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ブラッド・フラワー  作者: 御稲荷 薫
ジョワブル王国/ペティット村編
47/67

47 戦いの鐘

ぼくは今、馬車の中にいる。どうしてここにいるかは、ぼくもよく分かっていない。


「お母様、18時の約束を待たずに出発して本当によかったの?」

「国王さまの命令ザマス。さっきも同じことを聞いたでしょう?国王様の命令ザマス。何度も答えさせないでちょーだい」


ぼくは後ろを振り返った。村が異常に明るい光に包まれてるのが見える。


「誰か、別れの挨拶をしたい者でもいたか?(‼︎)」


今度は、お父様が口を挟んだ。


「い、いえ。ただ、向こう側がの空は明るいなと…思いまして」

「我々がいなくなって喜んでいるのだろう。お祭り騒ぎってやつだ」


ぼくがこの言葉を信じてない事は、火を見る事より明らかだったのだろう。


お父様は釘を刺すように言った。


「アリスト。国王様の意志を疑うなど言語道断だぞ」

「疑ってない!ただぼくは…」


ぼくの声を遮るように、お父様は馬車の中が充満しそうな程大きなため息を漏らした。


「アリスト…頼むからシティ・パレスでは私たちが望むような子になってくれよ?」

「そーよアリスト。あなたはお父様とお母様の子なんだから。アタクシ達を幸せにすることがあなたの務め。そしてそれは、あなた自身の幸せになの」


今やこの言葉たちは恐怖に聞こえる。


リンがぼくの目を覚ましてくれたおかげで、やっと自分の立場が分かるようになったから。


「はい。お父様、お母様」


ごめん、アレン。ぼく、帰るね。


どうか、無事でいて。

「リン。お前は命を絶つよう王に遣わされてるんだ。悪いがここで大人しく倒れてくれ…」


村長はまるで亡霊に取り憑かれているようだった。

オドロオドロと重い足取りでリンさんに近づく。


「それはそれはいくら偉大なるフレイユ様(・・・・)のご要望でもできぬご相談ですなぁ?」


威勢は見せたものの、次の瞬間リンさんは崩れるように倒れ込んでしまった。


「リンさん!!」

「いいのかアレン…このままだとあたしはまたこいつに刺されっぞ?わりぃが貧血でこっちはまともに動けねぇ」

「で、でも…」


どう止める?村長は本気でリンさんにトドメを刺すつもりだ。


でも村長に攻撃するなんて…あたしには…


そうこうしている間に村長はリンさんの目の前に立った。


「齢8の女児に鬼の選択をさせるな。いきなり他人に刃を向けるなど出来るわけなかろう」

「てめぇの口が言うな。誰にだって戦わなきゃいけないその時(・・・)は来る…!」


そう言ってリンさんは白夜をブーメランのようにあたしに投げた。


あたしのすぐ傍らに白夜が落ちる。


「何のために教えを請いた!!何のために強くなった!!」


痛そうに腹部を押さえながらリンさんは叫んだ。


「てめぇの守りたいもんは!!てめぇで守りやがれ!!(‼︎)」


頭の中でリンさんの言葉を復唱する。



(あたしの…守りたいもの…!)



