ハインツの真意
パシャリ、という湿った音と共に冷たい水を顔にかけられ、思いっきりむせながら目を覚ます。
ケホケホ、と咳き込んでいると、隣からほれ、と布を渡された。
「それで顔を拭いとけ」
俺と目を合わせようとしないハインツから布を受け取り、顔を拭いてから、ありがとうといって返す。
そのあとの言葉が続かず、気まずい沈黙が流れた。
「イルナは大丈夫だった?」
「おかげさまで。まだ目を覚ましていないが、ハルバが看病しているししばらくすれば気がつくだろう」
それは良かった、と返し、再び俺たちの間を沈黙が支配した。
気まずい、気まずすぎる。
皆の無事も確認したところだし、帰ってもいいだろうか
それじゃあこの辺りで、と腰を上げようとしたところで、タイミングがいいのか悪いのか、黙っていたハインツが口を開いた。
「……スキル、使えるようになったんだな」
「……あぁ」
それ以上、なんて続ければ良いのかわからない。
けれど、ハインツがまだ何かを言おうとしているようだったので、座り直して黙って待つことにした。
「助かった。心から礼を言うよ。ありがとう」
そして何より、と彼は続ける。
「昨日は失礼な態度をとってすまなかった」
ハインツに言葉を返そうとするが何も思い浮かばない。
代わりに、一拍おいて気になっていた事を訪ねた。
「なぁ、あんたはなんで俺をパーティに入れてくれたんだ?」
ハインツが俺とパーティを組んだ時には、すでに四回パーティを追放されていて、冒険者の間では俺の無能ぶりか完全に広まったあとだ。
にも関わらず、ハインツは俺をパーティに迎え入れてくれた。
「……お前に、冒険者を諦めてもらおうと思っていたからだ」
少し言いづらそうにしながらも、ハインツははっきりとそう口にする。
「弱い俺が冒険者を名乗っているのが気に食わなかったからか?」
そうたずねると、ハインツは二度、三度と首を振った。
「俺の友達にな、《職なし》で冒険者になろうとしたやつがいたんだ。その友達に重なって見えたからかもしれない」
「……その友達は」
俺の言葉に、ハインツは何も答えず首を振った。
「ま、余計なお世話だったみたいだ」
そういって、ハインツは俺の方を見る。
「良いスキルだな。それだけの力があれば、すぐに一流の冒険者になれるだろう」
勿体無い人材を手放しちまったなぁ、とぼやきながら、ハインツは立ち上がり俺に背を向けた。
「龍樹についての報告は俺たちに任せとけ。報酬も出るだろうからそれも後で渡しに行く。それとも、自分を蔑ろにした奴らには任せられないか?」
「いいや、お願いするよ。それと、俺からもう一つお願いがあるんだけど」
命の恩人だ、なんでも言えと言ってハインツは視線だけこちらに向ける。
「また酒場であったら、たまには一緒に飯を食ってくれないか?」
ぼっち飯ってなかなかきついんだぜ、と俺が真顔で言うと、ハインツは苦笑いを浮かべながらわかったわかったと手を振った。
「じゃあな。お前さんの冒険者人生が光輝くことを祈ってるよ」
「ありがとう。ハインツも気をつけて帰れよ」
そういってハインツ達に手を振り、森林地帯を後にする。
少し寝たとは言え、魔力はもうほとんど残っておらず、これ以上狩りを続けるのは難しそうだ。
人生初の強敵撃破もしたし、今日は奮発して飲み明かそうと、晴れ晴れした心で街へと歩き出した。
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