第2話〜第7防衛軍所轄中央都市「江戸」〜
こんにちは!
新田洋次郎です!今回も楽しんでいただければ幸いです
「は?江戸?」
彼女の言った言葉に史郎は呆然としてしまう
一気に入ってきた情報量に脳がフリーズしてしまう
「質問はそれだけか?なら行くぞ。”立ち上がり、私の後を着いてこい”………ああこれも付けておくか…”私語・質問は禁ずる”さぁ、行くぞ」
彼女はもう待てんと言わんばかりに何回かつま先で地面を叩く
そして独りでに何かを呟き、踵を返して通路を歩いていく
そうすると縄で縛られ、地面に座らされていた史郎達は全員立ち上がり、その後を追い始める
その間誰も喋らない
いや、喋れない
(なんだこれ…喋ろうにも口が開かない?)
そのまま彼女の後を着いていく
そうすると無数の鉄の扉が並ぶ通路に辿り着く
彼女が通路の行き止まりで止まると史郎達は丁度それぞれ1部屋ずつの扉の前に立っている
「さぁ…”入れ”」
また彼女が空気を揺らすような響きを持つ言葉を発する
そうすると開かれた扉の奥へと歩かされる
部屋には一対の椅子とそれに挟まれた机しかない
「まぁ、”座れ”。ゆっくり話そうじゃないか」
後ろから先程の女性が入室してくる
彼女はまた揺らぐ声を発すると史郎は否応なしに椅子に座る
彼女も史郎と向き合うように机を挟んで座る
「さて…”呪を解除”。これで喋れるだろ?」
「……!これは一体なんなんですか!?急にこんなことをしてくるなんて…」
「ああそんなに大きな声を出さないでくれ。頭が痛くなる。それに…」
彼女は面倒くさそうな顔をした後、体を乗り出し、史郎の顔とくっつきそうになるほどに近づく
「正体不明の人間が…それも30人も不法侵入してきたらこうするのが軍の仕事だろ?」
「不法…侵入?」
「そう。君達に問われるのは不法侵入罪と器物損壊罪の2つだ。まず…不法侵入の方だが…君たちは許可なく第7防衛軍所轄中央都市「江戸」に侵入したことが問題になっている。これに対して反論は?」
彼女は机に何か書類を広げるとペンを回しながら史郎へと目を向ける
「あの…まず第7防衛軍所轄中央都市って何処ですか?日本に軍はないと思うんですけど…」
「何だって?君は何言ってるんだ。書いて字のごとくじゃないか。第7防衛軍が管轄を担当してる都市だ。その都市の名前が江戸だ。理解したか?」
「……まぁなんとなくは…その…不法侵入って言うのは?」
「今ある都市8個は所轄土地内に入る時に中央政府の発行したビザが必要になる。お前らは身体検査…お前らを囲んでた「トルーパー」による赤外線検査によってビザ未所持だと判定されたからだ」
どうやら黒い奴らはトルーパーと言うらしい
そして…史郎達は不法侵入をしてしまっているようだ
「それで…器物損壊罪の方だが…お前らの乗ってきたバスのせいで発電所が潰れて今都市では停電が起きてる。これはかなりの損害だぞ?」
史郎は冷や汗が出るのを感じる
発電所は史郎にも聞き馴染みがあり、それが生活の中心である電気の要であることも理解している
もしそれを破壊してしまったのなら相当重い罪になることは想定できるだろう
「法律は分かるようだな?さて…お前らはどこの国のスパイだ?」
彼女の目付きが鋭くなる
その視線だけで穴が空きそうだ
「あの……俺はスパイじゃないんです…」
「スパイは大抵そう言うよ。まぁ、ここに来た時点でスパイ失格だし嘘つく意味あるかと思うけどね」
何とか誤解を解こうと言葉を言い始めるが、彼女はまともに取り合わない
「いや…違うんです…俺らは元々こことは違う世界いて…」
次は自身が違う世界から来ていることを説明しようとする
(何かないか?何か違う世界を証明する方法…何か…)
自身のポッケに手を入れ、何か無いかを探す
あったのは1つのティッシュ
(これだ!)
