22話 焦熱の咎人 1
クレイザで魔物が暴れた事件から一週間、街は落ち着きを取り戻していた。
もともと、行進祭の準備でやることが多かったので、あの事件のことはすぐに語られなくなった。
そんな日の夜、俺は久しぶりに街の中にきていた。
ユフィナと修行の成果報告をかねて夕飯を食べることになっていた。
「それにしても、騒がしくないか? 街は落ち着きを取り戻したんじゃ?」
「あ! ソウマ! 大変なことになりました!」
ユフィナが駆け寄ってくる。
「なんだ? また魔物がでたとかじゃないよな?」
「もっと悪いです…… ルシイナさんが!」
ルシイナとは前の魔物騒ぎのときにユフィナがお世話になった魔法使いだ。
俺も少し話したが、良い人だった。
頼れるお姉さんという感じだ。そんな人がどうしたというんだろうか?
「――ルシイナさんが殺害容疑で逮捕されちゃったんです!」
……これはちょっと予想してなかったぞ。
俺はその殺人があったという宿に向かう途中でユフィナに事情を聞いた。
――死んだのはルデルという火魔法使い。『蒼鷹の牙』ってパーティーに所属してた魔法使いで、火魔法の腕には定評があったらしい。
蒼鷹の牙は今日の昼間に近隣の村からの依頼を終えて、クレイザに帰ってきた。
夕食を一緒に食べる約束をし、それぞれの部屋へ向かった。
――パーティーメンバー――
ルデル――魔法使い兼リーダー、カース――魔法使い、ミレス――前衛、オルゴ――弓使いの後衛、シャダン――魔法使い(回復)の五人。
そして夕食の時間、宿前に集合予定だったがルデルだけが現れなかった。
せっかちのオルゴが見に行くと部屋の鍵は開いており、ルデルの無残な死体がベッドの上に残されていた。
――というわけだ。
普通に考えればパーティメンバーの誰かの犯行となりそうだが、そうはならなかった。
なぜならルデルの死因が焼死だったからだ。
真っ黒な焼死体がベッドの上に転がっていたというわけだ。
そして、人にばれないように人を真っ黒になるまで燃やす。そんな火魔法の使い手はこの街に一人しかいないとなり、ルシイナが犯人では?となったそうだ。
彼女とルデルは火魔法を扱う若手の魔法使いでトップクラスの実力だったらしい。
そいして彼女は自分が一番になるために彼を殺したんじゃないか?となり動機まであったとされ、現在ギルドで拘束中とのことだ。
――俺とユフィナはギルドにつく。
「なんだ? おまえらは? 今ギルドは閉めてるんだ。依頼も飯も酒もねぇえから早く帰れ」
俺たちが扉を開けるとゴツイおっさんが、そんなことを言ってきた。
「いや、俺たちは殺人があったって聞いたんで、ちょっと話を聞きたいなと――」
「はぁっ? よく見りゃガキじゃねえか。死んだルデルの関係者か?」
「いや俺たちはルシイナの関係者で――」
「ああ、そっちか。 おいっ、案内してやれ!」
ゴツイおっさんが一人の受付嬢に命令した。
めちゃくちゃエラそうだが、もしかしてギルド長か?
この人がプラチナ冒険者を決めるんだ。愛想よくしとこう。
「なに、ニヤニヤしてんだ? 早くいけよ!」
「……」
――俺たちはギルドの地下に案内される。
「面会時間は五分ほどですので――」
受付嬢はそういうと扉をあけた。
「やあ、ユフィナとたしかソウマ君だったね。 すまない、こんなところまで……」
「ルシイナ! 何かの間違いですよね? あなたが殺人なんてするわけない!」
ユフィナはルシイナの話をさえぎり、彼女に詰め寄った。
「ああ、もちろんだ。そんなことはしていない。ただ――」
「焼死体だな? 実物はまだ見ていないが、そんなものを宿屋の部屋で作れるのは卓越した火魔法の使い手。そしてこの街にはあんたしかいない」
「君は私を疑っているのかい?」
「まさか、でも無実を証明するのが難しいのは事実だ」
「そうだね、私以外の魔法使いの仕業だとしてもとっくに逃げた後だろうしね。まさか君が解決してくれるのかい?」
「それでユフィナを保護してもらった借りは返したことにしてもらおう」
正直、この人は悪い人ではない。 だがこの前少しはなして思ったが頭がいいのだ。
そんな人に借りを作っている状態は俺的には怖いので今回のでチャラにしてもらいたい。
「あぁあ、そのことを出しにしてユフィナを仲間に引き入れようと思ったのだがなぁ。仕方ない、私はこの通り動けないから頼むよ!」
やはり油断も隙もあったもんじゃない!
――宿の一室に漂っていたのは、焦げた肉と油の匂いだった。
正直、この世界にきて何度か嗅いだ匂いだ。
けど、今回はちょっと違った。
「……焼けてるなあ、がっつりと」
俺は部屋の中を見回す。壁はススだらけ、床は焦げ跡だらけ、そしてベッドの上には……まあ、言わなくても分かるだろう。
――黒こげになった人のシルエット。
皮肉なもんだ、自分が得意の火魔法で焼かれて死ぬなんて。
――あの後、俺とユフィナは関係者から色々と情報収集をした。
そしてギルド長を説得し、かならず解決するという条件で犯行現場の調査を許された。
ギルド長としても優秀な魔法使いが行進祭を前にして二人もいなくなるのは困るようだ。
実際、いなくなるのは二人ではなく二つのパーティだと思うが。
もちろん俺としても行進祭の人手が無くなるのは困る。
――俺とユフィナは行進祭のためにも、受けた恩に報いるためにもこの難事件の調査に乗り出したのだった。




