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人型陸戦兵器「|武士《もののふ》」   作者: 荒井尾 麓
第三部 防衛高校対抗戦編
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第四十八話

 試合開始と同時に、特異な形式の機体は、両肩の装甲-「鷹襲(ようしゅう)

と「梟戟(きょうげき)」をパージする。

 パージされた二機は地面に着地する前に、羽を展開して空中を飛ぶ。

 そしてその二機は左右に分かれ、周囲を警戒しつつも索敵を進める。

 少女は決して広くはないコックピットの中、通常の機体のコックピットよりもモニターや小さな操縦桿が追加され、さらに狭くなった中で冷静に、いま飛び立った二機から送られてくる情報を精査する。


「山岳フィールドですか。私には非常に不利ですね」


 今回少女が戦うのは、木々と傾斜が機動力を奪う小高い山、山岳フィールドだった。

 少女はまず、山の中にある舗装された道に出る。

 この舗装された道と言うのも、そうそう多くはない。何しろ、山岳地帯での訓練を想定されて整えられた施設だ。舗装された道なんて、逆に訓練の邪魔になりかねない。

 しかしながら、ある程度の必要により、舗装された道は作られていた。最低限に。

 このフィールドは、麓から中腹は少し緩やかな斜面に、木々が鬱蒼と生い茂り、中腹から頂上にかけては、傾斜もきつくなり、木々も少なく草原と岩石が多くみられる地形をしている。


「一度、様子を見てみましょう」


 少女は道の途中で機体を止め、長大なライフルを空に向ける。

 そして角度を調節して、ペイント弾を撃つ。

 放たれた弾は、木々の間を抜けて、大きな放物線を描き、空の彼方に消えていく。


「この戦法は、ある意味ペイント弾専用ですね」


 そのつぶやいてから、少女は角度と方角を変えて数発撃ち、弾倉を変えてリロードする。

 その後、コックピット内に追加された、ドローンのカメラモニターを見て着弾位置を確認する。


「なるほど、空気抵抗の誤差が、思ったよりも大きいですね。風の影響でしょうか。修正が必要ですね」


 そう言って少女は、「鷹襲(ようしゅう)」と「梟戟(きょうげき)」の操作を自動から手動に切り替える。

 追加された二本の操縦桿を握り、二つのモニターを注視しながら、少女は操作する。


 そしてしばらくすると、「鷹襲(ようしゅう)」が標的を見つける。

 敵は木々の間をゆっくりと、確実に進んでいた。

 周囲に警戒を払っていることから、少女の前の試合を見て、その曲芸のような長距離狙撃を警戒しているようだった。


「上空の風力、風向の修正はできています。着弾位置、見えました」


 少女は長大なライフルを構え方向を定める。

 モニターをじっと見つめる少女は、そのタイミングを計る。

 敵の機体は、周囲の警戒を終えたようで、動き出そうとする。


「ここ!」


 少女はそのタイミングを逃すことなく、銃弾を放つ。


 再び放たれた銃弾は、大きな放物線を描き、飛んでいく。


 少女はすぐにモニターを見て、着弾を確認する。

 この間にも少女は、抜け目なく、「梟戟(きょうげき)」もその地点に向かわせる。


 大きな放物線を描いていたペイント弾は、数秒の時間をかけて空中を飛来し、敵の隠れていた木に直撃する。

 敵はすぐに機体の姿勢を低くして、装備してしている40(フォーティー)アサルトを構えながら、機敏に機体を動かし、周囲の何かを探す。

 そして、次の瞬間。敵の機体と、こちらの視線がぶつかる。


「見つかりましたか!」


 敵は、自分の位置を知らせている「鷹襲(ようしゅう)」を落とすべく、ペイント弾を放つ。

 少女は「鷹襲(ようしゅう)」を手動で操作して銃弾を避ける。

 その間にも「梟戟(きょうげき)」が、敵の付近に到着し、敵の背後を取る。

 少女は容赦なく、背後から敵を「梟戟(きょうげき)」に装備された銃で撃つ。


 敵も照準が合わされた瞬間、咄嗟に避けて直撃は避ける。

 だが、放った銃弾は敵の片腕に当たる。

 少女は敵の態勢の崩れたところを逃さず、「鷹襲(ようしゅう)」で追撃しつつ、こちらの本体の機体の照準を調整する。


 二機のドローンによる攻撃に敵は防戦一方ではあったが、何とか対処していた。

 そして敵は必死に対処している中で、気づくことができなかった。

 自分の背後に木があって、自分の退路を断たれていること。そして、自分がそこに誘導されていることに。


 次の瞬間、敵は敵の攻撃を避け、さらに後退しようとするが、木がそれを邪魔する。

 まずいと思った瞬間、視界の先に小さな、蛍光色の点が飛んでくるのが見える。

 そしてその点は、すぐに大きくなって敵の機体に着弾する。

 それはちょうど、コックピットのある胸部に当たった。


 その時、試合終了のベルが鳴る。


     *********


「なかなか、見事だね~」


 楠先生は、俺の横で素直に感嘆の声を上げる。


「そうだな。片桐は柔軟な発想ができるからな」


 俺のもう一方の隣に立つ北島も頷く。


「ただ、あれを手動で操作すると、機体の操作ができなくなるのが、ネックになるんじゃないですか?」


「そうだね~。まぁ、そのための自動操縦なんだけど、そこら辺のプログラムも、もう少し改良の余地は大きそうだねぇ」


 あの二機のドローンには、一応自動操縦システムが搭載されているが、それも申し訳程度だ。激しい戦闘をするには、どうしても、人の手で操縦する必要性が出てくる。


「AIでも乗っけますか?」


「いやぁ~、それでどうにかなるかなぁ?」


「じゃあ、どうするんですか」


 難色を示す楠先生に、俺は思考を放棄して、質問する。

 楠先生は、うーんとうなって悩んだ後、ぽつりとつぶやく。


「はぁ、人にはなんで腕が四本無いんだろう?」


「あったところで十全に使いこなすのは、非常に難しいと思いますが」


 楠先生のつぶやきに、北島が真面目に答える。

 俺もその答えに短く、そうだなと同意し俺たちの会話が途切れる。


「まぁ、本当のところ言えば、方法がないわけではないんだけどね」


 沈黙の中、楠先生がそう何気なく言ったのを聞いて、俺は気になって楠先生の方を向くが、その時の楠先生は、いつもの様子が嘘のように、正しく感情が抜け落ちたように表情がなかった。

 そして楠先生は、無表情のまま言葉を繋ぐ。


「ま、それは俺の専門じゃないから無理だけど」


 俺は、その楠先生の様子に疑問を覚えつつも、その方法に興味が行き、その方法を聞く。


「それって、どんな方法なんですか?」


「ああ、神経接続だよ」


 楠先生は目を閉じ静かに、俺の質問に答えてくれた。


「人体に特殊な生体デバイスを埋め込み、機体のシステムと接続して、機体とその装備を操縦桿に頼らず、体を動かすように操作できるようになる」


 楠先生はゆっくりと目を開く。


「ま、確かにここまで聞いたら、すごい有用な技術に聞こえるけど、実際のところは適合できる確率と手術の成功率の低さがひどくて、実用には耐えなかったけどね。あ、あと倫理的な部分もちょっとはあるか」


 そこまで聞いて俺は、押し黙るしかできなかった。


「少なくとも、適合者がいたとしても、移植手術ができる人間は、今、この国にいないから関係ないけどね」


 楠先生は最後に、そう言っておどけて見せて、締めくくった。

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