そのティッシュは大学で貰う宣伝用のティッシュだった
「これは…ティッシュか?」
「はい。日本の東京で貰ったティッシュです。ここは江戸なんですよね?なら東京は無いんじゃないですか?」
史郎は一種の賭けに出る
もし、この世界が2025年だとしても…過去に何かがあって江戸が残ったままの世界なら…東京はないんじゃないか…なら東京の住所が乗っているティッシュは十分異世界の証明になり得る
彼女はティッシュを手に取るとじっくりとそれを見つめる
「確かに…ここに東京と言う地名は存在しませんね…」
「なら!」
「しかし…」
希望が見えた史郎は更に説明しようとするが、彼女の言葉で遮られる
「これが君たちの偽造の可能性もあるし…どっちにしろ罪は免れない」
「そんな…」
「君達に罪を償う方法はただ1つ。私たち防衛軍に入隊して奉仕活動を行うこと。それ以外無い。」
「でも俺たち戦いなんて出来ませんよ?今から入ったとしても訓練期間など合わせて数年はかかるんじゃ…」
「ああ。。これから1年間でお前らには戦闘技術身につけてもらう。その後、1〜8までの軍のどれかに所属してもらう」
淡々と説明する彼女
その説明を聞く度に史郎は実感する
自分達は違う世界に来て、もう逃げられないことを
「では…これからは君たちのいた世界について詳しいことを説明してもらいましょうか」
説明し終わった彼女は書類を仕舞うとノートを開く
それからは尋問のような口調だが、内容は普通の世間話だった
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夜、尋問室から解放された史郎は与えられた牢獄のような質素な部屋に備え付けられているベッドで寝転んでいた
(なんでこんなことに…)
気を紛らわそうと部屋を見渡すが、窓もない部屋は面白みもない
(まぁ…んな事やってても仕方ないし…1回整理するか…)
今、この世界についてわかったことは3つ
1つ目にこの世界は元々居た世界とは違うと言うこと
今史郎達が捕まっているのは「江戸」と言う都市の中にある防衛軍の施設内らしくそこで拘留されている
2つ目にこの世界では異能力と魔導呼ばれるものがあるらしく、魔導は才能が無くても学べる学校に手配されるらしい。異能力の方は才能が全てらしく持っていたとしても日常生活ですら使えないものもあると。そして、異能力は「冠」と呼ばれるものを被ることで開放されるらしいが、史郎達は「冠」が現れる年齢を越しており、「擬似・冠」を使って後日発現させるらしい
そして3つ目…今1番史郎が思い悩んでいること。史郎達は防衛軍に就職し、史郎達の犯した罪…不法侵入罪と器物損壊罪の2つの懲役期間…約60年を社会的奉仕活動として防衛に務めなければならないことだ
(今21歳で…81歳までやるのか…)
どうやらこの世界では平均寿命がかなり長いらしく81歳と言っても元の世界で言う60代で定年退職と言う程だそうだ
「だとしてもだよなぁ…」
そう考えていると、段々と眠くなってくる
先程、届けられたご飯を食べ終えて風呂・歯磨きも終わらせた状態なので準備は万全だ
(そういや…あの女の人…)
『明日から訓練を始める。今日はよく寝ておけ』
(そんなこと言ってたっけ…まぁ、明日になればわかるか…)
そのまま史郎は夢の世界へと旅立った
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『魔…とは…』
遠くから声が聞こえてくる
体中が痛い
何も見えない何も分からない
『この…に…いて…』
ただ女の人の声が聞こえる
誰かが頭を撫でる
何度も何度も
まるで宝物を愛でるように
『お前は……へ…る…』
段々と声が小さくなっていく
何か後ろに引っ張られていった
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「んあっ?」
