冬の街ホワイトタウン
今年もホワイトタウンに冬がやってきました。ホワイトタウンの人々はみな、降り積もる雪の冷たさに負けないくらい温かい心で、その日を待ちわびていました。
そして、街の人々のせわしない気持ちに応えるように、『その日』はあっという間にやってきました。ですが、冬がきらいなベルばあさんの顔は、晴れるどころか曇る一方です。
『12月24日』の夜、多くのプレゼンターがこのホワイトタウンから飛び立ちます。
ホワイトタウンが冬の街と呼ばれる理由は、まさにそこにあります。毎年12月25日は冬の訪れを祝福する日。ホワイトタウンでは、その日を盛大にお祝いするために、前日の夜ーーつまり12月24日の夜にたくさんのプレゼンターが飛び立ち、世界中の子どもたちにプレゼントを配るのです。
ホワイトタウンでは毎年、選ばれた若者が新しいプレゼンターとなり、赤い衣装を身にまとい、空飛ぶ幻の動物に乗って世界を周ります。
だから、ホワイトタウンの人々はみな誇らしいのです。自分の街からプレゼンターが飛び立つことが。自分がプレゼンターに選ばれることがなくても、飛び立つ人々を誇りに思うのです。
今夜はそんな大事な夜。選ばれたプレゼンターも、彼らを見送る人々も、みな体を震わせています。ですが、それは寒さや恐怖によるものではありません。緊張や喜びを心に秘めているのです。
だから、今夜は町のほとんどの人が家の外に出ています。ですが、ベルばあさんは違います。ベルばあさんは、相変わらず家の中にこもって、温かい暖炉の前にあるイスに腰掛けています。ぶ厚くて大きな毛布を肩まで掛けて、飲みかけのココアをテーブルの上に置きっぱなしにして。
そして、窓際に置かれた写真立てを見つめて。
その写真に写っているのは二人の男女。若いころのベルばあさんと、リプさんです。二人は昔、お互いに愛し合った仲でした。
ですが、リプさんは今はもういません。若いころに、不幸な事故で亡くなってしまったのです。
リプさんもかつて、プレゼンターに選ばれた一人の若者でした。彼はプレゼンターに選ばれたことを誇りに思い、ベルばあさんもまた彼を誇りに思っていました。
そうしてリプさんはプレゼンターとして空に飛び立ち、世界を周りましたが、ベルばあさんの元へと帰って来ることはありませんでした。ある夜、仲間のプレゼンターが空から落ちてしまいそうになり、リプさんはそれを助けるために……。
ベルばあさんは、何も初めから冬がきらいだったわけではありません。
ベルばあさんは、何も初めからプレゼンターがきらいだったわけではありません。
リプさんが帰って来なくなったその日から、ベルばあさんは冬がきらいになりました。
リプさんが帰って来なくなったその日から、ベルばあさんはプレゼンターがきらいになりました。
だから、ベルばあさんは冬の訪れを喜びません。
だから、ベルばあさんはプレゼンターが飛び立つことを祝福しません。
毎年こうやって、12月24日の夜は家で一人、背中を丸めています。
ベルばあさんは、二人が写った写真を見つめて思いました。
あんた、言ったじゃないかい。きっと世界を周って帰って来たら、あたしにもおくりものを届けるって。そんなこともできないで、何がプレゼンターだよ。
写真の中のベルばあさんとリプさんは、二人ともとても温かい笑顔を浮かべていますが、それを見るベルばあさんの顔はとても寂しそうです。
ベルばあさんは、ぶ厚くて大きな毛布を首までかぶり直して思いました。
今日は、やけに冷えるねえ。
そんなことをぼうっと考えていると、いつの間にかベルばあさんは、うつらうつらと眠りについていました。
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目が覚めると、ベルばあさんは足元がふわふわするような、何だか不思議な温かい感覚に包まれていました。
何だい。あたしゃ眠っちまってたのかい。
ベルばあさんはそう思って、この温かさに包まれたまま、何だかそのままもう一度眠ってしまいたい気持ちになりました。
「起きなよ。ベル」
ですが、ベルばあさんを起こそうとする声が、ベルばあさんのうしろから飛んできました。
一人暮らしのベルばあさんは、家に自分以外の人がいることにびっくりして目を覚ましました。
「誰だい!」
そう言って、ベルばあさんが振り返ると、そこには一人の若者が立っていました。
「あ、あんたは……」
ベルばあさんは口を大きく開けたまま、続きの言葉が出て来ません。
「久しぶりだね。ベル」
笑顔でそう言ったのは、リプさんでした。
明日も18時に投稿します。




