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36話 勇者の力

「ユフィナ、あいつの魔力支配は幹部の魔法が効きづらい体質と同じものなのか?」


「いえ、それとは別の力です。魔力を使った攻撃は半減どころか、ほぼ無効に近いと思います」


 こいつの力を奪うスキルとは関係なさそうな能力だが。


 誰かから奪った力だろうか。


「とりあえずミトハが起きるまでは時間稼ぎだ。俺たちはサワ隊の狙撃の援護をする」


「わかりました」


 まずは会話で時間稼ぎだな。


「ところでオークリアって言ったな、あの街は一体なんなんだ?」


「何とは?」


「あの建造物のことだよ、なぜあんなに発展している?」


「さあな、あれはルシヴェルの趣味?みたいなもんだ。オレが生まれた時からある」


 趣味って……


 人間でも飼うつもりなのか?


 俺は会話をしながらサワ隊とユフィナに合図を送る。


 ここまでの一週間でミトハ、ユフィナとクロナミとの連携は完璧に近くなった。


 ユフィナは石弾を撃ち込み、俺が拘束する。


 オークリアが拘束されたところにサワ隊の五人が銃弾を撃ち込む。


 オークリアはユフィナの石弾を魔力支配で生み出している障壁で弾き飛ばし、風魔法で銃弾を失速させた。


 二メートルの魔力支配は魔力のこもっていない物質の探知もできるようだ。


 俺が普段やっている気配察知と似た原理なんだろう。


「向こうの五人も中々に良さそうな能力を持っているな」


 まずいな俺とユフィナではこいつを止めておけない。


「……やはりだめだったか」


 オークリアがミトハの方を見て、表情が曇る。


「ミトハ! 大丈夫でしたか?」


 ミトハの意識がもどっている。


「え? あ、うん! なんか時間制限をつけられたけど選べないから迷っていたら自然に戻ってきたわ」


 自然に?


「単純なことさ、オレはもう勇者から能力の一部を奪っているからな。この魔力支配がその力だ。人が違えばもしかしたらいけるかと思ったがダメだったようだ」


「奪われた当人が死んだら能力はつかえないんだろ?」


「勇者の力は別物だ、そもそも管理者の力だからな。その点で言えばお前の力も元々は管理者のものだな」


 まだ俺のスキルを狙っているのか。だが――


「俺をもう一度、精神世界に送り込むのは無理だろ?」


「その通り、よく覚えていたな。だが、できる人数は限られているが殺して奪うという方法もあるにはある。お前の力はそれに値するか?」


 殺す気満々のようだ。


「ミトハ、あいつはスキルの力じゃないと倒せない」


 俺がそういうとミトハは超高速でオークリアに攻撃を仕掛ける。


 オークリアはあらゆる魔法を撃ち込むがミトハは光刃(こうじん)ひとつですべて切り払ってしまう。


「魔力耐性を剣にもつけているのか、魔法が効かないのはお互い様のようだな」


 オークリアはそういうと飛行魔法で飛び上がる。


 ミトハには空中戦に適した能力がない。


「ソウマ!」


「ああ、わかっている」


 俺はできる限りの柱を作り出し、オークリアのいる上空まで伸ばす。


「なるほど……」


 オークリアは魔法で柱を壊そうとするが、一柱壊したところでミトハの追撃を受ける。


「自分を中心とした半径二メートルの魔力を操って、あらゆる攻撃を無効化しているわね」


「その通りだ、この空間がある限りオレに攻撃はあたらない」


「スキルを覗いてね、スキルは物理法則を凌駕(りょうが)する。スキルで攻撃されたらあなたでも死ぬ」


「その攻撃がこの空間を打ち破り、オレの体にあたればな」


 ミトハは柱を乗り移りながら何度も攻撃を仕掛けるが、そのすべてを防がれている。


 オークリア周辺の空気、いや空間そのものが武器となっている。


 ミトハが剣を振り上げると、剣をまとっているスキル『光刃』によるオーラが巨大なハンマーの形になる。


 なんでもありだな。


 振り下ろされたハンマーはオークリアの周辺の空間ごと地面にたたきつける。


 たたきつけられた瞬間、俺の目にはエルナの意識が戻り、彼女が再び影の中に隠れるところが見えた。


 たたき落された地面は球場に穴が開いていた。


「たしかに空間ごとたたき落すとは、めちゃくちゃだな。だが、傷一つ――」


 次の瞬間、エルナが背後からオークリアを突き刺していた。


「どうやった?」


 オークリアは胸の真ん中を突き刺されているのに、まったく動じない。


 魔人には痛みがないのか?


「ヴァリディア戦で気付きました、ソウマ様のスキルで高速化したものはスキル攻撃とみなされます。あなたの支配空間にも感知されません。そしてこの刃もスキル攻撃とみなされあなたの強靭な体を貫くことができました」


 よくやった、心臓を一突き。


 今まで見てきた魔人も心臓を潰されたら生きてはいなかった。


 が、つぎの瞬間エルナは吹き飛ばされる。


「スキルで超高速、そして感知できないか。なるほどな」


 ユフィナとサワ隊がそれぞれ追撃するが、支配空間にはじかれる。


「なんで心臓を貫かれて――」


「心臓の位置など変えているに決まっているだろう? 心臓以外にも重要な臓器の場所は変えている」


 その能力も魔法の一部なのか?


「三つの選択肢のうちの一つ、体の一部。人間だとこれを選ぶやつは少ないが魔人だと意外と多い。みせてやろう、魔人の体と膨大な魔力、そして勇者の力が作り出す最強形態を」


 オークリアがそういうと、彼の体は異形へと変化していく。

 


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― 新着の感想 ―
投稿ありがとうございます! 一気に読んだからか, 怒涛の勢いで戦闘シーンが詰まっていたように感じます! ヴァリディアもイグニスもなかなか強敵でした(; ・`д・´) ずっとハラハラしながら読んでいま…
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