31 青いハンコ
青く光るハンコを見つけるために、あたし達は手分けして探すことにした。
あたしが一階、リンさんは二階だ。
探し始めてから随分と時間が経った。
いくつかハンコも見つけたけど、おじいさんは「違う」と首を横に振るばかりだった。
「渋い青を放つハンコじゃ。苦労をかけてすまんのぉ」
「全然平気!もうちょっと待っててね!」
とは言ったものの、すでに心は折れかけてた。
(あたし、一生この家でハンコを探す人生送るのかな…)
そう思った時、「アレーン!」と2階からリンさんが降りて来た。
「どうだ調子は」
「散々だよ。見つかる気がしない」
「同じくだ。ちょっと休憩すっか!」
「うん!」
すると、タイミング良く書斎からおじいさんが降りて来た。
お盆にお茶をを乗せている。
「お二人さん、そろそろ休まれてはいかがかな」
「おっちゃん!気ぃ遣わなくていいのに!」
「いいんじゃいいんじゃ。せめてもの気持ちじゃ」
「…じゃあ、ありがたく頂くぞ、アレン 」
「うん!」
あたし達は縁側に腰をかけて、もらったお茶を啜った。
正直あたしには少し苦かったけど、無駄にするわけにはいかないと思って頑張ってちびいび飲んだ。
「あのハンコは…亡き妻が遺した宝物なんじゃ」
おじいさんが話し始める。
「妻は2年前に死別した。じゃが夢にはよく現れるんじゃよ。いつも何かを探しておる。それがずっと分からなかった。じゃがふと、思い出したんじゃよ。彼女がずっと大切にしていた青いハンコのことを」
おじいさんは空を見ながら続きを話す。
「じゃが、彼女がどこにそれを仕舞っているのかをわしは知らなかった。心当たりのある場所は見てみたのじゃが、こんな老体になってしまっては長い時間探すこともできなくてね…そしたら、君たちがいたという訳さ」
「そうだったのか…」
「じゃがのぉ…お二人さんがこんなに探しても見つからないんじゃ。残念じゃが、今日はここまでで依頼料を…」
リンさんがポンッと、おじいさんの膝に手を乗せる。
「大丈夫だじいさん。心配すんな!今日中に絶対見つけるから」
「しかし…」
「あたし達は何でも屋さんだよ!最後まで頼ってよ!」
あたしもリンさんの後に続けて言った。
するとおじいさんはニッコリと笑って「では…もう少しお願いしようかのぉ」と言ってくれた。
リンさんもゴクゴクとお茶を飲み干し、「じいさん!ご馳走さま!」と茶托に返した。
「さ!アレン 、お仕事再開だ!」
「うん!」
あたし達はヨイショと腰を持ち上げた。
その時、ふと思い立った。
「ねぇ、おじいさん。その青いハンコって、お婆さんにとってすっごく大切なものなんだよね?」
「あぁ」
「だとしたら、簡単に見つかる場所には置いてなかったと思うんだよね。だって、おじいさんも仕舞っている場所を知らないくらい大事にしてたんだもん」
「確かにそうだな。そんなもん泥棒でもされたらたまっもんじゃねぇしな」
すると、おじいさんはハッと目を見開いた。
「そうじゃ…!」
「なんか思い出したか?じいさん」
「もうずっと行っていない…離れがあるんじゃ。村の奥の方にある離れが」
「めちゃめちゃ怪しいじゃねぇか!」
「場所を教える。そこに行ってみてはもらえないか?」
「もちろん!すぐに行こう!」
・・・・・
あたし達はおじいさんに離れの場所を教えてもらった。
それはおじいさんの家から十数分歩いたところに、ひっそりと建っていた。
リンさんがドアノブに手をかけると、重い音と共に扉が開いた。
「ゴホッゴホッ!!うへっ、ほこりやっば!」
「2年でこんなに汚くなるの……?」
「そりゃ、こんな薄暗い場所にあったらこうなるかもな」
離れは村を囲む森の中に建っていた。
