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ブラッド・フラワー  作者: 御稲荷 薫
ジョワブル王国/ペティット村編
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59 新しい力

アリストは腰を抜かして倒れ込んだ。

あたしは左腕を掴んで何とか倒れないように耐えた。


(手の感覚はある。戻れ…戻れ…!)


幾度が念じると、液状化した手は一瞬にして元通りに戻った。


たった数秒の出来事だったが、あたしの頭の中はパニック状態だった。


それはアリストも同じだったが、あたしよりは幾分か冷静だった。


「ウミちゃん、それ、いつから…?」

「わ、分からない…なに、これ…」


さっきは気づかなかったけど、全身がずぶ濡れになっている。

でも服は濡れていない。体だけ濡れてるんだ。


「あたし、どうなっちゃったの?」

「落ち着いて。僕がシティ・パレスに帰って調べてみる。何か、思い当たることはない?」


あたしは一度深呼吸をして、今一度考えてみた。


体がおかしくなったのは…あの時から。


「…お腹が空いて、もうダメだって思った時に……綺麗な花に会ったの。その花があたしに話しかけてきた。そこからなんだか体がフワフワして…」

「花が話しかける?そんな馬鹿な…」


話していると、さっき通った馬車があたし達の側を通って帰っていった。


「まずい、もう戻らなきゃ」

「え、そんな…」

「君の身に何が起こったか、あっちでできる限り調べて君に伝達する。少し時間はかかると思うけど、必ず君に伝えるから」

「あたし……怖いよ」


これから何が起こるか分からない不安の上に自分自身がどうなったか分からないなんて。


怖くて潰れてしまいそうだ。


そんなあたしをアリストは優しくなだめてくれた。


「大丈夫、忘れないで。ウミちゃんにはぼくがついてる」

「アリスト……ありがとう」


アリストははにかんだ笑顔で「もう行くね」と言い、あたしの額にキスをした。


「絶対諦めちゃだめだよ!」

「う、うん…!」


そうしてアリストは帰っていった。


何だか顔が熱ってるのは、この暑さのせいだろうか。


「おい、そこんガキ(‼︎)」


慌てて振り返ると、頭にハチマキを巻いた男の人が立っていた。


「家は?」

「えっ」

「家族は?」

「………!」

「っ、おい!!逃げんな!!」


待ちやがれ!!と追ってくる男を振り切り、あたしはゴミ箱の裏に隠れて身を潜めた。


遠くから男とその仲間と思われる人の声が聞こえる。


「ダメだ、すばしっこい奴め」

「問答無用で捕まえんのが1番だろ。これから1ヶ月、家の子を外に一人で歩かせることは早々ねぇだろうし」

「だな。次は迷わねぇ。俺たちの生活のためだ」



(…あたしだって、捕まるわけにはいかないんだ)



絶対逃げ延びてやる。とにかく今は、アリストからの情報を待とう。



・・・・・



払拭令が発令されてから、シティ・セントロはまさに無法地帯のような有り様だった。


噂によると、旧アウトフォレスト群の後片付けが難航しているらしい。


少しでも国の玄関であるシティ・セントロを綺麗にするため、ゴミ(・・)は片付けなければいけないらしい。


本当に腐った話しだ。吐き気がする。


おかげで街で見かけるホームレスの数はここ最近で激減した。


ガンダとランスもあれから見ていない。無事だといいけど、2人の無事を確認する余裕などない。


この前アリストから手紙が届いた。


高貴な服を着た大きな犬が手紙を持ってあたしの元に来たのだ。


手紙にはこう書かれていた。


『親愛なるウミちゃんへ


本当は直接君の元に行きたかったけど、警備が厳重になって簡単には出られなくなった。


代わりに愛犬のハグワッシュに君の匂いを覚えさせてこの手紙を渡すことにした。


届いたらご褒美に背中に乗ってるリュックの中にあるおやつをあげてくれ』


ハグワッシュの背中のリュックを開けると、美味しそうなお肉の塊が出てきた。


おやつを与えると、美味しそうに頬張るハグワッシュを見て不意にお腹が鳴った。


そんなあたしを見て、ハグワッシュは鼻でおやつの一部をあたしに転がした。


「いいの?」

「ワフッ!」


あたしは言葉に甘えておやつをもらった。


最近はまともに食べ物を食べれてなかったから、犬のエサでも心の底から美味しく感じた。


「ありがとう」とハグワッシュを撫でると、嬉しそうに尻尾を振った。


あたしは手紙の続きを読んだ。


『君の身に起きたことを調べた。


おそらく、スター・カメリアの花の力だと考えられる。


スター・カメリアと花の契約をすると、人離れした超能力を手に入れることができるんだ。


その代わり、それ相応の代償を払わなければならない。花が話しかけたって言ってたね?どんな話をしたか覚えてるかな。


だけどこれは、大きな君の力になるとぼくは思う。


飲み水も困らないだろうし、使いこなせば盾にも矛にもなる。


とにかく君の無事を祈る。

どうかあと数週間、逃げ延びて』



手紙を読み終えると、ハグワッシュは軽やかに主人の元へ帰っていった。


あたしは自分の手を見つめた。


まだ使いこなせてないけど、あたしの意志で体は自由に水のようになる。


(この力があれば…いける。絶対に逃げてみせる…!)

先週言った本を購入しました。とても読みやすくて良い。


この執筆も私のペースでゆるく書いていければと思います。

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