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第4話〜Let's Pray〜

こんにちは!

新田洋次郎です!今回も楽しんでいただければ幸いです

角の先、何やら複数人の男が1人の女に迫っているようだ


(あれは…佐藤…嫌な奴に会ったな…)


「佐藤傑」…勇気の親友であり、金髪にバチバチに決めたピアス、服を着崩している様子は彼のチャラさの証明だろう

そして、史郎の最も会いたくない相手の1人


(相手には悪いが…無視するか…)


あいつはかなり精神的に会いたくなく、そのまま通り過ぎようとする

しかし、その時脳裏にある文言が浮かび上がる


▶︎[無視し、通り過ぎる]


[声をかけ、彼女を救う]


2つの選択肢

片方は史郎が選ぼうとした行動

そして、もう片方はその対極にある選択肢


(いや…なんだよこれ…)


史郎は困惑する

こんなこと今まで1回も無かった

こんなことが起きるということは…


(これが…俺の源能の能力?)


今までうんともすんとも言わなかった源能

それが今になって効果を発揮したとでも言うのか


(だとしても…これはなんだ?)


2つの選択肢

それはまるで自身が行う行動を指し示しているようだ


(ゲームか?)


この方式で思い当たるのは元いた世界で好んでやっていた所謂ギャルゲーと言われるもの

選択肢次第によって好感度やルートが変わり、ENDも変わるというもの

今の光景はそれに近しいものだった


(いや…俺にギャルゲーの主人公が務まるなんて思い上がりはよそう…前もそれで痛い目を見たんだ…)


史郎はやはり無視する選択肢を選ぼうとする


[無視し、通り過ぎる]


[本当にこの選択肢を選びますか?]


▶︎[YES]


[NO]


脳内でまた新しい文が浮かび上がる


(また…YESだ…)


[本当に?]


▶[YES]


[NO]


再度文が浮かび上がる


(………しつこいな…)


史郎は1度立ち止まる

そして、横を見る

角は抜け、丁度4人が直線上に入る所

史郎は女の顔を見る

目を閉じ、佐藤を受け入れる体制に入っている

しかし、その顔は苦しみと諦めが入り交じった表情だった


(…………)


▶︎[YES]


[NO]


























[YES]


▶︎[NO]


