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ブラッド・フラワー  作者: 御稲荷 薫
ジョワブル王国/ペティット村編
42/67

42 抱擁

「…」


視界がぼんやりと開ける。


霞んだ世界。その中であたしの名前を必死に呼ぶ声が一つ。


「リン…さん」

「アレン!!!」


意識を取り戻した瞬間、あたしは狂ったようにむせ返した。


まるで、今まで息していなかった分を取り戻すように。


リンさんはあたしの背中をさすり、時々ポンポンと叩いてくれた。


「はい、深呼吸ー」


あたしはゆっくりと息を吸った。


「平気か?」

「うん…ありがとう」


あたしは家の中にいた。リンさんの布団の中だ。


そして家の中にいるのはあたしだけじゃなかった。


彼は少し居づらそうな顔をすると、片手を上げてあたしに挨拶をする。


「や、やぁ。ウミ…ちゃん」

「アリスト!?…ゲホッゲホッ!!」


びっくりし過ぎてまたむせ返した。


「何でアリストが家に!?」

「まぁ、聞けよ」


リンさんが家に帰る途中、無呼吸状態(・・・・・)で走っていたあたしに会った。


そして目が合った瞬間、あたしは意識を失うように倒れたそうだ。


リンさんが急いで応急処置をしている時、あたしの後を追いかけて来たアリストが現場に居合わせた。


「最初やべぇって思ったんだ。お前らの関係性も知らなかったし。でもこいつが」


ーーー


『ぼくに…何か手伝えることありませんか!?』


ーーー


「って、今までお前の看病してくれたんだぜ(‼︎)」


アリストの顔を見ると、彼は少し恥ずかし気に目を逸らした。


「君が急に走り出すから。ぼく、何か気に触ること言っちゃったかなって。そしたらこの……リン…が君の保護者だって言うから」


そうだ…!


「リンさん、あたしに隠してることあるでしょ」

「隠してたのはお互い様だろ?」


そう言ってリンさんは座り直してあぐらの姿勢になる。


「お前らのことはこいつから大体聞いた。だからあたしが隠してたことを今腹割って話す」


リンさんは全て話してくれた。


1週間程前から、オルキーダ・ブルメンからの依頼(・・)でブルメン家の任が終えるまで"なんでも屋"として働いていること。


リンさんの意地で依頼料はもらってないこと。


そして


「あたしの素性がバレてた。泳がされてたんだ、ずっと(⁉︎)」


あいつらもバカじゃなかったってことだな!とリンさんは笑う。


「まぁなんとなく気づいてたけどな。こいつのオヤジが家に来て、母親に仕事を依頼されて、確信に変わった」


あたしはギュッと布団を握りしめた。


悔しかった。

リンさんはずっと、大嫌いな貴族のとこに一人で…


するとリンさんはポン、とあたしの頭に手を置く。


「その事をあたしに伝えに行こうとしてくれたんだろ?こんなに必死に。ありがとうな」

「っ……ごめん、あたし、リンさんが辛いの全然気づけなかった」

「辛くなんてなかった!家にお前がいるって、そう思うだけで疲れもぜーんぶ吹っ飛ぶんだ(‼︎)」


(そんな事言わないでよ…)


涙を堪えるあたしを見兼ねてか、リンさんはあたしをギュッと包み込む。


「隠してて悪かった。これで許せ」耳元でそう呟きながら。


「……すごい」


一連の流れを見ていたアリストの口から、言葉が溢れた。


「ぼくは一度も、抱きしめてもらったことがない」


そう言って、自分を両手で包み込む。


「…だろうな」

「…どういうこと、リンさん」


リンさんはアリストのところに移動すると、シャツの裾を持った。


「めくっていいか(⁉︎)」


リンさんがそう聞くと、アリストは目を逸らして微かに体を震わせた。


リンさんがゆっくりとシャツを捲ると、彼の体に露わになったのは。


「えっ……」


真っ青になった横腹。皮膚が変色していた。


リンさんはシャツを元に戻し、「アリスト、お前、あのババアに何されてる」と聞いた。


「何もされてないよ」

「じゃあこの痣はなんだ」

「ぼくが悪いことをしたから。お母様はぼくのために正しいことを教えてくれるんだ。ぼくのお母様は世界一優しいんだ」

「ウソつかないでよ!!(‼︎)」


あたしは耐えられず叫んだ。


「そんな痛い思いして、どうしてそこまでお母さんを庇うの?」

「言ったでしょ、これは僕が悪いんだ」

「でも…」

「これ以上お母さんを悪く言うな!!!(‼︎)」


今まで聞いた中で1番大きな声で彼は叫んだが、その後すぐ「ごめん」と謝った。


「もう帰らないと。ウミちゃんが元気になってよかった」

「アリスト…」

「また明日、来てもいい?」


あたしは少し間を置き、首を縦に振った。


「ありがとう」


そうして、張り付いたような笑顔と共にアリストは帰っていった。


その後ろ姿を見ながら、タバコを咥えたリンさんがあたしに聞く。


「いいのか?あいつ、今日のこと全部母ちゃんに話すかもしれねぇぞ」

「話さないよ、アリストは。リンさんだってそう思うでしょ?」


リンさんはフゥーーと煙を吐き、「まぁな」と答えた。


「それより問題は山積みだ」

「そうだよ。リンさんのことがバレちゃってる」

「あぁ、おかげで重要な疑問が浮かんだ。国の大戦犯がここにいると知っておきながら手を出さねぇ余裕はどこにあるのか。あたしが逃げ出さない確証があるのか、あるいは…あたしを捕まえる必要がなくなったのか(⁉︎)」

「それってどういう…」

「そもそもなぜ今になって貴族共が動き出したのか…ハハッ、面白くなってきたな」


ジュッとタバコを地面に擦りつけ、覚悟を決めるように言い放つ。


「暴いてやんさ…あいつらの陰謀!!」

何もかも一旦捨てて、さすらいの旅に出たい今日この頃。

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