51 今度生まれ変わったら
『今度生まれ変わったら』
そんな虫のいい話、あたしは信じない。
神も仏もありゃしない。
全て選択の積み重ね。
何を選び、何を捨てるかで道は決まる。
でも、もし、今目の前に神様がいて。
「生まれ変わってもいい」って言ってくれたなら。
あたしは…
なにが、起こったのか。
なにが、鳴り響いたのか。
なんで、リンさんが動かないのか。
それを考えるには、あまりな事態が一瞬すぎた。
カチッカチッ
「ッ…弾切れか……」
「お前っ!!!!」
おっちゃんはリンさんから村長を引き剥がし、馬乗りになってボコボコに殴った。
「リ………ンさん…………?」
動かない。
あたしの足も言うことを聞かない。
全身がガクガクと震える。
それでも必死に這いつくばってリンさんの元に寄った。
肩で軽く息をしている。
「リンさん………!ひっ……!?!?」
あたしはリンさんを仰向けにした。
元々刺されていた腹に銃弾が集中していて、
リンさんは口から血ヘドを吐き出した。
「リンさん…!しっかりして…!リンさん!!」
焦点が合ってない。
完全に生死を彷徨っている。
あたしはガックリと肩を落とした。
あたしのせいだ……リンさんがあたしを庇ったから……またあたしのせいで……
「‼︎」
あたしの手に温もりが加わる。
リンさんが、あたしを見ている。
「アレン…………っ………わりぃ…………(‼︎)」
あたしも慌ててその手を握り返す。
「謝らないでよ!!!あたしを庇って…!す、っ…すぐドクターを呼んでくるから。リンさんはここで…」
「よせ………もう…………っ……あたしはもう………」
「リンさんがそんなこと言わないで!!!まだ助かるって!!!」
「アレン!!」
おっちゃんが村長を置いてあたし達の元に駆けつけた。
リンさんの姿を見て唖然としている。
「おっちゃん、助けて…リンさんが…!」
「っ………!」
おっちゃんはゆっくりとリンさんの頭を抱え、楽な姿勢にしてあげた。
でもかろうじて息をしているだけで、目に映る灯火がいつ消えてもおかしくない状態だった。
「誰か…!誰かお医者さんはいませんか!!!リンさんを助けてください…神様でも仏様でもなんでもいいからっ…!!もうあたしの大切な人を遠くに行かせないでぇ!!!!」
情けない。
何もできない。
何も変わってない。
葛藤するあたしに、静かにリンさんは水を差した。
「……るせぇ………頭に響くだろうが…」
リンさんは左腰に付けている鞘を触った。
「"白夜"を……お前に預ける。大事に使えよ…折ったらぶっ飛ばすからな………」
「リンさんっ…」
んな悲しい顔すんなよ。
もうこっちは痛くも何ともねぇんだ。
ただただ、体が軽くなっていく。
言いたいことが、伝えたいことが、たくさんあるはずなのに。
上手い言葉も出てこねぇ。
ごめんな、アレン。お前にまた深い傷を負わせちまう。
何もしてやれなかった。
あたしなんかと出会わなければ
もっと裕福な家で、もっとうまいメシ食って、
もっと好きなもん買ってもらって、もっとちゃんとした教育を受けて、
もっといろんなとこ連れてってもらって、もっともっと…
幸せな道を歩けたかもしれない。
あたしなんかでごめん。
戦うことしか教えられないあたしでごめん。
でもさ、嬉しかったんだ。
お前がダンデリオンに入りたいって言ってくれたあの日。
お前ならなれるよ、なんにでも。
一緒にいたかった。幾千先でも。
カノン、今ならお前の気持ちがよく分かる気がするよ。
「ムーランさんに………会いに行け。絶対に……助けてくれる………」
「まってよっ……リンさんっ……!」
「一つだけ……聞かせてくれ……」
あたしはぼんやりと見える彼女の面影を見ながら言った。
「今度生まれ変わったらよ………お前の……母親になってもいいか……?」
少し間を開けて、「何言ってるの…」とアレンは答えた。
「リンさんは!!!あたしのお母さんだよ!!!!」
リンさんは笑った。
そして力強く、この世界から散った。
とても書きたくないお話しでした。
ありがとう、リン。
※追記
4/17更新予定のブラブラはお休みとさせていただきます。




