がする。

 うやむやになっていたが、私は土地に居る方が良いけど、元座敷童の狐がいつの間にか消えた理由は分かっていない。

 こたっちゃんはこたつとその家主が大事そうだけど、私がここに居付いて座敷童として存在すること自体も重視していそうだ。

 狐さんの出奔にも感情を揺らしていそうだけど。

 うーん。

 

 「こたっちゃんは、どういう家が良い?」

 

 そういって、反応を伺った。まだ私は、こたっちゃん自身の希望は聞いていない。

 目をぱちくりと瞬き、私とベティさんを交互に見て、また目を伏せた。

 

 「私は……不安でなりません。今は特に問題ないように見えますが、突然支えとなってくださる方がお隠れになるのは……やはり堪えます」

 

 「まあ、私は暫く御厄介になると思うよ? 他に行く当てもないし、元の世界に帰っても、どうしようもなさそうだし?」

 

 そこでひとつ息を吐き。

 

 「まあ、できるだけはやってみるよ。それを見守っててくれるくらいはしてくれる?」

 

 「……居て頂けるなら、それ以上は望むべくもありません」

 

 そう、言葉短く答えてくれたこたっちゃんだった。

 色々まだ、聞きたいことはあるけど、今ではない。そう思う。

 私は空気を換える様に、腹から声を出して宣言した。

 

 「よしっ、じゃあ頑張ってみるよ! ベティさんも宜しくね!」

 

 「私の知識が役に立てばいいのだけど。よろしくキトゥンちゃん」

 

 ここの三人だけでもばらけてしまうような意見であれば、もう少し他の妖精と話してみることも考えたけど。

 今はベティさんが支え、こたっちゃんが監督してくれて、私が突撃特攻隊ってことで。

 

 「じゃー、今からねばねば突撃隊に必要な私の感じを話すね」

 

………

……

 

 まず、ねばわさに触った感じ、地脈が悪いことになっていること。

 地図を見た結果、その地脈ってやつは、日本列島と同等くらいの大きさを内包していること。

 県名が私の元居た場所とは少し違うこと。

 

 その3点を伝えた。

 

 「なんか、超スケールが思ったよりでかかった」

 

 「地脈が大きく乱されていたのですか? それなら、もっと早くに気付けた可能性もありますが」

 

 「あたしとしても、キトゥンちゃんが驚くほどの瘴気としては感じていなかった、と思うけどぉ」

 

 それぞれの意見を聞いてもさっぱりだ。

 いや、ちょっと違う?


 「瘴気? としてはあんまりびっくりしなかったけど、触った感じは超でかかったよ? そういえば、地脈ってどれだけの範囲かは聞いてなかったよね?」

 

 そういうと、二人は互いに視線を確認し合い、同時にため息を吐いた。ベティさんの顔色は伺えなかったけど、こたっちゃんは青ざめて居る様にすら見える。

 

 「おそらく、あおい様は地脈の……何と言ったら良いのでしょう。ええと、全体図を感じることが出来たのだと、思います」

 

 え、どゆこと?

 

 「あたしとしては、甲羅がちょっと重くなったけど、それは甲羅が悪いのであって、あたし自体は健康そのもの、と感じたというのが近いかしら?」

 

 ええ、甲羅って悪くなるものなの?

 頭にハテナを浮かべていた私を見かねたのか、こたっちゃんも言葉を連ねてくる。

 

 「あおい様が体験ち、したことは、おそらく……おそらくですよ?」

 

 なぜか言葉がたどたどしい。舌足らずの幼女て可愛いとか思ったのは、内緒にしておこう。

 今はそれどころではない、ちょっとこたっちゃんと親密度を上げたい気はするが、今じゃなくて!

 わたしおちつけ。

 

 「日本列島を区分けした一部、更に一部の、更に細かい末端から、地脈の状態をある程度読み取った、ということになりますね」

 

 そう言われて、再度地図を目にした。

 こたっちゃんは”日本地図”と言っていた。

 だが、私の違う世界の”日本”は名前が違っていても、地図を見て自分としては、大体範囲は把握できた。

 解釈が違っていたら困るので、地図は出してもらったけど、違和感なく受け取っていた。

 

 私が少なくとも知っている範囲の日本列島には、全て地脈が流れている、ってことは分かっちゃった。

 

 「え、不便くね?」

 

 「感想それですかっ?!」

 

 「だって、指切って、全身がうわーってなったら嫌じゃない?」

 

 「いえ、そうではなくてですねっ」

 

 わたわたするこたっちゃん。

 そこに見かねて、ベティさんが言葉を挟んだ。

 

 「今問題なのは、現状のこのお部屋はどうしてこうなっちゃったか、キトゥンちゃんで解決できるのか。

 そこだと思うわぁ」

 

 優雅に頬に手を当て、にこりと微笑むベティさん、マジ神々しいっす。

 こたっちゃんも目をキラキラさせて、コクコクと頷いている。

 

 あー、そうだね。どうしよっか?

 

 「ようし、理解を深めた今! もう一回突撃しよー」

 

 トライアンドエラーって、大事だよね。

 でも、なんでかな。二人からキラキラが少し薄れた気がした。

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