場所を知らなければ、こんな森の奥に家が建ってるなんて誰も気付かないだろう。
「ほらよ」とリンさんはあたしにタオルを渡した。
あたし達はタオルを顔の下半分に巻き、家に入った。
家は探し回るほど大きくなかった。
けど、たんすや机はわりと綺麗なまま残ってた。
大事に使ってたんだろうなってことが伝わる。
あたし達は一つ一つ、引き出しを丁寧に開けて探した。
そして。
「あ」
木でできた机の引き出しを引いた時、あたしは思わず声が出た。
電気の付かない暗い部屋で、青い光がきらりと眩いたから。
あたしはそれを手に取った。
(青いハンコ…)
人差し指ほどの大きさなのに、それが何処となく大きなものに感じた。
存在感、っていうのかな。
ハンコの側面には、龍の紋様が書かれている。
「それか、ばあさんの探し物は」
後ろからリンさんが話しかける。
「うん、見つかった」
あたしは持っていた包みでそっとハンコを包み込んだ。
・・・・・
あたし達は離れを後にし、おじいさんの家に戻った。
見つかったハンコをおじいさんに返した。
おじいさんはハンコをじーーっと見つめると、ほろほろと涙を溢した。
「間違いない、これだ…。ばあさんが大事にしていた青いハンコ…」
おじいさんはそう言うと、奥にある仏壇にハンコを供えた。
「ばあさん、よかったの。2人が一生懸命探してくれたんだ。これで安心して休めるな」
そしてあたし達の方に戻ると、穏やかな笑顔で感謝してくれた。
「ありがとう、なんとお礼を申し上げればいいか…!」
「気にすんな、仕事をしたまでだ。それに、今回はアレンのお手柄だったしな!」
「いや、あたしはそんな…」
すると、おじいさんはあたしの手を取って言った。
「本当にありがとう、アレンさん。これはほんの気持ちじゃが…」
と、おじいさんはあたしに手取りを渡した。
「こんなにたくさん…!」
「それと」
おじいさんは再び仏壇に行き、例の青いハンコを持って来た。
「これを受け取ってくれ(⁉︎)」
「何言ってるの!?そんなのダメに決まってるよ!!」
あたしがそう言うと、おじいさんはハハハ!と声を上げて笑った。
「いいんだ、君たちが離れに行っている時から決めてたんじゃ。どうせわしも死に行く命。託すなら、その宝の価値を分かってくれる者の元に置いておきたいとずっと思っておったんじゃ」
「で、でも、これはおばあさんの…」
「ばあさんもきっと同じことを思っとるはずじゃよ。もらっておくれ、何でも屋さん(‼︎)」
心がギュッとなった。
でもこれはもらうべきだと思った。
おじいさんのためにも、おばあちゃんのためにも。
「ありがとう…」
「またいつでも遊びにおいで」
あたし達はおじいさんに別れを告げた。
帰りの道中、あたしはハンコを大事に抱えながら歩いていた。
「よかったな、宝物ができて」
「うん…」
「あたしら、いつも周りに迷惑かけてるけどさ。感謝されんのって、たまには悪くないだろ?」
「うん。心がポカポカした」
リンさんは添えた夕焼けの空を見上げた。
綺麗な夕焼けだった。
「義勇団にいた時はさ、感謝なんてされたことがなかった。人を守って当たり前。助けて当たり前の世界だったかんな。でも、ダンデリオンに入って、一番最初に助けた人に"ありがとう"って言われた時…あたしも同じ気持ちになった」
「ポカポカしたの?」
「うん…人に感謝されるって、こんなに気持ちいいことなんだなって思った」
こうしてあたしの初任務は終わった。
案外、働くのも悪くないなって思った。
この間久々にU◯Jに行ってきました。
マリオの広場が凄すぎて終始写真音が私の周りで鳴り響いてました笑
ゾンビはちょっと勇気がなくってひたすら避けてました…




