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7.お寝坊さんな小春

「ぐえっ……!?」


 午前五時。俺は背中に突き抜けるような衝撃を覚えて目を覚ます。痛んだところを確認すると、小春のスラリとした美脚が俺の背中に突き刺さっていた。


 もしかして小春って、寝相悪い?


 うーん……五時間は寝たから起きてもいいけど、どうしよう……。


 俺はスマホを見てメッセージアプリ「ライム」の着信を確認する。すると、午前二時過ぎに姉さんからメッセージが届いていた。


『陸のパソコンに、まとめてほしい書類のデータ送っといたから明日の夜までによろしく! それと前に言ってたセキュリティシステムのプログラミングも人手が足りないから一部陸に回すからそれもよろしく!』


 やっぱりかぁ……最近は姉さんから仕事押し付けられてなかったからそろそろ来ると思ってたんだよね……。


 俺の姉さんは大学を中退して起業した社長で、こうして時々俺に仕事を振ってくるのだ。それがこの部屋の家賃と生活費を払ってもらう対価ということになっているが、仕事量と支払金はどう考えても釣り合わない。


「はぁ……まあ折角早く起きたんだ。やるかー……」


 腑抜けた声で気合を入れ、俺はベッドから出る。ついでに小春が蹴とばした掛け布団を小春に掛け直す。


 小春は口の端からよだれを垂らし、幸せそうに頬を緩ませている。彼女の寝顔を見ていると、自然と笑みがこぼれた。


「フフッ……頑張ろ」


 小春の寝顔に元気をもらい、俺はパソコンを開いた。


***


「つっ……かれたぁー……」


 七時前になると俺はパソコンを閉じ、肩をほぐす。


 そろそろご飯を作らないと学校に間に合わなくなるけれど、小春は依然布団の中。彼女は、眺めているだけで疲れが取れるようなかわいい寝顔で眠っていた。


 これは起こせないなー。


「……先に、朝ご飯の準備しようかな」


 俺はご飯や冷凍唐揚げをレンジで温めつつ、昨日の残りのみそ汁を鍋で温める。さらにだし巻き玉子も作り、最後に余っていた肉じゃがも並べて朝食の準備は終わりだ。


 そこから弁当用にいくらか取り分けて、俺と小春の弁当箱に並べた。それでもまだ、小春は起きてこない。


 そろそろ起こさないと遅刻するよね……。


 窓から差し込む朝日を浴びて幸せそうな寝顔を浮かべる小春。気は進まないが、俺は彼女を起こしにかかる。


「小春。そろそろ起きないと遅刻するよ」


 ……返事はない。俺は掛け布団の上から小春の体をゆすった。


「小春起きろー」


 抑揚のない声で呼びかけると、小春はムニャムニャいいながら掛け布団を頭まで被った。


「まだ目覚まし鳴ってない……」


 俺はジトっとした目で、もっこりとした布団を見下ろす。そしてふぅ、と息を吐き、両手で掛け布団の端を握った。


「昨日は目覚ましセットしてない……でしょ!」


 言うと同時に、俺は勢いよく掛け布団を剥ぎ取った。


「ちょっ……布団返してぇー!」


 目を閉じたまま手をバタバタさせて布団を探す小春に、俺は残酷な事実を告げる。


「今、七時半だよ?」


「へっ!?」


 小春は学年一位の学力を持ち、たぶん地頭もいい。だから、この時間が何を意味するのか、寝ぼけた頭でも一瞬で理解できたはずだ。


 小春は飛び起きると、ひったくる勢いで自分のスマホを掴み取り時間を確認する。


「ややややばいっ!」


 転げるようにしてベッドから降りて、タンスの前に行く小春。そして小春はそのままTシャツの裾に手をかけ、脱──。


「あのー小春さん? 俺いるんだけど……」


「あっ……」


 小春は俺と目が合った瞬間、死んだ魚のように目から光を失い、間の抜けた声をあげた。そして小春は、下着の下の部分が少し見える位置まで上げていたTシャツの裾をゆっくりとおろす。


「み、見た?」


「うん。ちょっとだけ見えた」


 そう答えると、だんだんと小春の顔が赤く染まっていく。


 学校での完璧さはどこへやら。でもやっぱり、抜けているところがあった方がかわいいなぁ……。


 こういう、朝が弱いとか、抜けているところがあるとかっていう弱点をクラスメイトたちにも少しは見せていたら、あんな歪な関係にならなかったんじゃないかな?


 ……でもなんでだろう? 小春が外でこうやって抜けているところを見せるの、なんか嫌だな。


 そんなことを考えていると、いつの間に小春は目の前に来ていて、涙目で頬を膨らませていた。


「陸も少しは照れてよぉー!」


 そう言われても、妹の下着見たくらいで照れるわけないよねー……。


「ごめんごめん。……ほら、早くご飯食べないと学校遅れるよ?」


 俺は小春の頭を、割れ物を扱うように優しく撫でてから食卓に座る。すると小春もくすぐったそうに目元を緩めて、食卓に座った。


 そうして俺たちは同棲二日目の朝をドタバタと過ごし、一緒に学校に向かうのだった。

この話を読んでいただきありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
姉がいるせいで耐性が高すぎる、しかも妹扱い、そして定番の姉の下僕
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