「うおぉぉぉぉおおおお!!!」



あたしは白夜を片手に走り出した。


両足に力を込め、高く高くジャンプする。


背後に迫ったあたしに村長は目を見開き、体を庇うように両手を前に出した。


あたしは思い切り刀を振りかぶり、全身全霊で振り降ろす……直前に全身の力を抜いて、優しく首の後ろに刀を当てた。


「カッ……!」


不意をつかれた村長は、崩れるように地面に倒れ込んだ。


その様子を見て、リンさんは「ハッ…」と短く呆れた声を発す。


「完璧かよ」

「だ、大丈夫かな?実践したのは初めてだったから…」

「あぁ。一時的に意識失ってるだけだ」


脈を確認しながらリンさんは言った。


この技は、リンさんから教えてもらった技だ。


一回限りの騙し討ち。


まさか最初に使う人が村長とは思わなかったけど。


とにかくっ、とリンさんは村長の腕を肩に回し、抱えた。


手を貸そうかと思ったけど、返ってリンさんが痛がると思ってやめておいた。


「一回家に戻ろう。手当てをしたい」

「リンさん、貧血は?」

「なかなかの名演技だったろ?」


そう言ってリンさんはあたしにウィンクした。


あたし達は丘の上の家に戻った。

そこから見た村の様子に、あたしは絶句した。


「嘘……」


燃えている。家が、森が、村が。


「ぼやっとしてる暇はねぇぞ。こいつを家の柱に縛ってくれ」

「リンさん。村のみんなは?無事なの?」

「それを今からっ、確かめに行くんだろ…!」


リンさんは医療キットを取り出して、自分の体に包帯を巻き始めた。


「終わり次第すぐ出動する。いいな?」

「了解…!」




ーーーーー




「海へ!!漁船に乗って海へ逃げて!!」

「荷物は全部捨てろー!!ここにいても誰も助からねぇ!!海へー!!」


あたしとリンさんは村へ降りて村の人たちの避難誘導を行なった。


リンさんは誰よりも大きな声で皆に道を示した。

お腹の傷に障るだろうに、声を挙げることを止めなかった。


「アレン、ここも危ない。あたし達も戻るぞ!」

「うん!」


あたし達が向かった頃には海岸は人で溢れていた。


「女と子供を優先して乗せろ!急げ!!ケガ人はドクターの元へ!」


海岸ではおっちゃんを中心にあたしが用意した漁船に人を乗せていた。

おっしゃんはあたし達に気づくと、声をかけてくれた。


「リン、どうしたその腹の傷は」

「あーちょっとな。大したことねぇから」

「大したもんだろ!ドクターに診てもらいなさい」

「リンさん!!」


顔を真っ青にしてこちらに来たのは、村長の秘書のコンジュさんだった。


「すみません、村長をお見かけしませんでしたか!?連絡が一切取れなくてっ…!」

「…ごめん、村長は見かけなかった」

「そんな…!」


コンジュさんは肩を大きく落とし、静かに涙を落とした。


心波からして、コンジュさんは本当に村長のことを心配しているように思えた。


村長の裏切りについても多分、知らないんだろう。

でも知らない方が、コンジュさんのためだとあたしも思った。


「どうして…誰がこんなことを…!」


「お父さん!!お父さんも一緒じゃなきゃ嫌だ!!」


「一時的に避難するだけだ!心配ない。早く乗るんだ!」


あちらこちらから悲鳴の声が聞こえる。

一人ひとりの心波が乱れすぎていて、頭が痛い。


「リン、アレン。悪いが前言撤回だ。2人とも早く船に乗りなさい。きっと優先して乗せてくれる」


おっちゃんが再びあたし達に声をかけた…その時だった。


「大変だー!!義勇団が…義勇団が攻めてきたぞー!!(⁉︎)」


その言葉で、ここにいる全員に戦慄が走った。


「義勇団が?なぜ!?」


チッとリンさんは舌打ちをした。


「本気であたし達を消しに来たか…」

「消す?どういうことだ、リン」

「なに、今に始まったことじゃねぇだろ?義勇団は掃き溜めを掃除に来ただけだ」

「じゃあ…私たちが我慢したこの1ヶ月は…?無駄だったのか…?」


この質問に、リンさんは答えなかった。

言わなくても答えは既に出てるからだ。


「で?今ここに向かってる義勇団は何人いた?」

「ご…50人くらいだったと思う」


リンさんは頷いて、拳を高く上げた。


「村を救いたければ武器を取れ!!それがあたし達に残された道だ!!」

ブラブラ1周年です!

これからも応援よろしくお願いします!

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