39 引き合い
「チクったって…誰が?」
「さぁ?あたしのことをよく思ってないやつなんてごまんといるからな」
リンさんはケロッとしていたが、あたしは不安で仕方なかった。
リンさんの存在がバレた。
いつリンさんの正体に気づかれてもおかしくない状況になってしまった。
そんなあたしを他所に、リンさんは大きく伸びをした。
「よーーーし!これであたしがこの家に1日籠る必要がなくなったわけだ!気分転換に村長に会いに行くか」
「待ってリンさん。それでも村にあんま降りない方がいいよ!」
そう言うと、リンさんは人差し指を立てながらあたしに顔を近づけた。
「逆だ、アレン。もうあたしの存在は割れたんだ。いつも通り生活してねぇ方が怪しまれる」
「…リンさんってそういうとこで頭の回転速いよね」
「おめぇも余計な一言を言う脳だけはよく働くよな?」
っていうのはどーでもよくて!とリンさんは話を元に戻す。
「真剣な話。アレン、お前犯人探しとか野暮なことすんなよ」
「え、なんで!」
「する意味がねぇからだ。見つけたところでどうする?村を追放するか?」
「でも、リンさんを守れるかもしれない!」
そう言うと、リンさんはあたしの頬をつねった。
「おめぇに体術剣術教えてんのは誰だ!言ってみろ!」
「あいだだたたたっ!!ごめんなさいリンさんです!!犯人探しはしませぇぇいだだっっ!!」
「よし、よくできました」
つねられた頬を両手で優しく包む。
ほんとにこの人の辞書に手加減という言葉ない。
「んなことより、てめぇの心配してろ。お前は一回でも見つかったらアウトなんだからな!」
「分かってるよ。リンさんが村に降りてくれるなら、あたしは基本的にお家にいれるから大丈夫」
「本当に大丈夫なのか?同じとこにじっとしてられっか?」
「あたしはリンさんじゃないから全然平気だよーん。家事は基本的にやるし、新聞も本もあるし、庭で自主練もできる!意外と暇じゃないよ」
言われてみればそうか、とリンさんも納得した。
「でもここも100%安全とは言えなくなった。常に心波で近くに人がいるかどうか探れ。そうすりゃ基本的に大丈夫だろ」
「わかった」
よしっ、とリンさんはあたしの前に手を差し出した。
「乗り越えるぞ、この1ヶ月」
「うん、頑張ろ!!」
あたしはその手を取り、強く握り返した。
・・・・・
(とは言ったものの…やっぱ暇だなーー)
裏庭で素振りをしながら頭の中でぼやく。
貴族が来てから1週間と4日。
あたしが村に行かなくなってから1週間と2日が経った。
やることはたくさんある。
だけどやることがいつも同じで飽き飽きしてる。
朝起きて、ご飯を食べて、新聞を読んで、自主練をして、掃除して、また自主練して。
本を読み終えるとリンさんに毎回違う本を図書館から借りてきてもらってる。
そんなリンさんは、貴族の脅威から村の人たちを守るためにいろいろ奮闘してるらしい。
詳しいことは教えてくれないし、あたしの前ではへっちゃらそうにしてるけど、疲れているのは見え見えだ。
「997…998…999……1000っ!!…ハァ…ハァ…」
1日ってなんで24時間もあるんだろう。
海の音に耳を傾ける。
そういえばこの国に漂着したあの日から海行ったことがない。
まぁ、その時の記憶もほぼないんだけど。
「海、行ってみようかな」
海は嫌いだ。
海はあたしとカノンさんを引き離したものだから。
だけどあたしとリンさんを引き合わせたものでもある。
だから嫌いっていうよりは、怖いのかもしれない。
なんでそんな海に今惹かれたのか。
「うわー!ぼく海って初めて見たー!(⁉︎)」
一瞬で空気が凍てつく。
「あれ、君、ここの村の人?」
全身から血の気が引く。
心臓の音だけが耳の中で鳴り響く。
「ぼく貴族のアリスタ!君かわいいねぇ…結婚しよ!(⁉︎)」
明けましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします!