「何してんだよ」


「あ?」


声をかけた

佐藤達が振り返る

女も目を開けてこちらを見ている


「嫌がってんだろ。やめろ」


何やらぺちゃくちゃ言ってる男たちに言う

その言葉を聞いて、佐藤はバカにするように笑う


「あれ?誰かと思ったら戦うのが怖くて逃げてサボってる畑田じゃ〜ん!」


「サボってる?」


「先生が言ってたぜ!戦いから辞退したいって泣きつかれたってさ!本当に卑怯な奴だよな〜」


佐藤は史郎の知らない話をぺちゃくちゃと喋る

逃げた?泣きついた?史郎は何もしていない


「誤解だな。まず先生って誰だよ」


「あ〜?嘘つくの?だから俺に彼女寝盗られんだよ!」


言いたくてうずうずしていたのか言った時の顔は満面の笑みだった

そう。史郎は佐藤に恋人を寝盗られている

それが佐藤に会いたくない最大の理由

いつも横にはその女がいた

だから会いたくなかった

しかし、それはこいつが大声で言いふらすのと女が面倒くさいからだ

従って


「寝取ったわりには大切にしてないんだな。今も違う女に手を出そうしてる。ほんとに救いようのないクズだな」


「なっ…」


特に寝盗られたことはもう乗り越えているから痛くないのだ

それよりも坊を宥めさせることの方が大変だった


「てめぇ!悔しくねぇのか!?取られたんだぞ!?」


「簡単に鞍替えする女なんて結局いつかは破滅するしな。引き取ってもらえて逆にありがたい」


そう…結局寝取りなんて人の女に手を出すクズとそのクズに靡いて鞍替えする尻軽女でないと成り立たないのだ

だからこそ、そこまで苦しくない


「それとこれとは関係ないだろ。早くその子離してあげろよ」


「っ……てめぇ…」


佐藤が史郎に勝っていることなんて人の女を寝取った事だけであり、それが効いていないと分かると急に顔を険しくし始めた


「佐藤さん!こいつやっちまいましょうよ!逃げた腰抜けなんて相手になりませんよ!」


「そうだそうだ!」


そうしていると他の2人の男がそう言い始める

どうやら本気で史郎がビビって逃げたと思い込んでいるようだ


「そうだよな…よしやっちまうか」


佐藤もその言葉を聞いて再びニヤリと笑う

そして何かをつぶやくと手になにか赤い光が宿る


「俺の源能は「神殿魔導師エンシェントソーサラー」!降参するな今のうちだぞ!」


どうやら攻撃系なのか自信たっぷりのようだ


(戦うか?いや…あっちは1ヶ月プロの元でがっちり鍛えてる…それに比べてこっちは独学…分が悪い)


今の目的はあの女を逃がすこと

佐藤と戦うメリットはない


(なら…)


史郎はオーラを廻で身体能力を底上げすると佐藤に突撃する


「ハハッ!死ねぇ!」


佐藤は手から炎を出した

どうやらかなり攻撃性の高い源能のようだ


史郎は慌てずに跳躍し、右側にある壁から更に跳躍する。そして、空中で再度跳躍

普通の身体能力なら不可能な2段ジャンプ

それを行って一気に女の前に降り立つ


(これなら…)


史郎は女を後ろに庇いながら佐藤たち3人と相対する

佐藤たちは苦い顔をしている


(そりゃそうだよな……俺だけなら攻撃できるだろうが…後ろにこの女がいれば…)


佐藤たちは史郎を目の敵にしているだけで本当に他人を巻き込む度胸など無いのだ


「あの…今なら逃げれますよ」


「……!は、はい」


女はそのまま後ろに下がって逃げていく

史郎はそれを確認するとそのまままた前に突っ込む


「!?」


佐藤は即座に反応してまた炎を放つ。隣の男もかめはめ波のようなポーズからビームを放っている

しかし、佐藤の取り巻きの1人は反応できていなかった

史郎はそいつの方向へ全力で駆け抜けると、2人とその取り巻きが直線上に重なり、史郎が取り巻きを盾にするような形になる


「ッ!?退け中山ァ!」


「は、はぃ!」


佐藤は咄嗟に中山という取り巻きに叫び、中山もすぐに反応して横に転がる

だが、もう遅かった

史郎は佐藤達を通り過ぎて遠くに走り去っていた


「ックソ!おい!追いかけろ!」


「「は、はい!」」


(ここまで離れればもう追いつかねぇよ!)


史郎はそのまま後ろを見ずに走る

いつしか、追手は居なくなっていた

______________________


「ほう?透晶級が?」


史郎は佐藤達から逃げた後、ちょうど訓練を終えて帰ろうとしていた部隊長の1人らしき男に話しかけ、自身も訓練に参加させてほしい旨を伝えていた

しかし、史郎の持つ源能が透晶級と言われる最下級に位置するものらしく、かなり嫌な顔をされている


「源能は関係ありません…もう「廻」も「丗」習得してます」


「ほう…」


部隊長の男はそれを聞いて何かを考え込む


「分かった。上層部に打診してみよう」


「ほ、本当ですか!?」


「ただ…」


史郎は部隊長の男の言葉に喜ぶ

しかし、部隊長の男はある条件を出した


「明日、1日で着く距離にある防衛拠点に我らの部隊が向かう。そこにお前もついてこい」


「明日ですか?急に俺が行って迷惑にならないんですか?」


「なんだ?やはり怖気づいたか?」


「……分かりました…明日…また来ます」


(ここで引き下がれば訓練への参加も白紙にされるだろう…なら…何が何でもやってやるさ…)


