62 リミッター
「て、てめぇどっから現れた!!」
「てめぇとは失礼な。私は女だ」
「じゃあババア!!」
「失礼な。まだ21だ」
猫背の大きな体をした人だ。刈り上げた髪と丸眼鏡に目が引かれる。
「見たところこの街のガキではないな。ここに何しに来た」
「あ、あの…ダンデリオンの方ですよね?(‼︎)」
ランスが彼女の左肩のたんぽぽを指差しながら言う。
「この国にマスターが来るという話を聞いたんですけど、本当ですか?」
「マスターか…………奴ならまだ来てないぞ」
「奴??」
「誰から話を聞いたか知らんが、今日ここにマスターは来ないぞ」
「え!?」
あたし達3人は揃えて声を上げた。
「来ねぇってどういうことだよ!!」
「あたし達、マスターに助けてもらうためにここに来たんです!この国を出たいんです!!」
「この国は汚いものを排除する獣たちが住んでます。僕たちに居場所なんてない」
兵士さんは冷たい目をあたし達に向けた…ような気がした。
鼻までかかるほどの長い前髪で視線が分からない。
「君たち、名前は」
「ガンダ!」
「ランス」
「アレン!」
「ガンダ、ランス、アレン…随分と酷い目にあってきたようだな」
「分かるのか?」
「失礼な。そのボロボロの体を見れば容易に想像つく」
兵士さんはあたし達と目線を合わせるために腰を屈めた。
「この世界を変えたいか」
「え?」
「自分らと同じ思いをする人を減らすために、この世界と戦う覚悟があるかと聞いている」
あたし達3人は互いに目を合わせた。
そして、頷いた。
「「「うん!!!」」」
兵士さんは笑った。口角が少し上がったのが見えた。
そして胸ポケットから何やら紙のようなものを取り出し、三等分に切ってペンを走らせた。
「私の名が記されている。戻って港にいる私の仲間にこれを見せなさい」
そう言って紙をあたし達一人ひとりに渡した。
紙には『N』と記されていた。
「エヌ…?」
「ダンデリオンclass8エヌ。私の名だ。私はまだここで任務を任されている。悪いが3人で戦い抜いてくれ」
「ありがとう!エヌさん!」
エヌさんはあたし達に背を向けた。
そして一度振り返り、「武運を祈る」と言葉を残して行った。
去っていくエヌさんを見てあたし達は「かっこいい…!」声を漏らした。
来た道を戻りながら、あたし達は浮き足立ちながら話した。
「よかった。これでダンデリオンに保護してもらえる!」
「やったなランス!アレン!やっとここまで来れた!あとは戻ってこの紙を…!」
油断禁物という言葉は本当だと、次の瞬間あたしは思い知ることになる。
何かが足に引っかかり、あたしはグンッと勢いよく後ろに引っ張られ、気づけば宙に浮いていた。
「アレン!?!?」
「捕まえた!!お前たち、残りのガキ共をやれ!!」
「はっ!!」
しまった、義勇団だ。
あたしは仕掛け網に引っ掛かってしまったので。
こんなものが仕掛けられてたなんて。
「ガンダ!!ランス!!逃げて!!!!」
しかし、2人は義勇兵と渡り合い、逃げようとしなかった。
「アレンを返せ!!俺たちはこの国を出るんだ!!」
「このガキが!!」
だけどその抵抗が続くはずがなく、2人は地面に取り押さえられてしまった。
「このドブネズミ共め。どこでコソコソと生き延びてやがった」
「生命力は強そうですね。さっさと象の家に送ってやりましょう」
「クッソ…!」
すると、ランスは目の前に立つリーダー格の男の足首に噛み付いた。
「痛えええ!!」と男が悲鳴を上げたと同時に、ランスを取り押さえていた男がランスの怪我をしている足を殴った。
「あああああああ!!!」
「「ランス!!!」」
「コイツ…さっさとコイツらを連れてくぞ!!」
だめだ。
嫌だ。
やめて。
ガンダ。
ランス。
あたしのせいで。
あたしが足を引っ張ったから…!
この時、あたしのブレーキが壊れる音がした。
リミッターが外れ、もう自分で抑えきれないほど大きく膨れた。
あたしを中心に文字通り、大きく大きく渦が巻く。
「な、なんだあれは………!」
「渦巻き…?」
「アレン!!やめろ!!」
もう誰の声も聞こえなかった。
「2人を……離せぇぇぇえええええ!!!!!」
投稿予約をしたつもりが消えていました。なぜ。
慌てて投稿しました。お待たせして大変申し訳ないです。
※追記
この度1年程海外へ赴任するため、しばらく投稿をお休みさせていただきます。生活が落ち着き次第(もしくは帰国後)連載を再開させていただきます。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願い致します。