史郎は目を覚ます
毛布は寝相の悪さからか床に落ちている
「おい!起きろ!起きたら5分で支度をしろ!」
昨日史郎を部屋に案内した男性の声が聞こえる
史郎は寝ぼけ眼のまま顔を洗い、備え付けられている冷蔵庫から水を取り出して飲む
そして入口置かれていた食事を食べる
そして置かれていたシンプルな運動着に着替えるとドアに手をかける
「そういえばこっちからは開かないのか…すみませーん!準備終わりました!」
声をかけるとドアからガチャっと言う音が聞こえ、独りでにドアが開いた
「よく寝れたか」
ドアの前にいたのは昨日の女性
昨日と変わらない服装に整えられた髪
「はい。ありがとうございます…えっと…」
「橘だ」
「ありがとうございます橘さん」
「行くぞ。着いてこい」
橘はそのまま通路を歩いていく
その後ろを着いていくとガラス張りの部屋に出る
「おおお…」
ガラスの外には都市が広がっていた
日本と同じようにビル群が並んでいる
しかし、史郎の目を引いたのはビル群ではなく、空中を浮いている車や電車など
「確か…あなた達のいた所には飛車は無かったんだろう?」
「はい…あんなに自由に飛べるんですね…なんかこう…やるとしてもレールを引くとかになると思ってたので」
「無理はありません。あの飛車は魔導によって成り立っている」
「魔導…」
「フフ…よっぽど魔導に興味があるようだな」
魔導という言葉に目を輝かせる史郎を見て初めて橘は表情を崩した
「そりゃあ…知らない何かに出会ったらわくわくしますよ」
「魔導科学院に行ったら飽きるほど見ることになる」
「橘さんもその学院に通っていたんですか?」
「魔導の腕はからっきしだけどな」
また橘は歩き始める
その後は特に会話も無くそのまま進んでいく
そして辿り着いたのは広く大きな部屋
その中には新次郎達が集められていた
「新次郎!坊!美波!」
史郎は新次郎たちの方へと歩いていく
新次郎達にも特に目立った怪我や汚れは無い
「史郎も来たか!これで全員無事だな!」
「全く君はいつも遅刻するのかい?」
「先輩…無事そうで良かったです」
3人とも史郎に近づき、互いの無事を確認して安心している
そうしていると橘が壇上に登る
皆自然にそちらの方へと向く
「先日は手荒な所業…誠に申し訳ない。しかし、今こちらの世界もかなり危機に瀕しての行動だったと理解してほしい」
橘は右手にマイクを握り、史郎たちの周りをゆっくりと歩き始める
「まず…この世界が置かれている状況について話そうか」
橘が左手で何かリモコンのようなものを操作すると空中に何か球体が浮かぶ
それは青色が主であり、ところどころ緑色などがある
「地球?」
「そうだ。この惑星の名前も地球だ。君たち全員を聴取したが…同じでなくとも似通った…この世界とは異なる世界の話をしていた。ここまで合致していたら君たちが異世界からの来訪者であることは否定できない。…話に戻るぞ。これは1999年に撮られた惑星映像だ。そして…」
地球の画像が切り替わる
形は変わらないが、美しい青色が全て赤く染まっており、ところどころある黒色以外は全て染まってしまっている
「これは…」
「もっと細かく見たら正体が分かる」
地球のある一か所にズームされていく
そして赤色の地表まで近づくと赤色の正体に気が付く
「これは…人?」
「いやでもなんかおかしくねぇか?」
「あ!耳が尖ってる!」
「翅も生えてるぞ!」
そこに移っていたのは無数の人型の生物
見る限り全てが女体で耳が尖っており、翅が生えている
「こいつらは妖精《ヴァ―バンシー》。突如地球に現れ、一瞬のうちに世界を壊滅寸前まで追い込んだ」
その言葉の後、悲惨な映像が流れる
妖精たちは人間たちに襲い掛かると嗤いながら腹を裂き、内臓を引きずり出した
他の妖精は足を捥いで振り回したり、頭を開いて脳をすすったり…
そこに広がっていたのは地獄だった
それを見た女子は気分が悪くなったのかしゃがんだり口を抑えたりしている
