第四十一話
短めの投稿です。
ハンガーにて、俺たちは先輩たちの帰還を待っていた。
「おい、帰って来たぞ!」
誰かがそう言ったのを皮切りに、多くの生徒たちの歓声がハンガーを埋め尽くす。
まだ、一試合しか勝っていないのに、その様子はまさに凱旋と言えた。
『出迎えご苦労!』
戦闘を歩く郡山先輩の機体から、外部スピーカーを通して集まってきた生徒たちを労う。
威風堂々と機体を歩かせるその様を見ながら、俺はかなり引いていた。ドン引きである。
「なんだろうな。もう交流戦終わったの?って感じだな」
「そう、ですね」
俺の哀愁漂うつぶやきは、隣に立つ片桐には届いたようで、苦笑を浮かべながら同意する。
いや、俺たちとは知名度も人気も違うってわかってはいても、こうも違いを見せつけられると、何というか心がざわつく。
「安心しろ、これがおそらくあと七回ある」
何を安心していいのかわからないが、話に参加してきた北島は俺にいらない希望を運んでくる。
「それはそうと、この後、お二人は夕食どうされるのですか?」
片桐は空気を変えようと慌てて話を変える。
時刻は午後六時。もう既に空は暗くなり、空腹感も少しずつ俺を襲っていた。
「俺は普通に船に戻って、学食を食おうかと思ってるけど?」
「私もだな」
俺は反射的に答え、北島もそれに便乗して答える。
ちなみにだが、俺たちが乗ってきた輸送船は内部に学食があり、日替わりでいろいろなメニューを提供してくれる。とてもリーズナブルな価格でな。
「それでしたら、私、実はここに来る途中でおいしそうなお店を見つけたんです。もし、よろしければ、ご一緒にどうですか?」
片桐はワクワクとした様子でそう尋ねる。このような雰囲気の片桐を見ることが、あまりないので、俺と北島は一瞬キョトンとする。
帰ってきた反応が思っていたものと違ったせいか、片桐は不安そうな表情で俺たちのことを見ながら、さらに尋ねる。
「ダメ、でしょうか」
そこで俺たちは再起動を完了し、片桐の問いに答える。
「い、いや。俺は大丈夫だぜ」
「わ、私も問題ない」
片桐の意外な一面を見た俺は、少し戸惑いながらも、心の中ではほっこりしていた。
「へぇー、楽しそうだね。僕も参加させてくれないかな~?」
俺のセンサーは、その声を聴いた瞬間に、その声の持ち主を断定して、瞬時に返答する。
「だが、断る!」
「いや、即答って。というか答えるにしても、振り返って誰かを確認してからにしようよ。振り返りすらしないとか、ちょっと僕悲しいよ?」
俺は振り返らずに断ったが、俺にとっては振り返る必要すらなかったのだ。そう、俺の背後に立つ、俺の天敵イケメン野郎の東雲には。
「というか、本当にダメなの?僕、泣いちゃうよ」
少し悲し気な表情を浮かべる東雲を見た片桐は、おろおろして、俺と東雲を見返している。
北島は、何を考えているかわからない無表情を貫いていた。
「はぁ、この話は俺から持ち出した話じゃねぇし。もし本当に来たいのなら、片桐に聞いてみたらどうだ?」
俺は仕方がないという雰囲気を、全面に出しながら、片桐に話を振る。
「え?あ、わ、私は別に、大丈夫ですよ?」
片桐は少し慌てながらも答える。
その返答に東雲はにっこりと満足そうに微笑み、口を開く。
「そう?ごめんね、急に言ったりして。でも、受け入れてくれて、とっても嬉しいよ。ありがとうね」
そう言って東雲はイケメンスマイルを発揮する。
俺はその笑顔にイラッとして、何の迷いもなく目つぶしを敢行する。
その攻撃は残念ながらこいつの、文字通り目の前で阻止される。
「ちょっ、斎藤君、これは何?なんなの?もう少しで僕の目が大変なことになりそうな勢いで飛んできたんだけど?!」
東雲は、俺の腕をがっしりと掴みながら、ちょっと必死に俺に問う。
そして俺はその問いに、満面の笑顔とさわやかさを交えて答える。
「俺、お前が嫌いなんだっ」
この言葉の語尾にはきっと、☆とか、♪とか付いている。
何はともあれ、俺たちは片桐先導の下、おいしいご飯を食べに行くのだった。




