48 あなたの傍に
武器を取れ。命を懸けろ。
そう言われてすぐに「イエス」と答えるのは馬鹿か、命知らずのどちらかだろう。
案の定この場はどよめき、不安の声があがる。
「そんな…相手は日頃から訓練を受けてる兵士だぞ?」
「武器を持ったことすらない俺たちが敵うはずが…」
「俺たちはもう…お終いだ」
次々とこぼれる弱音に、リンさんは腹を立てるだろう……と思った。
だけど、リンさんが言ったのは真逆の言葉だった。
「分かった。あたしが義勇団を喰い止める。その間にみんな逃げてくれ(‼︎)」
「ひとりで…か?」誰かが呟く。
「あたしは元軍人だ。あたしが一番強いし、戦闘経験もたくさん積んできた」
そして、はにかんだ笑顔と共に言葉を添えた。
「みんなにはたくさん迷惑かけたんだ。最後くらい…恩返しさせてくれよ」
「リン……」
間違いなくこれは正論だろうが、みんなの心は確かに揺らいだ。
村を守りたい。でも恐い。武器もまともに持ったことがない自分達がどうやって。
「私は行くぞ」
そんな空気を制したのは、おっちゃんだった。
「何ボヤッとしてるんだ!自分たちの村を自分たちで守らないでどうする!?リンに任せてしっぽ巻いて逃げるなんて、私は御免だ!!(‼︎)」
この言葉で、全員の覚悟は決まったようだった。
男の人だけでなく、船に乗っていた女の人まで降り始めたのだ。
「女性陣はここで待機し船を死守!いざとなったら子供たちと共に島を出よ!男性諸君は近くの家から武器となるものを集めつつ、義勇団を迎え討つ!」
「うおおおお!!!」
「おっちゃん…みんな……!」
おっちゃんは涙ぐむリンさんの方を見て、優しく笑った。
「リン、後の指揮は任せていいか?」
「っ……おう!!」
リンさんは男性およそ40人を2〜3人の小隊に分け、動きを確認した。
「兵士をなるべく孤立させるんだ。やり方はさっき教えた通り。なるべく無用な血は流すな。いいな?」
「了解!!!」
みんなは村を守るべく歩き始めた。
先頭に行くべく、早足をしようとするリンさんをあたしは呼び止めた。
「リンさん!あたしも行く!」
リンさんは足を止めて振り返る。
「ダメだ。お前には別の任務はここ残るみんなを守ることだ」
「あたしも戦う!!一緒に連れてって!!」
「おい、聞いてなかったか?お前がいなきゃここは誰が守んだ?」
冷静になれ、とリンさんに咎められる。
頭では分かってるんだ。ここに待機する人がいるべきだって。
でもそれは何だか…リンさんがあたしを遠ざけようとしてるみたいで。
あたしは俯き、リンさんの袖を握った。
「…離れたくない。行かないで(‼︎)」
普段と似つかない掠れた声に金槌で殴られたような感覚が走った。
あぁ、多分この子は前も同じような経験をしたんだろう。
離れたくない人と離れてしまった。
強制的に、望まない方法で。
だからこんなに震えてる。
だからこんなに懇願してる。
(でも…!)
アレンを戦場に行かせたくない。
こいつはまだガキだぞ?万が一のことでもあれば…
「ダメだ」
あたしはもう一度強く言った。
「お前はここで、待機だ」
あたしはアレンを軽く突き放し、背を向けた。
あたしを追いかけようとするアレンを、周りの人たちが必死に止めた。
「アレンちゃん、ここで待とう」
「あなたはまだ子供なの。こういう事は大人に任せなさい」
そうだ。あたし達に任せろ。
お前が出る幕なんてないんだ。
「リンさんっ!!!!」
振り返るな。アレンのためだ。
帰ったらまた2人でシチューでも食って、大した事なかったと笑い飛ばそう…
「もう、一人は嫌なの!!!!」
止まるな……
「お願いリンさん!!一緒にいさせて!!!(‼︎)」
"孤独"
頭にパッと浮かんだ2文字。
その言葉の重みを、辛さを、それがこの子にとってどれほど恐いことか、あたしはよく知っている。
あたしがいなくなれば、アレンは一人になる。
「アレンちゃん、リンの気持ちを分かってあげて」
「リンはあなたに傷ついてほしくないだけの」
(クッソ………!!)
「アレンを……離してやってくれ」
「リン!?」
リンさんはきびすを返し、あたしの手を取った。
「リン…さん……」
「お前の実力はあたしが1番知っている。それを加味した上で…戦場に行くことを許可する」
「リン!!いくらなんでもダメよ!」
「そうよ!!アレンを死にに行かせるようなもんだわ!!」
反対する周りの人たちを、リンさんは一喝した。
「死なせない!!アレンは絶対、あたしが死なせない!!!」
だから、とリンさんは言った。
「あたしの側にいろ(‼︎)」
嬉しくて、嬉しくて、あたしは涙が止まらなかった。
類は友を呼ぶって本当だと思うんですよね。
でも生涯付き合うであろう友は
意外と真反対の性格の持ち主だったりするから
人生は面白い。