他の学生も悲惨な光景に言葉すら出ない
「こいつらから市民を守るために出来たのが防衛軍…そして市民を守る砦がこの防衛軍所轄都市だ」
「お、おい…俺らって防衛軍に入るんだよな…」
「ええ。刑務作業の代わりとして入隊してもらう」
「なんで刑務作業じゃねえんだよ!」
学生たちからブーイングが出始める
無理もない。刑務作業の代わりになっているなんて今初めて知ったのだから
「理由は1つ。君たちが異世界から来たからだ」
橘はブーイングを受けても涼しい顔でやり過ごすとまたリモコンを操作する
そうするとグラフなどが無数に映し出される
「この世界では一定周期で異世界からの来訪者が確認されてきた。異世界からなんて異常現象を政府は放っておかずに研究を始めた」
そこには無数の英文で書かれた書類が次々と出てきている
「そして…ある1つの結論に辿り着いた」
棒グラフが映し出される
「異世界からの来訪者はこの世界で産まれた者に比べて異能力……「源能」の質が高い」
その説明を聞き、皆黙っている
集団の中でも典型的オタクの見た目をした男子が1人声を上げる
「つ、つまり!僕らにはチート能力があると!?」
「そう考えてもらって構わない」
橘の肯定の言葉に一気に湧く学生たち
日頃から転生チート能力ものを読んでいる男子に限らず、他の生徒もテンションが上がっている
普通の学生から一気に何者かになれることは誰でも嬉しいものだろう
「マジかよ!!おい史郎!俺らチート能力があるってよ!」
「…あ~そうだな…」
「なんでそんなにテンション低いんだよ!」
「いやぁ…まあな…」
史郎自体フィクションなどは好んで読むタイプだったが、現実になるとそれがうまくいくようには思えなかった
「まぁ、凡人の君にチート能力なんてないと思うからその反応は得わきまえてると思うな~」
隣で聞いていた坊はニヤニヤしながらその考えを肯定している
「皆、それについては好意的に受け取ってもらえて何よりだ。では…君たちにはこれからこの冠を被ってもらう」
皆、チート能力の話の流れで先ほど見た映像を忘れてしまったのか、そのまま次の話題に移ってしまった
「まず…そこの男。触ってみろ」
「お、俺ですか?」
選ばれたのは金髪の優男
彼は「煌木勇気」。整った顔立ちに誰にでも分け隔てなく接する性格の良さ、頭脳明晰で身体能力も高い文武両道のイケメン
彼は橘に言われるとおりに壇上に上がると壇上の中央に置かれている冠を持ち、被る
そうすると空間が歪み、虹色の光が溢れ出す
光が収まる
「どうだった?」
「何か…金色の龍がいて…そいつからに俺の源能ついて教えてもらいました…名前は「金色龍礼賛剣」、「英雄剣技」、「王の財宝」だそうです」
「ほう!源能3つか…クラスも虹晶級…やはり君たちには強い能力が宿っているようだ。次は君が来てくれ!」
勇気に倣い、皆冠を被っていく
全員虹色の光と共に複数個の源能を得ていく
坊は最多の7個の源能を持ち、美波はどうやら1つだが特に強力な源能を持っているようだ
そして新次郎は1つのバフ系の源能と1つの攻撃系源能を貰ってホクホクしていた
「最後だ。畑田、被ってみろ」
橘に促され、史郎は冠を被る
その瞬間、《《何色にも光らず、空間のみが歪む》》
そして、史郎の頭に言葉が浮かんでくる
[源能:アバター 畑田史郎 ようこそ]
そして歪みは戻り、史郎の意識も現実に戻ってくる
「どうだった?」
心なしか心配そうな橘の視線
「その…俺の源能はアバターらしいです…」
「何かが話しかけてきたりはしなかったか?」
「いえ…頭に文が浮かんだだけです…」
「そうか…」
橘は何度か目を泳がせ、何かを考えている
気まずそうな雰囲気
史郎はそれを見て察する
(あ…俺外れ引いたな…)
読んで頂きありがとうございます
読んだ後に良かった点や気になる点を感想に書いたり、評価してくれると嬉しいです
では、また次のお話で!




