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人型陸戦兵器「|武士《もののふ》」   作者: 荒井尾 麓
第二部 防衛高等学校編入編
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第十六話

 開幕と同時に装備していた青龍刀のような剣をぶん投げる。

 縦回転をして飛んでいく剣に敵は対応して、剣を避けるように左半身を引くように半身になって、わずかに私から見て左に逃げようとする。

 これは予想通り、私は迷いなく『もう一本装備していた』青龍刀を、次は横回転を加えて投げる。

 きっと敵はそれにまた対応してくる。

 だから、私はそんな敵の優秀さを念頭に置いて、ブースターを点火し、また別に装備していた二本の対装甲ナイフを逆手に両手に持ち、敵に突っ込んでいく。

 敵は二本目の飛来した青龍刀を、抜刀術の要領で装備していた対装甲刀で切り上げる。だが、青龍刀はその質量のせいで大きくは軌道を変えられず、またブーメランのように横回転をして飛ぶ剣を左右に弾くのは難しいので、弾く方向は上となった。

 そして、これも十分に私の計算通り。

 私は剣を弾いた直後の敵の懐に入り込み、右手のナイフはまっすぐにコックピットを狙い、左手のナイフは腹部のエンジンや燃料の終結する部分を横凪に狙う。

 だが、敵もこの程度は予想していたのだろう。敵ももう一本腰に差していた小刀を左手で逆手に抜き、私の右手のナイフの突きの軌道を逸らしつつ、機体の右半身のブースター点火して右半身を引き、迫りくる私の左手の横凪の線上から機体を逃し、その上さっき私の突きの軌道を逸らせた小刀で横凪の動きを止める。

 さらには右半身を引いたのと同時に、刀を引いて構えて、こちらに突きを打つ態勢を整えている。

 私はさすがに相手の技量の高さに下を巻きつつ、次の手を打つ。

 私は迷いなくブースターの勢いを前進から跳躍に向ける。

 それによって私は敵の頭上を前宙のような形で、高く飛び越えながら右手のナイフを敵の頭上に投げる。

 敵はそれにも対応して、さっき打突しようとしていた刀の軌道を変えてナイフを弾く。

 そして私はその一瞬の間に『さっき敵の弾いた青龍刀』を掴み、ブースターで姿勢を制御しながらも勢いをつけて敵に叩き込む。

 敵もとっさに反応して刀二本を構えて防御しようとするが、高い位置からブースターの運動エネルギーと高所から振り下ろされる位置エネルギー、さらには私の乗る機体と大型の剣である青龍刀の重みを乗せた一撃は強烈の一言に尽きた。

