18話 修行の時間
アルミラの森に入ってから5日がたち、俺たちは冒険者の街クレイザへ向かっていた。
――依頼は問題なく達成した。
達成の証拠として、魔物の一部を剥ぎ取りギルドに提出する。
この世界は魔物を殺しても消えたり、結晶石になったりしないので死体は燃やさないといけない。
しかし、アルミラの森だけは例外で死体を狙った魔物がすぐに群がってくるので処理の必要はない。
――俺はこれから三週間、修行に入る予定だ。その間に05たちに依頼を受けてもらう。
「気配を読み取るようになるまで三週間。その三週間は動けないんだな?」
「はい、食事も最低限、睡眠もその場所で取っていただきます」
過酷だな、それでできるようになることが気配を感じ取れるだけ……
それも確実にできるようになる保証はどこにもない。
この世界にきてから色々あったから、深く考える時間がなかったが。
――翌日。
俺は修行を開始することになったのだが、その修行内容はひたすら瞑想だった。
お釈迦様も瞑想で悟りを開いたんだっけか?
別に、悟りを開きたいわけじゃないんだがな……
「――まずは、最初の五日間は内側に意識を全集中させてください、自分を感じるのです、爪の先から心臓の中心まで感じ取れるようになってください」
それから、この五日間は水だけで、睡眠は座ったまま取ってください。
エルナはそう付け加え、消えていった。
まじか、もっと軽い瞑想を予想していた。
そもそも瞑想なんてしたことないぞ。
とりあえず、俺は座禅を組み目を閉じる。
まずは爪の先? いや、まずは分かりやすい心臓からか。
俺は心臓にすべての感覚を向ける。
――かなりの時間がたち、エルナが水を持ってきた。
俺は街から少し離れたところにある、林のなかで瞑想をしている。
街の外の林の中に一人、静かだが正直怖い。
魔物とかでたらどうするんだ。
俺はエルナが近くで護衛してくれていると信じているが、怖いものは怖い。
瞑想は最初の数時間はどうしても頭の中で何か考えてしまい、集中できなかったのだがついに考えることもなくなり、己の中に意識を集中させることができた。
しかし、空腹感だけはどうにもならない。
一定時間おきに空腹を感じていたが、最終的には自分が空腹なのかどうかも分からない状態でただひたすらに瞑想を続けた。
――そして一週間後、俺の修行は完成していた。
エルナが近くで俺を護衛してくれているのを感じ取れるようになったからだ。
もちろん、一週間で完成してしまったのには理由がある。
やはり、この世界だったからこの技術を身につけられた。
日本でいくら瞑想をしても、この技術は身につかなかっただろう。
――俺は五日目にエルナが食料を持ってきたときすでに、全神経を自身の内側に向けることができた。
この世界に自分が存在していることを自覚した。
そして、俺の中には回りに当たり前にある、空気中にだって存在するものがないことに気付いた。
そう、魔力である。ここでようやく俺は魔力というものを実感することができた。
――忍びたちが三週間もかかったのは、自分のなかに最初から魔力があったから空気中に微量に含まれる魔力を認識するのに時間がかかったのだろう。
あることが当然の人に、なぜあるのかと聞いても答えは返ってこないだろう。
それと同じことだ。
魔力がない俺は、自分を自覚したときすぐに空気、土、木に含まれる微量な魔力を感じ取ることができた。
そして、生物が動くと空気中の魔力は押しのけられ、揺らぎが生じる。
おそらく、忍びたちはその揺らぎを気配と言っていたのだ。
忍びたちも自分たちが魔力の揺らぎを感じていたとは思っていないだろう。
おそらく俺が今、理屈で説明したことを彼女たちは感覚だけでやっている。
ともかく、俺は修行を完成させることができた、依頼もクロ隊に行ってもらっているから問題ないだろう。
情報収集も忍びたちがやってくれているし、ユフィナも一週間前あったとき順調そうだったから俺の出番はないだろう。
さて、やることがなくなったな……
エルナに剣の使い方でも習うか。
――冒険者の街クレイザ周辺――
「ヴァリディア様、なぜそんなものをここに?」
「――ん? お前が人は殺すなっていうから暇なんだよ、だからちょっとしたお遊び」
ヴァリディア様は基本的に待つことができない、他の村で殺しをしていると思ったのだが――
「だって、こいつら街に解き放ったら面白いじゃん? 何人死ぬかな? 今、街のやつらは油断してると思うんだよ? 行進祭は数週間後、魔物はこの期間は森をでようとしない。子供でもしってる常識、そこにこの十体の魔物を解き放つ、祭り前のスタンピード、前夜祭ってとこだよ」
ここまでバレずに魔物を運んでくるなんて、かなりの注意を払ったはずだ。
意味のない事に、やりたいことにかけるその情熱。
やはりこの人は奇人だ。
でもだからこそ、ワタシをそばにおいてくれる。
次回、ユフィナの鼓動! おたのしみに!




