19話 英雄伝記【ユフィナ編】1
久しぶりの戦闘回です!
――修行開始から二週間、わたしは毎日限界まで魔力を絞りだし、この宿で倒れるように眠る。
この繰り返しだ。
この二週間、毎日同じ夢をみる。魔法が好きだったころの夢だ。
あの時のわたしはなんでもできた。どこまでも往ける、そんな感覚だけがあった。
しかし、今日はそんな夢の途中で意識が覚醒した。
身体が重いのを感じる。まだ、魔力が全回復していない。
それでも目が覚めてしまったのは、何やら外が騒がしいからだ。
――今が何時なのか分からないが、まだ外は暗い。
この街は深夜を回ると、一部の場所を除き明かりを消すことが暗黙のルールなのだが、今はそこらじゅうの明かりがついている。
わたしは杖をとり、一階へ向かう。
「――なにがあったんですか?!」
わたしは宿中の明かりをつけている受付の人になにがあったのか聞く。
「わからない、多分魔物が出たんだと思う」
……魔物が。今はソウマもミトハもいない。
「魔物って…… よくあることなんですか?」
「そんなわけないだろ、今の時期はとくにな。少なくとも、おれがこの街にきてからは、初めてのことだ」
わたしは、どうするべきだ?
魔力も回復していないし、修行だってまだ……
「なあ、あんた勇者と一緒にいたってことは仲間なんだよな? たのむ! この街を救ってくれ! この街にはおれの家族も住んでるんだ! たのむ!」
おとこは頭を下げ、頼み込んできた。
――そうだ、わたしがセレスタ様に最初に教えられたことは、もう自分から逃げないことだった。
わたしはもう勇者一行になったんだ、ソウマに戦い方をもらった。
魔力が増えなくたって、わたしはどこまでも往ける。
そう、あの頃と変わらない。あの頃の感覚を思い出すんだ!
「はい! 勇者の仲間として、わたしがこの街を守ります」
まずは、状況を確認しないと。魔物は何体なのか、戦える冒険者は何人いるのか。
魔力探知はわたしも使うことができる。しかし、魔力探知は効果範囲と効果時間によって魔力消費が増えていく。
普通の魔法使いは半径十メートルに効果範囲を絞り、戦闘中ずっと探知を使い続ける。
わたしの魔力では5分もつかどうか。
それに今知りたいのは、この街全体のことである。
この街は半径一キロ、三秒でわたしの魔力は尽きる。それに今は魔力が回復していない。
――0.5秒だ。0.5秒だけ街全体に魔力探知を広げる。
魔力の大きいものの配置をなんとなく認識する。
大丈夫、ここは冒険者の街。わたしが全て対処する必要はない、人がいないところに最速で向かう。
魔力探知! 一瞬、脳内にこの街の魔力配置がうつる。
やはり、魔物が街で暴れているようだ。探知したのは十体、まだ誰も駆けつけていない魔物が二体に、複数人が駆けつけているのに苦戦している魔物が一体。
苦戦している魔物は魔力が他のよりも多い。
まずは、人のいない二体から。
――わたしは自分の体の真下に空気を圧縮し、解き放つ。
この数日、圧縮修行だけをして、身に着けた技の一つ。
身体が耐えられるギリギリの威力で自分を吹き飛ばし、機動力を確保する。
通常の飛行魔法は自分の周辺の空気に魔力を流し、操る。しかし、わたしの魔力量ではロスが多すぎる。
地面に着地する瞬間、飛行魔法で一瞬だけ体を浮かせる。
このとき、空気に流す魔力量が少ないと地面にたたきつけられる。
骨折では済まないだろう。
逆にそれが怖くて魔力量を増やせば、すぐに魔力切れだろう。
――わたしはそのギリギリのバランスを見極め、地面に着地。
その勢いのまま、ポシェットから圧縮した石を取り出し、目の前の魔物めがけて放つ。
圧縮され、解放された空気に押し出された石弾は魔物の脳天から体を一直線に貫いた。
倒したのはナイトジャッカル。夜行性で群れで行動するはずの魔物だが、この街に入り込んだナイトジャッカルはこの一体だけだ。
「――少し、強すぎましたね。魔物ごとに威力を調整しなければ、すぐに魔力が枯渇しています」
たいていの魔物は頭か心臓が弱点。
頭に命中した時点で死んでいたはずだ、身体まで突き抜ける威力は必要なかった。
――二体目の位置を確認するため、わたしは再び魔力探知を行う。
一回目の魔力探知で大体の位置は覚えている。
だから、こんどの魔力探知は半径20メートルに絞り、効果時間は0.3秒。
――まずい、魔物の近くに微量な魔力。住民かもしれない。
間に合わない……
わたしは、とっさの判断でさっきの魔力探知で確認した場所に、石弾を三個、強めの威力で放つ。
大丈夫、さっきので威力調整は分かったし、魔物がどう動いても三個中どれかは当たるはず。
わたしは全速力で走り、魔物のところに向かう。魔物は十五メートルほど先だが建物に挟まれているので、一直線に行けない。
飛べればよかったが残りの魔力量を考えると走るしかなかった。
やっぱり、こういうときに、どうしても思ってしまう。
魔力量があればと――
多分、一生この思考から逃れることはできない。
無条件に課せられた、試練。わたしの気持ちを思考を縛る鎖。
今までのわたしなら、ここで止まっていた。歩みも気持ちも。
でも、今のわたしは術を身に着けた。それを発揮しない理由など、どこにも存在しない。
わたしが路地を抜け大通りにでると、大きな魔物が倒れていた。
ナックルベア。どうやら的が大きかったため、三個とも命中したらしい。
辺りに死体はない、しっかり逃げられたようだ。
わたしは高揚していた、魔法を自由に使える感覚。
神童といわれた子供時代に確かに感じていた、あの感覚を少し思い出せた。
――ボォォッン!
わたしがナックルベアから石弾を取り除いていると、後ろの方から派手な音がした。
「一番魔力量が多かった魔物のいた方向…… しかたない」
わたしは石弾を取り除くのをやめ、音の方へ吹っ飛ぶ。
ユフィナは魔女に憧れているので黒のワンピースにとんがり帽子と魔女っぽい恰好をしていました。
この世界において、魔女は黒のワンピースなんて決りも流行りもありません。
セレスタの紺のワンピースととんがり帽子スタイルをまねていました。
現在は動きやすさ重視し、ちょい長めの黒ショートパンツに、オーバーサイズの白いシャツを着ています。この街には子供が少ないため、微妙にサイズが大きくなってしまいました。
お金は王様から大量に路銀をもらった(奪った)ソウマ君がくれました。お小遣い制です。




