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ミュージックオブスパーダ  作者: 桜崎あかり
ランカー再始動編

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第66話:再生のカウントダウン(その8)

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 8月5日午後1時40分、大和杏やまとあんずがDJイナズマのARゲームをプレイしている会場へ向かっている頃、ある人物がレジェンドアイドルと戦っていた。


「貴様の様なビジネスを知らないような連中が、我々にとっては一番危険なのだ」


 アイドル投資家を思わせるようなカリスマ性のある若手社長、そんな感じの外見をした男性は指を鳴らす事でドローンにも似たARガジェットを展開する。


 実際は、ドローンと言う訳ではなくビット系列の武装であり、運営にも認められたガジェットだった。


 ただし、ARガジェットの仕様エリアではないとドローンと勘違いされ、逮捕される可能性は否定できない。


「一番危険なのは、意図的に伝えるべき情報を歪め、それを踏み台にして自分だけが儲けようと言う考えを持つお前達だ」


 ある人物の正体とは、ARガジェットも未装備状態の山口飛龍やまぐちひりゅうだった。そして、彼の手元にはタブレット端末があり、そこに書かれている文章を若手社長に見せる。


《今回、我々の想定していた自体が実際に怒りました。複数アカウントをお持ちの方は、お手数ですがアカウントの統一をお願いします》


 この文章は、ネットのまとめサイト上で公開され、それとは別につぶやきサイトで拡散されたメッセージだ。


 しかし、このメッセージには決定的な何かが欠けており、一部のランカーをだます事は出来なかったのである。


 それでもだます事が出来たつぶやきサイトユーザーがメッセージを大量に拡散した事で、風評被害を与える事には成功していた。


《我々の想定していた案件が実際に発生いたしました。特別な称号等を持っていない一般ユーザーで、複数アカウントをお持ちの方は、お手数ですがアカウントの統一をお願いします》 


 山口が見せたもう一つのメッセージ、それは拡散されていたメッセージとは違う文面だった。これは、一体どういう事か?



《メッセージに関しては、ネット上へ拡散せず、公式ホームページのアドレスを引用する形で正しい情報を伝える事を努力してください》


 実は、偽メッセージテンプレはブービートラップとして運営が用意していた物だったのである。その証拠として、山口はタブレット端末に表示された本物のメッセージを突きつけた。


「このメッセージは、実際に運営が各プレイヤーに配布した物。偽のメッセージは、特定ユーザー宛と思わせるような改悪も確認されている」


 山口の話を聞き、若手社長の方が慌てる。それが意味するのは、自分が犯人と認めている事だった。


「そのメッセージを流したのは、別のアフィリエイト狙いの素人ユーザーだ。我々とは根本的に違う!」


 若手社長は、あくまでも自分達の犯行ではないと否定するが、ビットを展開して山口へ攻撃を仕掛けようとした。


「ARゲームの開始も予告されていない中、ARガジェットを武器として展開すれば――」


 山口がビットを停止させる為にARガジェットを展開しようと考えたが、ARゲームのシステム起動を前にガジェットを動かすのはフライングと同じ意味を持つ。


「無関係の人間に怪我をさせなければ良いという話だろう! しかし、我々としては――大手新聞が超有名アイドルファンによる無差別破壊行為と報道しなければ同じ事」


 向こうは別の意味でも本気である。このような歪んだ思考でコンテンツ流通を進めようとする事、それは――。


「お前達の考えを聞いて、自分が疑問に思っていた事に対する答えが出たような気がする」


 山口の目の色が変わる。物理的に目の色が変化した訳ではなく、いわゆる目つきが鋭くなったのと同じだろう。


「貴様も超有名アイドルの新曲オーディションで同じような事をしようとした。そうじゃないのか?」


 自分の金儲けの為だけにコンテンツを使い捨てる勢力、つまり超有名アイドルファンや悪目立ちネットユーザーと同義。


 しかし、若手社長は新曲オーディションで山口が受賞した事、その事に関してコンテンツを物として利用する行為だと非難した。


「その事に関しては否定しない。あの曲に関して準備期間が足りなかったのは、揺るぎない真実だ」


 遂に山口は、シールドビット展開し、戦闘態勢を取るのだが、今は反撃を仕掛けようとはしない。反撃しない理由は、ARガジェットガイドラインに従っている為だ。


「しかし、それと超有名アイドルファンが鐘やチートのような行き過ぎた力で、理由も理念なども存在しない力を振るう事――お前達のやっている事は同じではない!」


「自分の行った事を棚に上げる気か!」


「BLコンテンツではない作品をBL化して自己満足するような勢力――そこと組んでいたお前達に、それを言う資格はない!」


「BLコンテンツに関しては、こちらとしても被害者だ! 共通の敵を持つはずなのに、何故こちらを敵視する必要性がある!」


「そういったやり取りでさえ、ネット炎上に利用する為に使い、アフィリエイトサイトに載せることで莫大な利益を得ようとする。自分が一番憎いのは、他人が気づきあげてきた物に対し、タダ乗りで莫大な利益を得る投資家連中だ!」


「お前の言っている投資家は、全ての株式投資家に対する偏見だ! それこそ、お前達の作り上げたシナリオに――」


 若手社長と山口の対立が続くのだが、周囲がこの発言を聞いているような状況はない。なぜなら、彼らが戦っている場所はARゲームの遊戯エリアとは別だからである。


 それでもARガジェットが動くのには理由があり、このエリアでは太陽光パネルや各種設備を修理するのにARガジェットを応用したマシンを使っているのだ。


「しまった!」


 制御不能になったビットが太陽光パネルに激突、ビットは煙を上げて機能を停止する。爆発をしないのは、太陽光パネルの耐久度が異常なほどにある為だろう。


 この激突によって太陽光パネルは緊急停止、このパネルを使っている周辺エリアは停電を――と思われたが、停電の症状を見せているのはARゲームエリアのみであり、それ以外の店舗には影響がなかったようだ。


「今の太陽光パネル損傷だけでも、数億が動く案件になる可能性が高い。それをお前達は他のコンテンツ勢の仕業と拡散する気か?」


 さすがの山口も目の前で起きているパネル損傷の光景を見て、落ち付けと言うのが無理な話である。


 ネオARガジェットであるスナイパーライフルとシールドビットが連動した武装へ持ち替え、先ほどのシールドビットはガレージの方へと収納し、別エリアへ移動させた。


「ゴッドランカーを使いたければ、使うがいい! そうすれば、トップランカーの不祥事案件として処理が可能となる」


 若手社長の方は、無人ARガジェットを展開し、更には複数のARドールも呼びだした。そのドールの中には、かつて有名となったアイドルと似ているデザインも含まれており、それを見た山口も――。


「そう言う事か。レジェンドアイドルの正体は、お前達だったのか――」


 結局、自分達のコンテンツを頂点に立たせる為、かませ犬コンテンツや消耗品コンテンツのような意図しない流通をさせるコンテンツを増加させようと言うのか?


 山口は今の光景を目撃した事で、正常な思考が出来なくなっている。しかし、それでもゴッドランカーを使わないのは、ロックがかけられている事も理由の一つかもしれない。



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