「よし。遅れるのなよ?朝の5時集合だ」


そのまま男は去っていく


「よう史郎!先生と何話してたんだ?」


部隊長の男が去って行って少しした後、後ろから新次郎が歩いて現れる

彼は前に見たより筋肉質になっているように見える


「久しぶりだな。俺も訓練に参加したくてな」


「やっぱそうだよな~みんなお前が逃げたなんて言っちまってよ~」


「その話…誰がし始めたんだ?」


「あの女の人が史郎はまだ参加しないって言ったら煌木の野郎が史郎は怯えた逃げた卑怯者っていい始めてさ…それに佐藤とかそのグループのやつが便乗して言いふらしてんだ」


新次郎は苦虫を嚙み潰したような顔をする

史郎は噂の出どころに納得が行った


「なんか煌木と俺は折り合い悪かったからな…」


「まぁ、久々にあったし飯行こうぜ!ここの食堂めっちゃ美味いんだぜ!」


新次郎は後ろを指さしながら笑う


「じゃ、お言葉に甘えて奢ってもらおうかな」


「はぁ!?無理に決まってんだろ!配られた端末に一食分しかねぇよ!自分の使えよ!」


「端末?何それ」


「あれ?持ってないのか?これだよ」


新次郎がポケットから取り出したのは少しでかめのスマホのような機械

史郎は一回も見たことが無い


「見たことも無いな…それは全員に配られてんのか?」


「ああ。これあれば経費で飯とか服とか買えるから便利だぜ」


「随分囚人に対する境遇とは思えないな」


「まぁ、俺らって名目上犯罪者だけどほぼ戦力として数えられてるらしいからな~訓練以外は自由時間だしもう街に出れるんだぜ」


「へぇ…」


(随分俺と対応が違うな…とんでもない源能至上主義らしい)


史郎は新次郎の言う暮らし方と自身の暮らし方の違いに少し戸惑う

そうしているうちに新次郎は端末の画面で時間を確認すると「やべぇ!飯が売り切れる!」と言いながら

走り始めた

史郎もその後も追っていく

_________________

食堂


「デカいな…それに…」


史郎は初めて来た食堂に目を輝かせる

食堂は図書館よりも大きく、たくさんの人がいる

そして何よりも今までの硬いパンと干し肉には無かった食欲をそそる匂いが史郎の鼻を刺激する


「めちゃくゃ旨そうだ…」


「おれちょっと買ってくる~半分こしようぜ~」


新次郎は食堂の奥にあるキッチンの方へと向かうと何かをしている

恐らく注文しているのだろうか

史郎はその間に周りを見回す

周りには多くの防衛軍の隊員らしき人が食事をとっており、チラチラと見てくる


(居心地が悪い…)


