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30話 戦争利用者

 ヴァリディアの討伐に成功した俺たちは、魔物を倒しながら砦へと向かっていた。


「魔物たちの様子がさっきまでとは違いますね」


「たしかにな」


 さっきまではすべての魔物が王都まで足を止めることなく一直線に向かっていたのだが、今は列を離れようとする魔物がいたり、他の魔物を捕食する動きをみせる魔物もいる。


 操っている魔物の効力が薄れてきているのか、それかもう進行をあきらめたのか。


 俺がそんなことを考えていると、先のほうに何か見える。


 結界魔法か? 


「あんた達だったか」


 結界魔法の中には聖盾戦団(せいじゅんせんだん)のメンバーが倒れていた。


「君か、すまない。誰か治癒魔法を使える人を呼んできてくれないか?」


 唯一、結界を張っていたルシイナがかすれる声で言い、倒れこんでしまった。


 彼女も今すぐ治療しないとまずいな。


「エルナ、近くに治癒魔法使える忍はいるか?」


「はい、ここにいます」

 

 彼女はそういうと治療を始めた。


 影魔法に探知魔法が使えるのは知っていたが治癒魔法も使えるのか。


 彼女をクロナミ隊の隊長を任せたのは単に年が一番上だったというのもあるが、最大の理由は剣術を使う上で役に立つサポート系の魔法を多く使えるからだ。


 忍たちは剣術を基本としているが中にはエルナのように魔術も使うことができるやつが結構いる。


 剣術で圧倒できないなら、武器でも魔術でも何でも使って立派な戦士になる。というのが龍月国の基本方針らしい。


 その方針を基に暗殺者もこの国で育てられる。


 剣術と魔術は別物で、どちらかを極めるべしというこの国の方針とは別物だな。


「応急処置は終わりました、この先の治療は私の治癒魔法ではできません」


「ああ、わかった。時間もなさそうだし、俺たち全員で運ぼう」


 俺たちは倒れている十人を総出で運ぶ。


 知らない人もいるが多分、聖盾戦団のメンバーだろう。


 以前話したときに、前衛メンバーは森の近くで見張りをしていると聞いたから、その本来の前衛さんたちだろう。


 ――俺たちがルシイナたちを運び始めて数分。魔物たちがアルミラの森に逃げるように帰っていく。


 どうやらユフィナたちが行進祭を終わらせたようだ。


 想像していたよりも速いからミトハも間に合ったんだろう。


 俺は一時間ほどかけて砦に到着した。


「おーい! あっちに人がって、ギルド長どうしたんだ。その腕!?」


 俺が砦について真っ先に目に入ってきたものは上半身を包帯でぐるぐる巻きにされたギルド長だった。


「あ! 今頃戻ってきやがって! お前の仲間が全部終わらせちまったぞ」


 どうやら本当に行進祭は終わったらしい。


「そうだ、それより手を貸してくれケガ人がいるんだ」


 俺は手が空いていた者たちと共にルシイナたちを砦に運び入れた。


 一応、魔物がまた攻めてくる可能性があるため、まだ宴というわけにはいかない。


 俺は重要な時にいなかった罰として食料配達などの雑用を押し付けられた。

 

 俺だって中々の戦いをしてきたんだが、ギルド長は俺を便利屋かなんかだと思っている節がある。


 俺の気分はよろしくないが、砦の中は活気であふれていて、二人がどれだけ活躍したのかが聞いてもないのに伝わってくる。


 なんか俺だけ置いてきぼりなんだが。


 だが、魔王軍の幹部がここにも来ていたなんて、もうなにがなんだか。


 しかも、ミトハが一人で倒したとそこらじゅうで話題になっている。


 どうやら想像以上の成長をして帰ってきたようだ。


「おーい! 勇者が返ってきたぞ!」


 見張りをしていた男がそういうと、動ける全員がミトハたちが返ってくるのを拍手と声援で迎え入れる。


 俺も本来ならあちら側だったはずなんだが。


 今から俺も幹部を倒したと大声で言ってみるか? いや、なんの意味もないな。


「あ! ソウマ帰ってたのね!」


「ああ、お互い生きてたな」


「あたりまえよ!」


 俺たちは握手しようとしたが、両方とも出す手が止まる。


 ミトハも俺と同じことを考えたんだろう。握手だとよそよそしい。


 じゃあ、ハイタッチか? なんか軽いな。


 結局、俺たちはグータッチをし、あとから入ってきたユフィナともグータッチを交わした。


 

 ――数時間が経ち夜が明ける。


 あの後、魔物が再び攻めてくることはなかった。


 夜明けとともに生き残った魔物たちが森に帰るのを確認した見張り部隊が砦に帰ってくる。


 俺とミトハとユフィナそしてギルド長と息子だと紹介された青年で、状況整理のための会議が開かれた。


「そうだったか、まさかヴァリディアまで来ていたとはな。よく勝てたもんだ」


 一人で勝ったわけではないので過大評価されるのは困るんだが。


「たまたまスキルの相性が良かっただけだ」


 ちなみに無茶をしないと約束したのに幹部と戦ったことを後でユフィナに怒られてしまった。


「これがヴァリディアが消えた後に残ってたんだがなんだこれ?」


「それは幹部だけがもってる核、心臓みたいなもんだ。それが幹部を倒した証拠になる」


 なるほど、幹部は何から何まで特別性のようだ。


「これで決定だな。お前たち三人プラチナランク冒険者に任命する」


「ほんとうですか! やったぁ!」


 ミトハとユフィナが大げさに喜ぶ。


 これだけやったんだ、任命は当然だろ。


 まあ、これで処刑はなくなったからな、喜ぶのは当然か。


 俺たちは一日、見張りを交代で行い、翌日にはクレイザに戻ることが許された。


 

 ――それから約半年後。


 俺たちは冒険者の街クレイザ中の人からの拍手と声援と共に魔王領へと旅立とうとしている。


 この半年間はクレイザを拠点として冒険者活動をしながら、アルミラの森でひたすら実践訓練をしていた。


 ミトハやユフィナは街の復興にも手を貸していたようだ。


 俺はおれで魔王領との間に拠点を作ったり、武器の生産量を増やしたりとやることだらけだった。


 エルナは真面目な性格なので何かをするたび、俺に許可を求めてくる。


 話されたら俺も真面目に考えなければならなくなり、結局ほぼ休む暇もなく半年たっていた。


 王様もあの後何人か暗殺者を送り込んできたが、俺たちが幹部を倒したと知ると暗殺者を送り込んでくることはなくなった。


 なぜこのタイミングで魔王領に入るかというと、龍月国で戦争を起こす準備が整ったからだ。


 武器の大量生産によって魔法使いや剣士いがいの人間も戦えるようになり、かなりの人数が集まった。


 おそらく戦争が起きたら魔王領にいる魔人も今まで以上に、この国に攻めてくるだろう。


 もしかしたら、こちらも戦争にまで発展するかもしれない。


 魔人たちが戦いに流れ、防御が薄くなった魔王城に攻め込むという作戦だ。


「いよいよ魔王軍との戦いですね」


 ユフィナが心配そうに言う。


「大丈夫だ。ミトハはもう立派なバケモンだ。魔王ぐらい余裕だろ」


「ちょっと、それ誉めてるの?」 


 俺たち勇者一行は沢山の声援と共に魔王領へと旅立った。



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― 新着の感想 ―
あれ、もうこれ一話の冒頭のところまで来てます?
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