24話 焦熱の咎人 3
リアルの方の仕事が忙しくて更新遅れました。ごめんなさい。
「この中で一番魔力が減っているのは……カースさんです」
「でも、それは魔法使いなら当然です! 魔術は剣術よりも魔力消費が多いんです」
ユフィナはカースが犯人だとは思っていないらしい。
「ミレスさん…… 剣術を使う前衛にしては魔力消費が多すぎます」
やっぱりミレスが犯人か。
動機がありそうなのが彼女だけだった。
問題は殺害方法だ。
アーティファクトを使ったのなら現物を入手するいがいに証拠を示せない。
卓越した火魔法の技術を隠している可能性もゼロではないがほぼないだろう。
「――みなさんのお陰で殺害方法が分かりました。犯人はアーティファクトという古代の魔法装置を使用したと思われます」
ミレスの所持品を今ここで確認しても良いが、彼女が今持っているとは限らない。
宿の部屋かもしれないし、もう捨てたかもしれない。
「古代の魔法装置? おいおい、急に何の話だよ?」
オルゴが話に割り込んでくる。
当然だ。いきなりアーティファクトと言われても訳が分からないだろう。
「俺は実は勇者の仲間なんです」
「え?」
「アーティファクトというのは一般的には知られていないものなんですが、確かに存在します」
「勇者の仲間だからって、なんでそんなものが存在してると言えるんですか?」
ここではじめてミレスが反論してくる。
「勇者には国所有の図書館に入る権利が与えられます、そこでたまたま知ったんです。アーティファクトの存在を……中には火を使わずに人を燃やせるものもあるとか」
遺体は焼死による独特なポーズをとっていなかった。
だが指先は曲がっていた。
最初は何かを掴もうとしたのだと思ったが、あれは痙攣したあとだろう。
ルドルは体の内側からアーティファクトによって体の内側から焼かれたんだ。
体内の水分子を振動させ、その摩擦熱で内側から焼く。
電子レンジと同じ仕組みだ。威力は比べ物にならないだろうが。
「今、王都からある魔法使いに来てもらっています。彼女ならアーティファクトの微量な魔力を探知し、そこに残っている魔力反応から犯人を割り出すでしょう」
「仮にそんなものがあってだな、そんなもんこの広い街の中からどうやって見つけるんだよ? そんなことできる魔法使いなんかいるわけねえだろ」
オルゴが言う。
こいつはなんで犯人じゃないのに、こんなに突っかかってくるんだ?
「ここに向かってきているのは『祝福の魔女』セレスタです。ここにいるユフィナの師匠なんですよ、実は。弟子が困っているなら手を貸そうと言ってくれました」
「『祝福の魔女』か確かに彼女ならできるかもな! 本当に来るのならな!」
さすが有名人。二百年以上、生きているだけはあるな。
だが、オルゴは魔女が来ると信じていないらしい。
「大丈夫です。彼女は必ず来ますよ。あと三日ほどですかね、彼女の魔力探知ならこの街どころか、街周辺まで探知できるでしょう」
俺はミレスの方を見る。
顔を下に向けている。かなり焦っているな。
「そういうことなら、三日後にギルドに集合だ。それまではこの街から出ることは許さん」
ギルド長がそう付け加え、解散となった。
――ありえない、ありえない!
この武器の存在を知ってるやつがいたなんて、聞いてない!
これを使えばすべて上手くいくって言ってたじゃない!
火魔法どころか魔法が使えない私が、あんな殺し方をできるはずがない。
これなら森のなかで殺したほうがバレなかった。
もう考えても仕方ない、今はとにかく街から離れた場所にこれを隠さないと。
これには微量な魔力が宿っていると言っていた。
なら隠すのはアルミラの森だ。
あそこなら魔物の魔力で探知しようがないし、魔女がどれだけ化け物でも街から森まで探知するなんてできない。
それに森の入口までなら、馬に乗って行けば明日の昼までには街に帰れる。
――私は予定通り馬を借りアルミラの森を目指しているのだが、馬の調子が悪い。
今日一度も走っていない馬を借りたはずのだが、このペースではアルミラの森までかなりかかってしまう。
たしかこの近くに林があったはず。あそこで一回休んで馬を交換しにいくか決めよう。
――林の入口で馬から下りた瞬間、ものすごい光が打ち上げられあたりを照らした。
「やっぱり、あなたが犯人だったんですね……ミレスさん」
目の前には、あの男が立っていた。
そして、私を取り囲むように魔法使い、ギルド長までいるようだ。
「罠だったんですか……」
「はい、アーティファクトが使われた以上、証拠となるのは実物だけですからね。そのカバンをこちらにわたしてください」
すべてこの男の仕業だったようだ。魔女の話も嘘か……
すこし考えれば分かっただろうに、冷静じゃなかったな私。
「悪いけど、私捕まる気ないから」
私は残りの魔力を絞りだし、目の前の男に切りかかる。
だが、次の瞬間に私は転んでいた。何が起きた? 急に地面が――
キィーーン
高い音が鳴り響き、私は自分の剣が折られていることに気づく。
「行進祭の前にこれ以上、人が減るのは困るのでな。大人しく捕まってくれ」
どうやらギルド長が剣を折ったらしい。
地面が盛り上がったのと同様に全く反応できなかった。
さすがプラチナランクだ。次元が違う。
まあ、もういい。あの男を殺した時点で私の目的は達成されているのだ。
――俺たちはミレスを捉えることに成功し、ギルドへと戻ってきた。
この国にも刑務所的な場所はあるが、この街クレイザにはそういった施設は存在しない。
そのため罪を犯したとされるものは騎士団が迎えに来るまでギルドの地下で拘束される。
「なぜルドルを殺した?」
ギルド長が書類作成のため尋問を始める。
「なんでって、あの男が無茶な依頼を受けてみんなが大変な思いを――」
「ほんとうか? それならパーティを抜けるか解散すれば良かっただろう? ルドルならどこのパーティにだって入れる実力だった」
「私は――」
――結局ミレスはルドルを恨んでいたようだ。だが、なぜ恨んでいたのかは語らなかった。
リカは確かに殺されたが、それはルドルのせいではないはずだ。
なぜ殺すほどルドルを憎んだのかは語られなかった。
「最後に一つ教えてください」
俺は一番聞きたかったことを聞く。一番重要なことだ。
「アーティファクトはどこで手に入れたんだ?」
「リカがくれたのよ。昨日、依頼が終わって街に帰ってきたらリカがいて……」
何をいっているんだ? 死んだんだろ? リカは……
「それ……何か話はしたか?」
「ええ、でも何かおかしかったわね。あの子の一人称はリカだったけど、昨日はわたしって言ってたわ。でも――」
それって……
「あの子が生きているなら、それでいいの。それ以上の望みはないわ」
――俺は後のことをギルド長に任せ、ギルドを後にした。
死んだはずのリカにアーティファクトを……
魔法による幻覚の可能性もあるが、ヴァリディアである可能性もある。
ヴァリディアは殺した生物の姿を奪う能力を持っている。
その場合、リカを殺したのは……