「おい!畑田!」


史郎が気まずくなって下を見つめていると後ろから聞きたくない声が聞こえてくる

史郎は眉間に皺を寄せ、ため息を吐いた後に後ろを振り向く

そこには想像の通り煌木勇気がいた

後ろには佐藤とその取り巻きがいた


「なんだ?」


「さっき佐藤達に暴行を振るおうとしたらしいな!」


「なんのことだ?逆に俺は佐藤に焼き殺されそうになったぞ?」


「嘘をつくな!佐藤がそんなことするわけないだろ!」


史郎は弁明を試みるが、煌木に一蹴される

煌木の厄介なところはこういうところなのだ


「それにお前は罪の意識も無く訓練からも逃げるなんてどこまで卑怯なんだ!!」


煌木の厄介なところは自身を正しいと信じて疑わない事

どれだけ言っても自分の友達を疑わず、史郎を非難し続けてくる


「俺は別に逃げてねぇよ!さっき部隊長の人に訓練に参加させろって言ってきたよ!」


「フン…苦し紛れの嘘にもほどがあるぞ。幼馴染を殴ってさらにはストーカーしていた紳士の風上にも置けない男め…」


その言葉に周りがざわつき、史郎への視線が厳しくなる


「今は関係なだろ…それに関しても俺はやってないからな」


「いい加減にしろ!口羽も暴力を振るわれたと証言してる!そうだよな口羽!?」


煌木は後ろを向いて誰かに問いかける

史郎はその名前を聞いてさらに重い気分になる

佐藤の後ろから出てきたのは黒色の長髪を持った清楚と言う言葉が似あう女性…「東雲口羽」

史郎の元彼女であり…今史郎が最も会いたくない相手


「………」


「ほら口羽言ってやれよ」


佐藤が口羽の肩に手を回し、耳元でささやく

その光景を見るとあの時の光景がフラッシュバックする

少し眩暈がする

トラウマをほじくり返されたからか呼吸も荒くなってくる


「……私は…」


口羽が口を開く

もうやめてくれと叫びたかった

あっちでも散々な目にあって…何とか義姉さんには知られないようにしたが、かなり精神的にきつかった

もうあんなことは起こってほしくない

しかし、ここで口を出してしまえば煌木は確信をもって攻めてくるだろう


「史郎くんに…」


口羽の口からとぎれとぎれに言葉が出てくる

佐藤はニヤニヤとしている


(もう…辞めてくれ…)


「ぼ…」


「やっほ~凡人君?尻尾巻いて逃げたんじゃなかったの~?」


口羽が言葉を言おうとしたとき、後ろからこの場に似合わないねちねちとしていそうな言葉が聞こえた

煌木や口羽たちが振り返ると、そこには坊が腰に手を当ててニヤニヤしていた


「……坊…」


「どうしたのそんなに顔色悪くしちゃって~あ!これ使って飲み物買ってきなよ~もちろん私の分だけね~」


坊はそう言うと端末を投げてくる

そしてそのまま史郎の背中を押してここの場から去らせる


「おい待て畑田!まだ話は終わって…」


「はぁ…ねぇ?」


煌木が史郎を呼び止めようとしたとき、坊から史郎と話している時には一片も見えなかった冷たさを持った声が漏れる

その声に思わず煌木は声が出なくなる


「君たちさぁ…史郎が誰のものか分かってる?」


「……だがあいつは訓練から逃げてる上にあんな嘘までついて…」


「言葉が分からないのかなぁ!?」


煌木は言い訳じみたことを言おうとするが、坊のイラつきを感じる声に委縮する

坊の顔はかなりイラつきを隠せておらず、周囲に集まっていた野次馬も一気に逃げていく


「史郎はね?僕のなの。地球にいた時からずっと史郎をいじめるのもパシリにするのも頭を踏むのも太ももで首を絞めるのも全部僕しかダメなの。分かる?なのに君たちはずっとちょっかいをかけてるの…はぁ…バカだとは思ってたけど本当に救いようのない馬鹿なんだね…」


「……だがあいつは…」


「はぁ…ほんとに救いようがないね。もういいや」


煌木を無視するとそのまま煌木たちの横を通り過ぎていく

その時、口羽の肩に手を置き、口羽のみに聞こえる声で囁く


「わざわざお宝を捨ててくれてありがとね」


「ッ!?私は捨ててなんか…!?」


口羽は坊の言葉に目を剥き、反論しようとするが、言葉が出ない

結局何も言えず、ただ去っていく坊を見送るしかなかった

_________________

「はぁ…これでいいのか?」


史郎は自販機らしきものでジャスミンティーを選び、端末を自販機らしきもの近づけるとジャスミンティーが落ちてくる


(なんでここでもあいつのパシリなんだよ…)


