23話 焦熱の咎人 2
ミステリーなんて書いたことないんですけど、何とか形になってますかね?
次回の更新は月曜日を予定しています。
改稿した話を読んでない方はぜひ読んでください!
まずは情報収集だ。
俺たちは宿の帳場に行って、宿泊名簿をチェックした。
問題の『蒼鷹の牙』の面々は確かに泊まってる。
この宿は俺やルシイナが泊っている宿がある通りとはかなり離れている。
そして、ルシイナは今日、街の外でパーティメンバーと共に行進祭に備えて魔法訓練をしていたというアリバイがある。
ただ、同じパーティの証言の信憑性は低いと判断されたようだ。
――俺は部屋の中をもう一度見る。焼け方がどうにも不自然。全体が燃えたというより、ベッドの上だけが“ちょうどいい感じ”に焦げてる。
「ユフィナ、火魔法ってこんなにピンポイントで人を焼けるもんなのか?」
「できなくはないと思いますけど…… その間、ルデルは反撃できたはずな。彼も火魔法使い、対処法は誰より知っていたはずなんです!」
「じゃあ、殺されて運ばれたか? ルシイナの犯行に見せるために、わざわざ燃やした?」
ユフィナは頭を抱えて考え込んでしまう。
俺の知る限り、ルシイナは頭脳明晰だ。
そんな彼女がこんな「私が犯人です!」なんていうような殺害方法をとるだろうか?
それに彼を殺すなら街の外で人知れず殺し、魔物のせいにでもするのが一番疑われないだろう。
黒こげの死体を残すなんて――
ん? 遺体の指が変に曲がってる。何かを握ろうとしていた?
それにこの遺体、焼死体独特のポーズをとっていない。
焼死体はファイティングポーズになってしまうと聞いたことがある。
「ユフィナ魔力探知頼む、この部屋だけでいい」
「わかりました」
魔力探知にも色々なレベルが存在する。効果範囲の広さや探知の精度などがある。
魔法使いは基本的に敵の位置が分かればいいので精度より範囲を優先し訓練をする。
精度を上げてもより小さい微量な魔力を感じ取れるだけで、魔力消費も多くなるからだ。
ユフィナの魔力探知の精度は完璧に近い。これは訓練で身に付けたのではなく最初からである。
だから逆に精度を下げて魔力探知を行うことが彼女にはできない。
訓練すればできるだろうが、その訓練に使える魔力があるなら他の訓練をした方がいいため彼女は精度を下げる練習をしていない。
だが、今回の場合ではその精度の高さが活かされるだろう。
「確かにここで魔力が使われた痕跡はあります。しかし、火魔法じゃありません! いや火どころか魔法ですらありません」
「誰の魔力かわかるか?」
「いえ、複数の魔力が一緒になっているような感覚で…… すみません、よく分からないんです。なにか気持ち悪い感じです」
ユフィナは混乱しているようだな。なにを感じ取ったのだろう。
「じゃあ、一つだけ。使われた魔力量は?」
「膨大です。恐ろしいほどに」
――俺はユフィナとギルドに戻り、一人路地裏にきていた。
「エルナ状況は分かっているな? 火魔法を使わずに焼死体を作る、なにか心当たりあるか?」
「……アーティファクトなら、おそらく」
アーティファクトあるのか、この世界にも。
いや、この世界には大昔かなりの文明国家が存在していたんだ。
ない話ではない。
「そのアーティファクトに心当たりは?」
「いえ、アーティファクトは存在自体が一般に知られていないんです。私も任務中に何度か耳にしたことがあるくらいで実物を見たことはありません」
なるほど、そんな存在するかも分からないものを冒険者が持っているってのは無理があるか。
「ユフィナさまの護衛についていたサワ01――遠距離部隊隊長――より、たしかに夕方頃に大きな魔力反応を感じたと報告がありました」
「その魔力量は?」
「最初に大きな魔力反応があり、その後膨大な魔力を感じたとのことです」
そんなの無視してたのか?
