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ブラッド・フラワー  作者: 御稲荷 薫
ジョワブル王国/ペティット村編
50/67

50 化け物

(銃声…!?)


アレン達のいる方だ。


「おい、さっさとこの村から退け。あたし達の村から」

「それはできぬ相談です。ステラ元団長(・・)


さっき倒した部下から兵長と呼ばれたその男は言った。


「国王からの勅令なので。背けばどうなるか、あなたならよく分かっているはずだ」

「その王が気に食わなくてあたしは国を出たんだ」

「目を疑いますよ。そのあなたがこうして目の前に立っているなんて」


(アレン…わりぃ。耐えてくれ)


「うおおおおお!!!」

その2発の銃弾は、地面に撃ち込まれた。


けれどこんな直近で撃たれれば、一般の人は足が竦んでしまう。


「死」という文字が頭をよぎるからだ。


おっちゃんは膝から崩れ落ち、体をわなわなと震わせている。


村長はその様子を何とも思わない素振りで通ると、あたしの前で立ち止まった。


「どうして…どうやって抜け出したの?」

「見くびるな。仕込み武器くらい、用意して当然だろう?」


村長は腕時計の横にある小さなボタンを押すと、短いナイフが中から飛び出した。


意識を取り戻した後、あのナイフで縄を切ったんだ。


そしてもう一度、銃の焦点をあたしに合わせた。


(まずい、今何も武器が…!)


「私と来なさい」


低い声であたしに伝える。


「え?」

「お前は国王様への手土産にする。義勇団に入るのだ。その心波とやらを生まれつき使えるやつを私は見たことがない。王もさぞかしお喜びになるだろう」

「…嫌だ。そんなこと…!」

「その代わり」


村長は持っている銃を地面に置き、こう言った。


「この村の命は保証しよう(‼︎)」


心臓が一回、ドクンと大きな音を立てた。


「今すぐ侵攻を止めさせる。今後この村に一切手出しできぬよう遣わそう」

「ここまで村をぐちゃぐちゃにしといて何を!」

「こんなちっぽけな村一つくらい、あっても無くても同じなのだ。お前の価値とこの村の価値。比べれば誰でもお前を取るだろう」


(これは嘘?それとも本当…?)


分からない。


この人は平気で嘘をつける人だ。


でももし本当なら、この村を救える。


これ以上無駄な血を流さずに済む…


「何を迷う。あの時は匿ってやったが…本来いるべき場所に戻るだけのことだろう?」

「…リンさんは?」


村長の片眉がピクリと動く。


「リンさんの命は?保証してくれるの?」

「駄目だ。奴の命は奪う」

「じゃあその提案には乗れない」


あたしはゆっくりと立ち上がった。


「リンさんだってこの村の住民。保証して当然でしょ」


村長の目をひたと見据える。

村長は長い顎髭を2度摩り、少しして返事をした。


「…仕方あるまい。良かろう。リンの命も保証するとしよう」

「…約束してよ」

「花に誓って約束しよう」


そう言うと、村長は右手の指を全て合わせ、お辞儀をしながら胸の前で手首を半回転させ、ゆっくりとその指を開いた。


何のことかとその仕草を見ていると、「おや、知らぬか」ともう一度同じポーズをした。


「"花の敬礼"。蕾が花咲く様子を表し、相手に敬意を払う時に使う。本来外民に使うものではないのだぞ」


…ということは、村長はあたしに敬意を払った。


貴族として(・・・・・)、敬意を払った。



(ごめん、リンさん)


村長の元に歩み出そうとした…その時。



「アレーーーーーーーーーン!!!!!!(⁉︎)」



勢いよくあたしの体に飛びつき、剣先を村長に向けた。


それを見た村長も地面に置いた銃を拾い、リンさんに向ける。


「リンさんっ!?」

「アレン!大丈夫か!!」


あたしに一喝すると、今度は村長に向かって怒りを込めて言う。


「野暮なこと吹き込むんじゃねぇよ…バケモンが」

「思った以上に早く来たな。現役の兵長を呆気なく倒すとは、お前も十分化け物だな」


二人が睨み合う。


「リンさん!あたしが義勇団に入れば、この村を助けてくれるんだって」

「…は?」

「リンさんの命も狙わないって!だからもう戦わなくていいんだよ!あたしが…」



パンッッ…!



気づいた時には、あたしの頬はヒリヒリと痛んでいた。


痛い。


「そんなこと!!あたしが許すわけねぇだろ!!!」


リンさんが涙目になってる。あのリンさんが。


「悪いけど、あたしにとって、世界で一番大切なものはアレン、お前だ!!離れるなよ!!お前から遠ざかってどうすんだよ!!!(‼︎)」


チッ、と向こうから短い舌打ちをする音が聞こえる。


「余計なことを口走るな…母親もどきがっ!!」

「やめろ!!」


シトラトスの後ろを、恐怖から立ち上がったおっちゃんが取り押さえた。


それを見て、あたしもおっちゃんの元に駆け寄り、正面から地面に押さえつけた。


アレンは動揺で動けないようだった。


「離っせ……!」


必死にその手から銃を奪おうとした。


だけどシトラトスは、その人差し指を引き金から離すことはなかった。


その銃口の先には


「クッソがああああ!!!」


だめだ、間に合わない。


あたしは後先考えず、


全身を使ってその銃に覆い被さった。

どれだけ平和を願い続けても

守りたいものがある限り

どちらかが潰えるまで争いは終わらない。

つまり争いがこの世界から無くなることは

決してないのかもしれない。

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