数年間パシリにされていたことでもはや坊の好みや趣味を熟知している


「さて…戻るか」


嫌な気分になりながらも端末を返すために史郎は戻ろうとする

後ろを振り向き、前を見ずに進もうとした

その時、1歩も歩かないところで誰かにぶつかってしまう

顔に大きな2つの丘がぶつかり、跳ね返される


「おっと…」


後ろによろめいた史郎をその人物は両手でハグのような形で支える

史郎はこの状況に覚えがあった

そして、恐る恐る上を見ると、八重歯をちらりとのぞかせ、獰猛な顔で笑っている女性がいた


「よ、元気だった?」


身長175cmの史郎の頭部が下乳の位置に来るほどの巨躯

何もかもが大きく太い

ボサボサの金髪はマントのようになっており、心做しか史郎を囲うようになっている気がする

獣のように史郎を捉えている吊り目はずっとニヤニヤしている


「……カラビナ?離してくれないか…」


「嫌だ…なんで話してくれなくなったの?ずっと寂しかったんだよ?」


「カラビナ・ジャン・スクイナラ」…傑雄大学に来ている留学生であり、史郎と同学年

そして…史郎とは彼氏彼女ではなかったが、ある…史郎が荒れていた時期に体の関係だけを持っていた…所謂セフレであった

しかし、彼の義姉の説得によって何とかまた落ち着いた史郎は段々と義姉の監視によって会う機会が減っていき、いつの間にか関係は無くなっていたと思っていた


「だってもう何ヶ月も話して無かったろ…」


「それだけで?」


「それに姉貴の目もあったし…」


「ああ…あの人?前史郎の家に行った時にあったよ」


「家に来たのか!?」


「うん…もう史郎と関わらないでくれって言われた…」


カラビナの目から光が消える

だんだんと手に力が入り、締め付けられていく


「なんで?なんで捨てたの?私と貴方って彼氏彼女だったよね?私嬉しかったんだよ?初めての彼氏だったんだもん…なのに…なんで?」


段々と力が入っていき、史郎の体が浮いてくる

史郎は逃げようとも史郎の体を掴む腕はビクともしない

顔が段々と近づいてくる


「それにまたいつの間にか居なくなって…もう逃がさない…ずっと一緒…」


よく見ると周りが段々と暗くなっている

何か天井や壁が近づいてきている


「愛してる…」


アイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテル…


もうおかしくなりそうだった

抵抗の力が抜ける


「アハ♪」


そして、唇と唇が触れ合……


「ねぇ、何してるの?」


一閃

史郎とカラビナの間を白銀が走る

カラビナは咄嗟に史郎を突き放して避ける

突き放された史郎は壁に激突…する前に誰かが史郎を抱き抱える

そこに居たのは白い髪をポニーテールにした女性

緑色の目でカラビナを睨んでいる

史郎を抱えている手の反対側には刀が握られている


「雪染さん…史郎を返してくれませんか?」


「嫌。渡さない」


互いに1歩も譲らない

その時、史郎が呻き、目を覚ます


「な、がれ?」


「はい。貴方の凪璃です…」


彼女は「雪染凪璃(ゆきぞめながれ)

史郎の2歳歳上であり、あとは卒業するだけだったはずの大学四年生

史郎が口羽と付き合っていた頃に所属していた剣道サークルのサークル長であり、史郎とは仲が良かった

そして…口羽を寝盗られた史郎を慰め、その傷を癒すために自身から体だけの関係を望んだ


「もう大丈夫ですよ…カラビナにも1mmも触れさせませんしあの女もここにはいません…だから私に全てを任せてください…」


耳元で囁かれる言葉

安心が押し寄せ、意識を手放しそうになる

史郎は何とか頭を振って意識を保つ


「雪染さん…もう1回言います…史郎を返してください」


「こっちももう1回言います。嫌です」


2人の視線が交わり、火花が散る

互いに譲れないものを賭けて、戦おうとしている


「あら?これはこれは♪」


その場に…また1人

地面に花びらが咲く

そこに降り立ったのは1人の女性

女神のような美しさ

白い長髪に白い肌、赤い目は人を見透かすような凄みがある

そして、その目はずっと史郎を見ていた


「そこのお方…私の許嫁である史郎さんは貰っていきますね?」


花吹雪が起こる

カラビナと凪璃は花吹雪から身を守る

花吹雪は2分…起こり続ける

そして、花吹雪が収まる


「!?史郎くん!?」


凪璃の手の中にはもう史郎がいない


「……あの女狐め…」


カラビナは壁に手を振るう

壁に拳がぶつかった瞬間、蜘蛛の巣状のヒビが走る


「はぁ…また探さなければ…」


音もなく凪璃が消える

カラビナもズンズンと廊下の奥へと消えていった

今、史郎を中心とした激情と執着の渦が巻き起こっていた

読んで頂きありがとうございます

読んだ後に良かった点や気になる点を感想に書いたり、評価してくれると嬉しいです

では、また次のお話で!

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