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座敷童になるとは思うまい  作者: 猫野住処
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第十二話 地脈について その一

 「最近、出るのよぉ」

 

 ごくり、一体何が?

 

 「黒くてわさわさする、アレよん」

 

 脳内を一瞬よぎった、アレ、ではないことを祈ろう。

 ほら、妖精的観点から鑑みるに、真っ黒くろいのの方がこの家には出そうだし?

 ただ、あのゴミ部屋見ちゃうとなぁー、人類の天敵と言っても過言ではないあの虫の存在を無視することはできない。

 クソギャグではなく、マジで。

 

 「瘴気、ですか?」

 

 「ご名答、最近そのせいで、お風呂でもあんまりすっきりできないのよねん」

 

 何か二人では納得し合ってるけど、私にはちんぷんかんぷんだ。


 「はい! 瘴気って何ですか?」


 分からないことは即質問。これに限る。何となく、瘴気って悪い感じのニュアンスだけど、黒くてわさわさするのかは見ないと分かんないし。

 質問にベティさんは後は宜しくなオーラを放って、こたっちゃんを見つめた。

 その視線を受けて、唸りながらも説明してくれた。


 「前に、パズルゲームの例えをお出ししましたよね?」


 「霊力は動かせるけど、地脈は動かせないとかのアレ?」


 「そうです。その例えに添うならば、瘴気は地脈から発せられるSOSですね。ピンチBGMと言いましょうか」

 

 え、何かいきなり枠外なイメージなんだけど。

 

 「いえ、そうでもないですよ。ピンチBGMは動かせるモノをあおい様が動かして、動かせないモノを整えれば通常BGMに戻りますでしょう?」

 

 まあ、そうかもしんないけど。

 

 「じゃあ、その瘴気ってのは直接干渉はできないってこと?」

 

 「それ自体は干渉できません。霊力を動かして、地脈を整えたら消えるような感じですね」

 

 何か思ったより面倒そう。

 

 「うえーっと、じゃああれだ。

 先ず地脈の乱れが起きた原因の霊力を探して、霊力に干渉して地脈の影響を取り除いて、瘴気が無くなったら、お仕事完了?」

 

 「そのような流れになりますね」

 

 こたっちゃんはその解釈を聞いて、安心したような微笑を浮かべた。

 

 「ちょっと待って、今のやつメモっとく」

 

 私はいそいそとスマホに追記していく。

 

 ・地脈の乱れが起きた原因の霊力を探して、霊力に干渉して地脈の影響を取り除いて、瘴気が無くなったら、お仕事完了

 

 「ただねえ、乱れが起きた原因が分からないのよねぇ。

 狐ちゃんなら分かるんだろうけど」

 

 「狐って、この世界では物知り的な?」

 

 「いえ、そもそも先代様が狐でした」

 

 え、マジ? それ初耳じゃね? あれ、なんか前に言ってたような?

 

 こたっちゃん曰く、自作パソコンが壊れてしまったので、新しいものを探しに山から下りてきた狐らしい。

 途中でお腹が空いて行き倒れそうになっていたところ、ようきに餌付けされて事なきを得たことから、その恩返しをするために座敷童として居付くようになったのだとか。

 その前の座敷童とは何やら交渉して、狐の山にご招待することで恙なく座敷童の席を譲ってもらったのだそうだ。

 

 懐かしそうに先代の話を聞かせてくれるこたっちゃんは、実に福福としている。

 対称的に苦笑しているベティさんを見て、これは何か裏話がありそうだなーと思っていたら、案の定ベティさんは私にだけ向けてウインクしてくれた。

 ウインクなんて、意識的にやったことなくて戸惑ったけど、目をパチパチしておいた。

 通じてると思う、多分きっと。

 

 「先代様がいない今、あおい様に今一度お風呂場を見て頂きたいです。ベティ様も一緒に来ていただけると心強いのですが、構いませんか?」

 

 「いいわよん、案内してあげる」

 

 「そゆことなら、お願いします」

 

 残っていたお茶を飲みくだし、気合を入れる。

 こっちの世界の不思議に突撃していくのは、私的には初めてだ。

 

 「よし、行ってみよー!」

 

………

……


 お風呂場なう。

 ベティさんと初邂逅した時には感じ取れなかった、違和感をビシバシと受けている。

 ピンチBGM、なるほど。

 ここには何か、どうにかしないといけない何かがある。


 それをまず、耳で感じ取ることができた。ただ、例えがパズルゲームだったせいか、ホラー感は皆無。

 ひゅーどろろみたいなBGMの方がシーン的にはあってるのかもしれないけど、刷り込みの力ってすげー。怖いよりは良いから、私としてはオールオッケー。

 

 さっきはベティさんのインパクトが強かったせいかなあ……それとも、感覚を説明されて理解度が深まったせいなのか。

 まあ、そもそもあんまり気配とか云々考えてなかったし、すぐ離れちゃったから気付かなかったのかもなあ。

 

 ベティさんのことを思い出していたら、釣られるように、黒いわさわさも見えるようになった。

 わさわさと言うより、ねばねば? 

 

 「ほら、あの辺ねぇ。排水溝の辺りよねん」

 

 「そのようですね、あの辺りから嫌な感じがします」

 

 二人が指さす方に目を向けると、そこには一般的にお風呂に設置されている排水溝があった。

 お風呂場自体は目立った汚れもなく、少し水回りに黒ずみがある程度だ。排水溝も見た目の綺麗度は及第点といえるだろう。

 しかし、意識を向けると、ピンチBGMとわさわさが明らかにあそこから発生していることが分かった。

 

 「あおい様、まずは地脈の流れを感じてみてください」

 

 ん-と、土地に流れる力が川のように流れるやつ、だっけ?

 普段意識していないものを意識するのは難しい。木を見て、その根を意識するのは難しい的な。

 そもそも見えないし。

 

 せめて、触った感じからなんか分からんかな。

 

 浴室に掌を付けて、ペタペタと触ってみる。

 流石に分かんないか。

 

 「あおい様、何を?」

 

 「ちょっと集中させて」

 

 じゃあ、あのねばねばを触ってみるしかないかな。瘴気はBGMであり目で見える嫌な感じ、って理解なんだけど。

 排水溝から出ているねばねばなわさわさをわしっと掴んでみる。

 

 その瞬間、ぞわりと肌が泡立っていった。

 

 思ったより、めちゃでけー!

 

 大元はきっと、こんな浴室では収まりきらない。この家すらも飛び越えて、もっと大きいものだ。

 

 「地脈って、どれだけの範囲にあるもの? 地図上で分かる範囲で教えて」

 

 真剣な目を二人に送ると、私の緊張を感じ取ってくれたのだろう。

 

 「まずは、この地の地理から説明させて頂きますね」

 

 そういや、私ってここが日本だと勝手に思ってたけど、ちょっと違うっぽいんだよね。神奈川が神流川だし。

 

 「ここにずっと居るのは、お肌に良くないから……さっきのお話したところで、少しキトゥンちゃんを休ませてあげましょぉ」

 

 そうして、私たちは慌ててお風呂場から撤退したのであった。

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