 私は期待を抱く。

 もしかしたら、いけるかもしれないと。


     *********


「うーん、一応禁止にはしてみたが、あまり効果はなかったか」


 いつの間にか、俺たちの横に並んで観戦していた唐橋先生は、そうつぶやく。


「先生はなんであんなルールを?僕から見れば、完全な北島さん贔屓に見えますが?」


 俺を挟んで、東雲はそう唐橋先生に問う。 

 俺も東雲の質問に疑問を持って、唐橋先生の顔を見る。

 先生も実は隠れ北島信者だったのか。


「そうか?まあ、そう見えるか。だが、考えてみろ。片桐に全武器解放したら、開始五秒で北島が負ける可能性もあり得るんだぞ」


 俺は先生の言葉にギョッとする。開始五秒って。何する気だったんだよ、片桐。


「ああ、それは確かに、状況の組み合わせによっては、あり得ない話ではないですね」


 俺は二人の会話にあまりついてけずに、挟まれるままになるが、そのままでいる俺ではない。


「ちょっと待った、二人で勝手に話広げてるけど、それ、どういうことだよ。なに、片桐、核弾頭でも使う気?」


 俺はとりあえず隣に立つ東雲に向けて問う。

 東雲はにっこり笑って俺に言う。


「さっきはあんなに僕を拒否してたのに、今度頼ってくるんだ?ツンデレ?」


 うぜぇ。

 俺は諦めて唐橋先生に聞こうとする。

 だが、東雲は少し慌てたように、俺の肩を掴む。


「ちょ、冗談じゃないか。そんなに怒らないでよ?」


 俺はいらいらしながら、東雲の掴んだ手を振り払い、東雲を睨みながら言う。


「黙れよ、クソイケメンが。地獄の底に埋められたくなかったら、きりきり知ってること全部吐け」


 東雲は仕方がないなぁ、と言いたげに肩をすくめながら話し始める。

 本当にこいつは、こんな仕草でさえ様になるから軽く殺気が沸くな。


「彼女の使用する愛用機は二つあってね。一つはあの「兵・四強・弐型」、もう一つは、「兵・四狙(つわもの・よんそ)」なんだ」


 東雲は指を一本ずつ、人差し指、中指と立てながら言う。

 その指をへし折ってやりたい。


「この両機の運用には似ている特徴があって、それは両方とも、奇襲、隠密、暗殺に優れている。そしてこの両機は、ほかの機体の中で、特定条件下において最も攻撃力が高いという点」


 東雲はそう言ってから一拍、間を置く。

 どうやったらこの顔面を崩壊してやれるだろう。


「前者の機体は奇襲戦においてはその機動性から「兵シリーズ」では最も敵への与えるダメージ効率は高い。後者の機体は隠れての狙撃戦は、同じ系統機の中では最も最新式なんだよ」


 そこで東雲はニヤリと笑う。

 この笑顔、壊したい。


「分かるかい?つまり、取る戦法、状況のマッチングから、パターンによっては、片桐さんの瞬殺で終わる可能性もあり得るんだよ。お得意の暗殺戦法でね」


 俺は一つうなずいてから答える。


「ああ、よく分かったよ。取り合えず、お前を地面に固定してから、その上をロードローラーで三往復しよう」

「あれ!?険しい表情して真剣に聞いてるから、まじめに分析してるんだと思ってたのに、なんでそんな見解に至るの!?」


 俺の作戦は完璧だ。

 それはそうと、なおさら俺には、不可解だ。


「唐橋先生、じゃあなんで、片桐のその十八番の戦法をわざわざ封じたんです?これ明らかに贔屓じゃないですか」


 俺は東雲の説明を聞いて考えた結果を唐橋先生に聞く。


「いや、自分としても、ルールフリーな状況下で戦うのもいいかと思ったんだが、何分、片桐のやろうとしていることを考えると、普通にいつも通り戦って勝っても、得られるものは少ないと思ってな。ちょっとした、先生としての親切心だ」


 唐橋先生はそうモニターを見つめたままあまり表情を変えずに言い、そして、あとな、と付け加えて言う。


「自分としても、楽しい戦闘がみたいなと」


 そして付け加えられた理由は、先生の私情によるものでした。


 ...片桐......がんばれ。


 俺は理不尽な私情に巻き込まれる片桐に、心の中でエールを送る。


     *********


 私の放った一撃は、敵の武装によって受け止められるが、その衝撃は計り知れないはずだ。

 その証拠に、敵の持つ二振りの刀は半ばまで大きなひびが入り、もう使い物にならない状態になっていた。

 私は地面への着地時間をブースターの逆噴射で早めて、続けてまだ握っている左手のナイフでコックピット狙いの斬撃を放つ。

 これで敵は得物を失い、形勢は圧倒的に私の有利に運んだ。

 そう、私は思っていた。

 私のナイフの一撃は、敵がさらに間合いを詰めて、こちらの左腕を『無手』の右手で掴んだことによって止められる。

 そしてさらには、流れるような動きで敵の左手から正拳突きが放たれる。

 私は咄嗟に、右手に持っていた青龍刀を手放し、コックピットを守るために右腕を構える。

 その一撃は思っていたよりも強力で、食らった直後に強い衝撃がシミュレーターを揺さぶる。

 私は衝撃の中でも必死に次の手を取るために、敵に掴まれた左腕の装甲をパージして、捕縛状態から脱出する。

 私はすぐに態勢を整えるために、後方に逃げる。

 だが敵はそんな私をすぐに追ってくる。

 私は左手のナイフで牽制しようとするが、次の瞬間には、モニターの景色が目まぐるしく変わり、強い衝撃がコックピットを支配する。

 私は正面にモニターが空を映していることから、自分は合気道のような柔術で投げられたのだと、理解する。

 すぐに立ち上がろうとするが、その時にはもう敵の拳が、私の機体のコックピットを貫いていた。


 そして状況終了のコールが鳴る。


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