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20.プレゼントのお返し

「えっと、小春が好きなゆるモンのキャラはイワムッキーだったよね」


 土曜日。小春がバイトで家を空けている間に、俺は人形作りに必要なフェルトと綿を買ってきた。


 裁縫は学校の家庭科でしかやったことないけど、頑張ろう。スイニャーの人形を作ってくれた小春に、俺も人形を作ってプレゼントしたいから。


「まずは……型紙に絵を描くのか」


 俺はスマホでフェルト人形の作り方を調べ、実践していく。


「あれ? 全然違う」


 スマホに映したマッチョなパンダ──イワムッキーのイラストを見よう見まねで描いてみたけれど、思うようにいかない。


 やっぱり絵を描くのって難しいな……でも、小春の喜ぶ顔が見たい。


 俺が作った人形を抱きしめて「ありがとう」と微笑む小春を妄想して、俺はあきらめずに何度も絵を描き直した。


「ふぅ……これならいいかな」


 もう何度目かもわからないほど描き直して、ようやく納得のいく絵を描くことができた。


 次に、描いた絵に合わせて型紙を切り取りフェルトに型を映し描きする。手足は黒、頭、胴体は灰色と色が違うから、それぞれ別々のフェルトに映し描きした。ここは難なく終えることができた。


 それから次はフェルトの切り取りだ。本体と同時に、目や耳などの細かいパーツも切り出しておく。と言っても、イワムッキーはマッチョなので曲線が多く、切った線ががたついたり誤って別のところまで切ってしまったりと難しかった。


「それにしても、やっぱり小春はすごいなぁ……。俺じゃ小春みたいになんでもうまくやることなんてできないよ」


 しかも最初から全部できたわけじゃなくて、小春はなんでもできるようになるために努力したんだよね。本当にすごい。尊敬する。


「……あとは、切り取ったパーツを縫い合わせるのか」


 針で指をささないように注意しながら、一つ一つのパーツを丁寧に縫い繋げていく──結局一回指差したけど。


「うーん……なんとか形にはなってそうだね」


 スマホに映しだしたイワムッキーとはどこか違っている気がするが、綿を入れたら直るかもしれない。俺は人形に綿を入れて、最後に綿の詰め口を縫った。


「うーん……やっぱりちょっと線がガタガタしてる。それになんだか、左右のバランスも悪いよね……」


 しかし、かれこれ四時間近くも人形作りに費やしている。小春が返ってくるまではまだ二時間以上あるけれど、作り直している時間はない。


「プレゼントは気持ち、だよね? ……うん。これが今の俺にできる全力なんだからたぶん小春も喜んでくれる!」


 ……小春、本当に喜んでくれるかな……? 気を遣わせたら嫌だなぁ……。


 自分にポジティブなことを言い聞かせてみたが、どうしても不安はぬぐい切れなかった。


「……とりあえず、アレを買いにいかないと時間ないよね」


 俺は、小春へのサプライズにあるものを買いに行くため、不安を抱えたまま家を出た。


***


 緊張するなぁ……。


 午後五時半。もうすぐ小春が帰ってくる。俺が作った人形を小春が喜んでくれるか。そのことに、俺は受験の合格発表の時以上に緊張していた。


「ただいまー!」


 玄関の扉が開くと同時に、小春の明るい声が響いた。俺はすぐに人形を後ろ手に持って、廊下と部屋の間に立った。


「おかえり、小春。バイトお疲れ様」


「うん。ありがとう。……ところで陸、さっきから何持ってるの?」


 コテンと小首を傾げる小春に、俺は恐る恐る人形を差し出した。


「これ、小春にと思って」


「え? これ、わたしにくれるの?」


「うん。スイニャーの人形のお返しと、小春が期末テストで学年一位だったお祝い。……あ、でも、俺が作ったから不格好だし、いらなかったら捨ててもいいからね」


「ううん。嬉しい……すっごく嬉しいよっ! 陸がわざわざわたしのために作ってくれたなんて感激だよっ!」


 飛び跳ねる勢いで喜び、すりのような素早い動きで俺の手から人形を奪う小春。彼女は人形を掲げて、宝石を見るかのようにまじまじと見つめた。


 よかったぁ……。小春、喜んでくれた。


「ああそれと、お祝いのケーキも買ってあるから、夜ご飯の後にでも食べない?」


「食べるっ! それと陸、陸が作ってくれたイワムッキーとわたしが作ったスイニャー並べていいっ?」


「うん。いいよ」


 そうして小春の手によってローテーブルに並べられた、小春作のスイニャーと俺作のイワムッキー。改めて並べられるとクオリティーの差がすごい……。


「だけど陸にも苦手なことあったんだー。なんだか安心したー」


 不意に俺の手をとり、絆創膏を貼った指先を見てはにかむ小春。


「うーん……小春さん。それ嫌味ですか?」


「違うよー。いっつもわたしがからかわれてばっかりだから、陸にもからかえる弱点があってよかったなぁーって思っただけ」


「それ、俺にとっては全然よくないんだが」


 口元を隠すように手を当てニヤニヤと微笑む小春に、俺はジト目を向けるのだった。


***


 翌日、日曜日の昼下がり。小春とのんびりゲームをしていると、インターホンが鳴った。


 誰だろう……?


 コントローラーを置いて、インターホンのモニターを見るとそこには、長い銀髪を揺らして佇む幼馴染の姿があった。


「……栞?」

この話を読んでいただきありがとうございます!


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