誰よ!私を水虫扱いしたのは!
帝都が噂で炎上して七日目。
皇女スカアハは、ついにブチ切れた。
「誰よ!私を水虫扱いしたのは!」
「ケチ?性病?ありえない!」
「絶対に見つけ出して、名誉を回復する!」
いや、名誉を回復するって言ってるけど、
その怒り方がすでに名誉を傷つけてる気がする。
スカアハは宮廷魔術師、情報部隊、近衛兵を総動員し、
噂の発信源を探し始めた。
しかし、旅商人ネットワークは広すぎる。
噂はすでに帝国全土に広がり、
「皇女スカアハ=水虫魔法陣」というイメージが定着しつつあった。
皇女は焦った。
「私が水虫じゃない証拠を出しなさい!」
「靴屋!靴を持ってきなさい!」
「宮廷医!性病じゃないって証明しなさい!」
靴屋は泣きながら靴を磨き、
宮廷医は泣きながら診断書を書き、
近衛兵は泣きながら皇女の靴をチェックした。
なんか、みんな泣いてる。
そして、皇女はついに犯人像を掴んだ。
「噂を流したのはエルフ系の美形の男!
どの街でも軽口を叩いて去っていく謎のイケメン!」
近衛兵たちは震えた。
「殿下、それ、特徴がざっくりしすぎて」
「我が国には、イケメンなんて全国にいますし」
「エルフ系の美形なんて、隣国にはもっといますし」
「黙りなさい!
そのイケメンこそ、私の婚約者だった男よ!」
近衛兵たちはさらに震えた。
「えっ、殿下の婚約者って、魔王討伐の英雄レンバス様では?」
「でも、レンバス様は、殿下の槍で」
「その、肉塊に」
スカアハは歯ぎしりした。
「そうよ!あの男よ!
あの不細工な姿で魔王を倒したくせに、
今はイケメンになって噂を流してるのよ!」
近衛兵たちは顔を見合わせた。
「え、イケメンになったんですか?」
「どういうことですか?」
「殿下、説明を」
「説明なんていらない!
とにかく探しなさい!
世界中のイケメンを全員捕まえてきなさい!」
いや、全国のイケメンを捕まえるって、
それもう国家事業じゃん。
帝国情報部は頭を抱えた。
「殿下、イケメンの定義を」
「どこまでがイケメンで」
「エルフ系ってどの程度で」
「全部よ!全部捕まえなさい!」
帝都は再び炎上した。
今度は「皇女スカアハ、全国イケメン狩り開始」という噂で。
僕は別の街で、のんびり昼寝していた。
使用人たちが慌てて駆け込んできた。
「れ、レンバス様!帝国が!」
「皇女殿下が!」
「全国のイケメンを捕まえるよう命じたそうです!」
僕は寝返りを打った。
「え〜めんどくさ、イケメン狩りって、僕のせいじゃなくない?僕はただ噂を流しただけだし。広めたのは商人だし。僕は悪くないよね?」
使用人たちは震えた。
「でも、レンバス様が一番イケメンなので」
「真っ先に狙われます」
「どうしましょう」
僕はあくびをした。
「まあ、見つからないでしょ。
僕、イケメンだし。
イケメンは捕まらないのが世界の理だよね」
使用人たちは困惑したが、
僕は気にしない。
だって、めんどくさいし。




