表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

第4話

激しい銃撃戦の余韻が残る、廃工場のコンクリートの上。

私の周囲には、文字通り山のような薬莢と、沈黙した敵兵たちが転がっている。


「……はぁ、今回も結構いっちゃったわね」


息を整えながら、私は愛車のポルシェ356のサイドミラーで自分の顔を確認する。頬に薄く流れた血を指で拭い、そっと微笑んだ。どんなに体がズタボロでも、表情まで醜く歪ませるのは「ボス」のすることじゃない。


遅れて駆けつけてきた部下たちが、惨烈な現場と、血の海に立つ私の姿を見て息を呑むのがわかった。


「ボス! ご無事ですか!? すぐに医療班を……!」


「いいわよ、騒がないで。これくらい、いつものことでしょう?」


私は彼らの動揺を、鈴を転がすような冷静な声で制した。

そのまま、お気に入りの黒いミニスカートの裾を、躊躇いなくひらりと捲り上げる。


「っ……!」


背後にいた若い部下たちが、目のやり場に困って一斉に顔を赤らめたけれど、私は構わない。露わになった太ももには、銃弾が貫通した生々しい穴が二つ。そこから溢れる鮮血が、白い肌を伝って黒いブーツを濡らしている。


私は慣れた手つきで救急キットを取り出すと、まるでお化粧直しでもするかのような優雅な動作で、消毒液を傷口に流し込んだ。


「……っ」


一瞬だけ、肺の空気が全部漏れるような鋭い熱痛が走る。けれど、私は眉ひとつ動かさない。むしろ、その痛みを愛しむように目を細め、清潔なガーゼを傷口に詰め込み、手際よく包帯を巻いていく。


スカートを整え、シワを伸ばし、汚れを払う。

その一連の動作は、戦場とは思えないほど「女の子らしく」て、それでいて、どんな熟練の兵士よりも冷徹で、迷いがなかった。


「準備はいい? 次の拠点を潰しに行くわよ」


立ち上がり、銃をホルスターに収める。

穴だらけのコートをなびかせて歩き出す私の背中を、部下たちは言葉もなく、ただ深い畏怖と狂信的なまでの尊敬の眼差しで見つめていた。


「……あの方が、俺たちのボスだ」

「なんて、強く……美しいんだ……」


背後で漏れる彼らの囁き声を聞きながら、私は心の中で密かに笑う。

そうよ。この痛みも、この屈辱さえ乗り越えた強さも、全部私のもの。


次はどんな傷が私を飾ってくれるのかしら。

アクセルを踏み込む足は、もう驚くほど軽やかだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