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ブラッド・フラワー  作者: 御稲荷 薫
ジョワブル王国/ペティット村編
60/67

60 懸け

太陽さん、昇らないで。


大人たちが起きてしまうから。


夜もオチオチ眠れない。


最後に夢を見たのはいつだろう。


逃げて、隠れて、また逃げて。


今の日常に"休息"という言葉はなかった。


そのおかげと言ったら皮肉だが、前よりも強く心波を感じれるようになった。


前よりも遠くの人の心波を感じれるし、波動からその人の危険度も分かるようになった。


ほら、また向こうの路地裏から複数の心波を感じる。


(速い。こっちに向かってる。誰か追われてるんだ)


ひとまずいつものように物陰に隠れた。


1人になってから心が楽になったのは確かだった。


自分のことだけを考えればいい。

自分さえ助かれば…



「ランス!!こっちだ!けっぱれ!!(‼︎)」


(この声…!)


あたしは少しだけ身を乗り出して外を見た。


2人が目の前を通る時、その瞬間だけ時間がスローモーションのようにゆっくりと動いた気がした。


(ガンダ…!ランス…!)



「待てクソガキ共おおお!」


太い棒を持った大男が2人を追いかける。


今見間違いだろうか、ランスが足を引きずっているような気がした。


こんな事しなければいいのに、気付けばあたしは3人を追いかけていた。


3つ目の角を曲がると2人は行き止まりに追い詰められていた。


「やめろ!!!!」


あたしは飛びかかり、男の首に白夜を鞘ごと思い切り叩きつけた。


男は意識を失い、地面に倒れ込んだ。


「「アレン!?」」


名前を呼ばれ、あたしは2人に小さく手を振った。


「本当にアレンだ!また会えるなんて!」

「助かった、ありがとな!」

「ううん、2人がしてくれて事を返しただけだよ。それより…」


あたしは屈んでランスの足首を見た。

紫色に腫れ上がり、膿んでいた。


「ああこれ…傷口に雑菌が入っちゃったみたいで…」

「手当てしないと!」

「してぇんだが薬がねぇ。洗い流せるキレイな水さえも…(‼︎)」

「多分このまま放っておけば病気になる。だから僕のことはもう置いていってと言ってるのに」

「そんな事する訳ねぇだろ!!2人であと数日生き残れば、この国から出られるんだぞ!!」


今なら…できるかもしれない。


そう思った。


「ランス、その足を見せて」

「え、うん」


ランスの傷付いた足にあたしは両手を向けた。


何も起こらない。


2人はあたしが何をしているか不思議そうな顔をした。


あたしは何度も何度も念じた。


(い………けっ………!!)


すると、凄まじい勢いの水がランスの足に、そして2人に降りかかった。


「ご、ごめんっ!!まだコントロールの仕方分からなくってっ…!」


2人は口をあんぐりと開けて状況を理解していないようだった。


「なんか、花??と契約しちゃったみたいで、ちょっと前からこういう事できるようになっちゃって…。へ、変だよね、ごめんあたし…」

「す、スゲェ!!!」

「…へっ?」


2人は目をキラキラさせてあたしを見た。


「なんだそれカッケェ!!お前そんなスゲェ力隠してたのか!!」

「別に隠してたわけじゃ…」

「びっくりしたぁ…なんで、いきなり手から水が…」

「ごめんね、驚かせちゃって。でもあたしもよく分かってなくて…」


そう言うと、ランスは「ううん」と首を横に振った。


「ありがとう。さっきより痛みがマシになった気がするよ」


よかった…


あたしは胸を撫で下ろした。

3人でこうしてまた会えたのも、何かの縁なのかもしれない。


「生き残ろう、3人で」

「おう!」

「うん、3人で!」


あたし達は拳を合わせた。




それからさらに数日。ついにその日は訪れた。


払拭令の施行最終日だ。


今日、隣の国の護衛として、ダンデリオンがこの国にやって来る。


街はいつもより賑やかだった。


だからこそより注意を払わなきゃ。

今日までの努力が水の泡になる。


「お前ら!!」


外の様子を見に行っていたガンダが帰ってきた。


「良いニュースと悪いニュースを手に入れた。どっちから聞きたい?」

「じゃあ良いニュースから」

「今回の護衛、マスタークラスの奴が乗ってるらしい。助けを求めれば絶対助けてくれるはずだ」

「マスタークラスが!?」

「あぁ、街はその話で持ちきりだ」

「それは頼もしいね。で、悪いニュースは?」


ランスが聞くと、ガンダはあたしとランスの目を交互に見ながらゆっくりと話した。


「義勇団が銃を持ってこの街に来てる。万が一見つかったら…分かるな?(‼︎)」


あたし達は小さく頷いた。


「ここまで何とか逃げ延びれた。だけどそれは序章でしかないんだ。俺たちが今からすることは文字通り…命懸けの大脱出だ」

友情は狭く深くが1番だと思っています。

友達がいればいるほどいいと思ってたあの頃の自分に言ってあげたい。

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