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第3話

北の港は、お父様の言った通り「地獄」だった。

降り注ぐ弾丸の雨。肉を抉る鉛の熱。私は踊った。ピンクのポルシェを戦場の入り口に停め、一歩踏み出すたびに私の体には新しい「穴」が増えていく。


「あはは! もっと、もっと頂戴……!」


敵の傭兵たちが、化け物を見るような目で私を見る。

ズタボロのブラウス、血に濡れたボルドーのコート。立っているのが不思議なほどの重傷を負いながら、私は最高に幸せな気分で彼らの眉間を撃ち抜いていった。


---


任務を終え、這うようにして辿り着いた書斎。

お父様は、私の姿を見た瞬間に椅子から立ち上がり、そのまま膝をついた。


「……すまなかった、真白」


その声は震えていた。

「お前を『お嬢様』という箱庭に閉じ込め、女だからと戦いから遠ざけようとしてきた。お前が幼い頃、男たちが銃を取る姿を、どれほどの屈辱と嫉妬で見つめていたか……。私は、知っていながら目を背けていたんだ」


私は血の混じった唾を吐き捨て、朦朧とする意識の中で父を見つめた。

幼い日の記憶。男というだけで戦場を許される者たちへの、狂おしいほどの憎しみ。私は女として守られることなんて望んでいなかった。ただ、一人の修羅として、誰よりも惨めに、誰よりも激しく壊れたかった。


「この組織のすべてを、お前に譲る。……今日からお前が、我らが『ボス』だ」


お父様の手から差し出された、組織の長を象徴する金のリング。

私はそれを、血で真っ赤になった指に嵌めた。


「……っ、ああ……!」


視界が熱い涙で歪む。銃弾の痛みでは一度も泣かなかった私が、歓喜に震えて声を上げた。

お嬢様という名の屈辱的な檻が、音を立てて崩れていく。

私はようやく、惨めな「紛い物」から、本物の「怪物」になれたのだ。


---


それから数ヶ月。

街の噂では、新しいボスは「空前絶後の狂犬」だと言われている。


組織の長になっても、私のスタイルは変わらない。

重厚なデスクに座って指示を出すなんて、私には似合わないわ。

相変わらず、サクラ色のポルシェ356を独りで走らせ、一番過酷な現場へと真っ先に突っ込んでいく。


「ボス! 一人で行くのは無謀です!」

「いいから、黙って見ていなさい。これは、私にしかできない『仕事』なの」


部下たちの制止を笑い飛ばし、私は戦場に降り立つ。

あちこちに穴が開いたボルドーのコートをなびかせ、リボルバーのシリンダーを回す。


今日もまた、私の体には新しい勲章が刻まれる。

最高に可愛くて、最高にズタボロな、この街で唯一の「女帝」として。

私は、この絶望的な悦びを一生手放さない。

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