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2-09 密猟容疑者

 トーレは気絶している四人の武器を身体から外し始める。


「トーレ! 動いちゃ駄目!」


 ララが心配するが、トーレはララのおでこを指でつんと押す。


「俺がやる、ジェレミーとララには武器を触らせない。黙っていろ、そしてこいつらに近寄るな」


 痛みで苦い顔なのだが、ララは怒られているような感じがした。


「⋯⋯わかったわ。私、馬を繋いでる⋯⋯」

 しょんぼりしながら素直に馬のほうへ歩いていく。


 トーレは丸腰となった密猟者たちを、片手で一人ずつ木のほうにずるずると移動させると、ジェレミーが持っていた細い紐を奪う。

 痛みに耐えながら眉間に皺を寄せ、密猟者が逃げないように木に縛り付ける姿は、きっと年頃の娘が見ていたらずきゅーんと心を奪われてしまいそうに男の色気がダダ漏れだった。しかし今ここには見学者が誰もいない。非常にもったいないイケメンの労働時間だった。


 四人目を(くく)り付けたトーレは、馬を繋いでいたララのほうにゆっくりとやって来た。


「アイスタニアも物騒だな、こんなのが移動の度に現れたらたまったもんじゃない。御者席に硬くて殴りやすいものを仕込んでおいたほうがいいのかもしれない」


「あのまま通り過ぎていれば何もなかったはずだよ。通報して、あとは保全部に任せるの。時間稼ぎをするのはいいけれど、ララが車を止めて待ち構えたからああなったんだ。それに一人目を捕まえるのにもっと素早くやらないと。あれ(・・)に頼りすぎだよ。ララは護衛も同時にできるようにならないとね」


 後方腕組み王子様のジェレミーは、言い切ってすっきりした表情で、麻紐の先をララの顔にちょろちょろ触れるように動かした。


 くすぐったいララは眉をしかめ喉を「ん〜」と鳴らすが、制裁を受け入れるように顔を背けない。


 良いと思ってしたことがトーレにけがをさせる結果となったので、ララはすっかり元気がなくなりしおしおしている。


「獣の血の匂いがしたのよ。それに、『二十匹獲れたからもういいだろう』って聞こえて」


 密猟者たちから十分に離れていたが、聞こえないように小声で話すララ。


「姿も見えない距離なのに、分かったのか?」


「積んでいた袋にも少し血が付いてるでしょう。アイスタニアの言葉で話しかけてきた時も、息の吐きかたや舌使いにニルラ語の特徴があったわ。いろいろ分かっちゃったから、じっとしていられなったの」


 そして密猟者と対峙した時に、シークとの連携プレーを試す機会が来たと思ってしまったことはトーレには言えない。でも後でジェレミーにはちゃんと伝えようとララは思った。


 トーレは馬に下げられた膨らんだ袋をじっとみる。血が付いている部分は、すぐには見つけられなかった。

 馬に近寄り、中身が詰まっている袋を外から触れてみる。口を開けて中を覗くと、トーレは眉をひそめ、袋を閉じながら他の馬の袋にも目をやった。


「毛皮が目的なら処理に何日もかかるな」


「武器も出国で引っかかるよね。そもそもあの武器はどこからやってきたって話さ」


 弓矢が一(はり)、そして棍棒、練習用の木製剣が二つ。パレスの武器見学会でも見たが、同じ物だろうか。


「こんなのちょっと隠せば検査で見つからないだろう」


「それがね、うちの国はわかっちゃうの。王族の秘密道具があるからね。町に着いたら分かるよ」


 かがむのがつらいため、トーレは苦い顔で道端に落ちていた密猟容疑者の武器を足でずらす。ジェレミーとララには武器を触らせない。


「まあ持ち物に厳しいのは出入国と大使館のあるパレス、そして各地の研究所くらいかな」


「そうだわ、連絡を入れなくちゃ」


 ララは箱車の横の窓から車内へ顔を突っ込み、指示を出す。


「箱車、保全部に続報お願いね。さっきの四騎は宰相案件、密猟者を捕まえたわ」


「わかったぞ、初めに〝箱車〟と名前を呼んで命令すればいいのか」


 トーレは操作版の使い方を理解できたようだ。そして足ではさっき自分の背中を痛めつけた棍棒を憎たらしくぐりぐり踏みつけている。


「しかし宰相案件? 大事(おおごと)と捉えているんだな。ただの密猟じゃないのか?」


 トーレに頷きながらジェレミーはしょぼんとしたララの腰に手をやり、自分の頭を寄せる。


「ララだから分かる事もあるんだよ。ララ、箱車の中でトーレの背中見てあげてよ。保全部が来るまで休もう。アデルーンの町からだったら、それほど待たずに保全部が来てくれるんじゃないかな」


 しおしおララはぎっと目に力をみなぎらせると、ぴゅんっと先に箱車へ入り、トーレが横になれるようにさささっと座席を平らに倒し始めた。


 ジェレミーは、木陰の根元で縛られている男たちに目を向ける。本当はおでこをくっつけて読み取れるかやってみたかったが、手負いのトーレが心配するだろうから止めておいた。あとはサルヴァドールたちに任せよう。


 密猟者から視線を離す最後に、先日の武器使用見学会でニルラ共和国のメンバーにいた男をちらっと横目で見た。

こんなに読んでくださり本当にありがとうございます。

ブックマークや評価をいただけるとたいへん励みになります。

本日は計5回の臨時投稿でした<5/5>

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