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ブラッド・フラワー  作者: 御稲荷 薫
ジョワブル王国/ペティット村編
48/67

48 あなたの傍に

武器を取れ。命を懸けろ。


そう言われてすぐに「イエス」と答えるのは馬鹿か、命知らずのどちらかだろう。


案の定この場はどよめき、不安の声があがる。


「そんな…相手は日頃から訓練を受けてる兵士だぞ?」

「武器を持ったことすらない俺たちが敵うはずが…」

「俺たちはもう…お終いだ」


次々とこぼれる弱音に、リンさんは腹を立てるだろう……と思った。


だけど、リンさんが言ったのは真逆の言葉だった。


「分かった。あたしが義勇団を喰い止める。その間にみんな逃げてくれ(‼︎)」


「ひとりで…か?」誰かが呟く。


「あたしは元軍人だ。あたしが一番強いし、戦闘経験もたくさん積んできた」


そして、はにかんだ笑顔と共に言葉を添えた。


「みんなにはたくさん迷惑かけたんだ。最後くらい…恩返しさせてくれよ」

「リン……」


間違いなくこれは正論だろうが、みんなの心は確かに揺らいだ。


村を守りたい。でも恐い。武器もまともに持ったことがない自分達がどうやって。



「私は行くぞ」



そんな空気を制したのは、おっちゃんだった。


「何ボヤッとしてるんだ!自分たちの村を自分たちで守らないでどうする!?リンに任せてしっぽ巻いて逃げるなんて、私は御免だ!!(‼︎)」


この言葉で、全員の覚悟は決まったようだった。


男の人だけでなく、船に乗っていた女の人まで降り始めたのだ。


「女性陣はここで待機し船を死守!いざとなったら子供たちと共に島を出よ!男性諸君は近くの家から武器となるものを集めつつ、義勇団を迎え討つ!」

「うおおおお!!!」

「おっちゃん…みんな……!」


おっちゃんは涙ぐむリンさんの方を見て、優しく笑った。


「リン、後の指揮は任せていいか?」

「っ……おう!!」


リンさんは男性およそ40人を2〜3人の小隊に分け、動きを確認した。


「兵士をなるべく孤立させるんだ。やり方はさっき教えた通り。なるべく無用な血は流すな。いいな?」

「了解!!!」


みんなは村を守るべく歩き始めた。


先頭に行くべく、早足をしようとするリンさんをあたしは呼び止めた。


「リンさん!あたしも行く!」


リンさんは足を止めて振り返る。


「ダメだ。お前には別の任務はここ残るみんなを守ることだ」

「あたしも戦う!!一緒に連れてって!!」

「おい、聞いてなかったか?お前がいなきゃここは誰が守んだ?」


冷静になれ、とリンさんに咎められる。


頭では分かってるんだ。ここに待機する人がいるべきだって。


でもそれは何だか…リンさんがあたしを遠ざけようとしてるみたいで。


あたしは俯き、リンさんの袖を握った。



「…離れたくない。行かないで(‼︎)」



普段と似つかない掠れた声に金槌で殴られたような感覚が走った。


あぁ、多分この子は前も同じような経験をしたんだろう。


離れたくない人と離れてしまった。


強制的に、望まない方法で。


だからこんなに震えてる。


だからこんなに懇願してる。


(でも…!)


アレンを戦場に行かせたくない。


こいつはまだガキだぞ?万が一のことでもあれば…


「ダメだ」


あたしはもう一度強く言った。


「お前はここで、待機だ」


あたしはアレンを軽く突き放し、背を向けた。


あたしを追いかけようとするアレンを、周りの人たちが必死に止めた。


「アレンちゃん、ここで待とう」

「あなたはまだ子供なの。こういう事は大人に任せなさい」


そうだ。あたし達に任せろ。

お前が出る幕なんてないんだ。


「リンさんっ!!!!」


振り返るな。アレンのためだ。


帰ったらまた2人でシチューでも食って、大した事なかったと笑い飛ばそう…



「もう、一人は嫌なの!!!!」



止まるな……



「お願いリンさん!!一緒にいさせて!!!(‼︎)」



"孤独"



頭にパッと浮かんだ2文字。


その言葉の重みを、辛さを、それがこの子にとってどれほど恐いことか、あたしはよく知っている。


あたしがいなくなれば、アレンは一人になる。


「アレンちゃん、リンの気持ちを分かってあげて」

「リンはあなたに傷ついてほしくないだけの」



(クッソ………!!)



「アレンを……離してやってくれ」

「リン!?」


リンさんはきびすを返し、あたしの手を取った。


「リン…さん……」

「お前の実力はあたしが1番知っている。それを加味した上で…戦場に行くことを許可する」

「リン!!いくらなんでもダメよ!」

「そうよ!!アレンを死にに行かせるようなもんだわ!!」


反対する周りの人たちを、リンさんは一喝した。



「死なせない!!アレンは絶対、あたしが死なせない!!!」



だから、とリンさんは言った。



「あたしの側にいろ(‼︎)」



嬉しくて、嬉しくて、あたしは涙が止まらなかった。

類は友を呼ぶって本当だと思うんですよね。

でも生涯付き合うであろう友は

意外と真反対の性格の持ち主だったりするから

人生は面白い。

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