「あまりに膨大だったため魔力が使われた場所が分からず、見張りを強化することしか出来なかったようです」
「私の所にも報告が来ていたのですが緊急性がないと判断し、ソウマ様に伝えずにいました。私のミスです! 申し訳ありません!」
「いや、いいって。ユフィナの護衛を優先って言ったのは俺なんだ、謝ることじゃない」
あのままだと土下座しそうな勢いだったので、俺はギルドに戻ってきた。
――俺は事件を整理する。
犯人は火魔法を使っていない。遺体はファイティングポーズをしていなかった。
火を使わずに焼死体を作った。部屋は火事にならなかった。
聞き込みで『蒼鷹の牙』の人間関係は良くなかったと判明している。
ルシイナはアリバイがあった。
アーティファクトが使われた可能性がある。
大きな魔力反応のあとに、さらに大きな魔力反応。
――俺はギルド長に頼んで俺が考えた容疑者を集めてもらった。
俺は容疑者たちの前に立つ。
俺が考えた容疑者はカース、ミレス、オルゴ、シャダンの『蒼鷹の牙』のメンバー。
そして、ストラード、ラゼルドの二人。
彼らは聖盾戦団のメンバー。つまりルシイナと同じパーティの二人だ。
「お前か! 俺たちを疑ってるっていう野郎は? 俺たちはな、仲間を殺されてんだぞ?!」
オルゴが怒鳴る。情報通りせっかちだな。
「まあ、落ち着いてください。どう聞いたか知りませんが俺は情報が欲しいだけですから」
長くなりそうなので、六人が座っているテーブルの向かい側に椅子を移動して座る。
「じゃあ、まずオルゴさんに聞きたいのですが。ルシイナさんが犯人だと思いますか?」
「思わねぇな。思わねえけど証拠があるんだろ? 俺は話したことはねえから何ともいえねが違和感はのこる」
意外に冷静だな。
「ルシイナが犯人な訳ないだろ! 犯人はこいつらの中にいる! なんでおれたちまで呼び出されんだ!」
声を上げたのはルシイナの仲間のラゼルド。
「悪いが、ここはギルドの中だ。ケンカなんか始めやがったら資格剥奪だからな?」
ギルド長の言葉に全員が大人しくなる。
さすがの迫力。
「最初にも言いましたが疑っていているのではなく、情報が欲しいだけなので協力してください」
俺はその後も事情聴取を続けた――
事情聴取の結果――
カース(男)――魔法使いはこのパーティの元リーダーだということが判明。
ルドルが加入して自らリーダーを譲ったとのこと。
その時に問題は起こらなかった。恨んでいるということはなさそう。
ミレス(女)――前衛の証言により、このパーティの力バランスが判明。
このパーティはもともとブロンズランクで、リーダーのルドル以外はそこまで強くないとのこと。
彼の加入によって、より高難度の依頼を達成できるようになりゴールドまで上り詰めることができたということだ。
オルゴ(男)――後衛弓使いはこのパーティの人間関係について言及した。
このパーティの空気はかなり悪かったらしく、その原因はルドルにあったようだ。
彼はパーティを私物化するようになり、全員の賛同なく高難度の依頼を受けていたようだ。
報酬も一番多くもらい、戦闘の指揮も彼がとっていたようだが味方を囮に使うなど酷いものも多かった。
このパーティの全員に動機はあったということになる。
シャダン(男)――回復魔法使いはこのパーティにはリカという女魔法使いが所属していたと証言した。
リカはルドルが加入してすぐに魔物によって殺された。
そのころからルドルはゴールドを目指すようになり、難易度の高い依頼をムリにでも受けるようになったとのこと。
そしてリカはミレスと親友だったそうだ。
ストラードとラゼルドにはルシイナのアリバイと彼女の魔法について教えてもらった。
思った通りルシイナは優秀な火魔法使いだが、さすがに部屋に火を移らせずに人を燃やすことは出来ないと言っていた。
そしてこの二人がルドルに対して恨みを持っているということもなさそうだ。
――俺はこれらの証言で犯人の目星がついた。
最後にダメ押し。
「ユフィナこの中で最も魔力残量が少ないのは誰だ?」
「それは……」
よかったら、犯人を当ててみてください!
私は読者に挑戦する!




