37話 力の統一
オークリアが異形へと変化していく。
赤い皮膚は白くなり、金色の髪は銀色の仮面となり顔に張り付く。
腕からは鋭利な剣のようなものが真っすぐに生え、腰からは二本の尻尾のようなものが生えている。
あの尻尾でも攻撃してくるのだろうか。
足は先端にいくにつれて大きく、太くなっている。足の指はそれぞれが太く真っすぐ生えていて、ロボットの足のように機械的になっている。
生物的な部分と非生物的な部分が共存していた。
「『アクア・ラフィード』」
オークリアがそういうといくつかの水玉が彼の周りに出現し、ミトハに向かってジェット噴射された。
ミトハは問題なく躱すのだが、次の瞬間には目の前にオークリアが突撃してきていた。
ミトハは剣で防御するが吹き飛ばされる。
今までは基本的に遠距離で魔法攻撃を主体に戦っていたのが、形態変化後いきなり近接戦闘に切り替えてきた。
俺はこういう近接戦闘をしてくる相手が一番苦手だ。
対策として目の前に壁かトゲを設置するくらいしかできない。
だが、一定のレベルを超えてしまうと、そのくらいではダメージどころか時間稼ぎにすらならない。
オークリアは俺たちには目もくれず、ミトハを追いかけていく。
「まずいですね、ミトハしかまともに戦える人がいません」
ユフィナの言葉に責任を感じてしまう。魔王や王を倒すとか言って肝心の俺が役に立たない。
俺は久しぶりに自分の弱さを突き付けられる。
「ソウマあれをやりましょう」
「だが、あれは魔王用に……」
「ここまで差があってはしかたありません、やりましょう」
「わかった、エルナ頼む。ミトハに伝えてくれ」
俺が言葉を発したときにはもう、エルナは動いていた。
「この形態でまともに戦えたのはお前だけだ勇者。一撃必殺の技があったな。お前はそれをオレに当てる以外に勝ち目はないぞ?」
「それはあなたも同じよね? 魔法攻撃から近接戦闘に切り替えても私は対応できている。ならば人数の多いこっちが勝てる」
「あんなやつらを数に入れるとは勇者ともあろうものが情けない」
「たしかに勇者は一人で完結した存在でなければならない、でもそれは一人で戦い勝利することだとは私は思わないわ!」
私はエルナがこちらに合図を送っているのに気付く。
「今の私なら光焔衝を当てられるわよ、確実に」
「それはこの支配領域ごと当てると言う意味だろう? それではオレは倒せない」
今の光焔衝のレベルは十に到達している。
このレベルなら倒せなくても、あの支配領域が使えないくらいのダメージを与えられる。
私にはわかる、あのスキルは他の勇者のスキルと補い合って真価を発揮する。いや、勇者のスキルすべてがそうだ。
同じ場所にないとダメだと本能的にわかる。それは魔王のスキルも同じなのかもしれない。
私は全力でオークリアのもとに飛び込んだ。
今まで以上のスピードに一瞬反応が遅れ、避けられないと感じたのだろう、支配領域の防御に切り替えたようだ。
私はその領域ごと光焔衝で吹き飛ばす。
――光焔衝によって吹き飛ばされたオークリアが地面に叩きつけられる。
「思った以上の威力だったが……」
ミトハが空中を蹴るようにして戻ってきた。
「何をした?」
「勇者のスキル『統一顕現』はスキルを最適化させ安定させるスキル、これであなたが奪った勇者のスキルを返してもらったわ」
「は! なるほどな、前回の勇者が魔王からスキルを奪えて理由はそれか!」
「支配領域を使えなくなったのに余裕ね?」
「たしかに大損失だ、こんなことは許されていい事じゃない。だがまだ、魔力がある。この魔力があれば逃げることくらいできる……この借りはかならず返す。勇者が存在し続けるかぎりな」
オークリアは光焔衝のダメージで元の姿へと戻っていた。
どうやら勝負ありのようだ。
「『ルーメン・ランティア』」
オークリアがそういうと無数の光の矢が彼の周りに出現する。
「その魔力返してもらいます!」
ユフィナがそう叫ぶとあたりの地面が光だし、光の矢はオークリアめがけて飛んでいく。
オークリアは突然、牙をむいた自分の魔法に反応できず、すべての矢をくらう。
魔法攻撃に耐性のある幹部でもこれだけの魔法を食らえばただではすまない。
俺はオークリアの全身を拘束し、すかさずミトハが光刃で連撃を入れた。
「どう? 一人じゃなかったから、あなたに勝てたわよ?」
ミトハが自信満々の笑顔で、死にゆくオークリアに向かっていった。
「魔王がいる限り、オレたち幹部が死ぬことはない。必ずまた奪いに行く」
「記憶が引き継がれないのはお前にとって死と同じことだろ?」
「オレもさっきまではそう思っていたのだがな、どうやらそんなことは些細な問題だったようだ。すべてが手に入るのならこの記憶などなくてもかまわん」
奪うためならときに失うことがあっても関係ないということか。
生まれ変わってもこいつの行動は変わらないんだろう。
それは魂が乗り移ると言うことなのだろうか?
いずれにせよオークリアは一つ見落としている。俺たちが魔王を倒してしまうという可能性を……
「うまく作戦がハマりましたね」
「ああ、あらかじめ用意しておいた魔法陣を書いた巨大な布をオレの編集スキルで隠す。こんなにすんなりいくとはな」
ユフィナが行進祭で使ったという魔法陣の巨大版。
魔王と戦うために作ったのだ。巨大すぎるがゆえに一枚しか持ち運べないし、作るのに時間がかかりすぎて一枚しか書けなかった。
「でも、これで魔王の時に使えなくなったな」
「ええ、でも使う必要すらなくなりました!」
「お前、まさか?」
俺が驚きを示していると、ユフィナは派手な風魔法を真上に向かって放った。
どうやら魔力が戻ってきたようだ。
――魔王城。
「珍しいですね、ルシヴェル様がわたくしを呼ぶなんて……」
「ああ、どうやら勇者一行がこの城に向かっているようなんだ。追い払ってきてくれるかい?」
「わ、わたくしがですか? でも――」
「なに? 今まで何百年間も自由にさせてやったのに僕の頼み聞いてくれないわけ?」
「い、いえ。わたくしでは力不足というか……」
「そんな理由で断ろうとしてるの? それってさ何百年と自由にしてたやつが言えると思うの?」
「まさか! 断るつもり何て微塵も……わたくしが勇者一行を処理してまいります」
オークリア戦が決着しました。ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。
幹部も残り半分となり佳境といった感じでこれからというところなのですが、これからしばらく投稿頻度が減ると思います。週に一話かけるかどうかといったところです。
誠に申し訳ありません。
実は賞に応募してみようと考えるようになりまして、そちらの作品に時間をかけたいと思います。
異世界英雄伝記はもう最終話までの流れはできているので書くだけと言えばそうなのですが、なかなか書く時間が取れなそうです。
新作の構想も固まってきているのですが、こちらも書く時間が取れないという感じで非常にもどかしいのですが、コツコツと一つずつやっていきます。




