29 少し、昔話をしようか
「おや、アレン。今日は勉強会の日ではなかろう?図書室に籠りっきりとは珍しいな」
「村長!」
村長があたしが読んでいた書物に目を通す。
「随分と難しい本を読んどるな」
「やっぱり??さっきから何言ってるか全然分かんないの…」
机の上に積み上がってる本を吟味し、村長はある本を見て動きを止めた。
「アレン、もしやダンデリオンに興味があるのか?」
「あ、え、……うん」
「リンの影響か」
なんだか心を見透かされてるような気がして、少し照れ臭かった。
「純粋に気になってさ。調べてみよって思ったんだけどどれも歴史とかと絡んで説明してて分かりにくいの…」
「それはそうだろう。世界の歴史を知らねば、なぜダンデリオンという世界最高峰の防衛機関ができたか説明ができぬからな」
「そうなんだ…」
あたしがしょんぼりしてると、村長は本棚からとある本を取り出し、あたしの隣に座った。
「…少し、昔話をしようか」
あたしは村長の持つ本を見て「あ!!」と声を上げた。
「その絵本、読んだことある!」
「本当か」
「うん、でもそれがダンデリオンとどう関係あるの?」
「まぁ、聞いていなさい。すぐに分かるから」
そして、村長はゆっくりと読み聞かせを始めた。
本のタイトルは『ふたりの王さま』だ。
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むかし むかし あるところに
ふたりの王さまかいました。
兄のネイブと 弟のナイトです。
お城には とても大切なお宝がありました。
『ブラッド・フラワー』と呼ばれる 世界で一番美しい花です。
その花には とても不思議な力が宿っていました。
伝説によると どんな願いでも叶えてくれるというのです。
あまりに魅力的なその花を 弟のナイトはずっと独り占めしたいと思っていました。
ある日の夜 ナイトはついに、ブラッド・フラワーをお城から盗み出しました。
ナイトはブラッド・フラワーの力を使い 世界を破滅の寸前まで追い込みました。
しかし 救世主が現れました。兄のネイブです。
ネイブは世界中の人のために懸命に戦い ついに弟のナイトを捕まえることができました。
兄のネイブは弟にブラッド・フラワーを返すように言いました。
ところが 彼はブラッド・フラワーを持っていません。
ナイトは不気味に笑いながらこう言いました。
「花はもうない。花びらをちぎって 空に撒いてしまったからだ」
「これでブラッド・フラワーは永遠に俺のものだ」
怒ったネイブは 弟のナイトをろうやに閉じこめました。
そしてナイトが 日の光を見ることは 二度とありませんでした。
ーーーー
「カノンさんが言ってた。悪い人は必ず最後は征伐されるから、みんなもナイトみたいになっちゃいけないよって」
「そう。ナイトはの国宝のブラッド・フラワーを盗むという世界最大の過ちを犯してしまったのだ」
「ほんとバカだよねー。そんな逃げられるわけないのに!まぁでも絵本の中の話だから、ね!」
あたしは冗談めかして言った。
だけど村長の表情に、あたしは少し違和感を感じた。
「…絵本の中の話…だよね?」
あたしは確認するように聞いた。
だけど村長は首を横に振った。
「これは絵本の中の話ではない。全て、本当の話だ(⁉︎)」
あたしは言葉を失った。驚かずにはいられなかった。
「嘘だ!そんなことあるはずない!」
「そう信じるのは勝手だ。何せ何百年も前のことだからな。実際この話が嘘だと信じるものは少なくない。だが見つかっているんだ。弟のナイトが空へ撒いたという…(‼︎)」
「…花びら?」
村長は首を大きく縦に振った。
「消えた花びらは全部で5枚あると言われている。そして内3枚は既に見つかった(⁉︎)」
「うそ…!」
「世界中にブラッド・フラワーを狙うブルーム・ハンターが続出したのも、その花弁が見つかった影響が大きいからだろう。その上、厄介な予言のせいでここ数十年、世界は再び荒れておる」
「予言?」
「『花びらが再び一つとなった時。ブラッド・フラワーは復活し、世界を破滅へと導くだろう』。この世で一番怖い魔女の言葉だ」
「魔女…」
村長はパタンと本を閉じた。
「そんな荒れた世から人々を救うため、出来たのが世界防衛機関 ダンデリオンだ(‼︎)。ダンデリオンは弱き人々を救うため、何百年もの間ブルーム・ハンターから我々を守ってくれているのだ」
ここでようやく、村長が長い歴史を話した意味が分かった。
「そしてリンさんもその中の一人だった…」
「うむ」
「ありがとう、村長!!」
あたしは図書室を飛び出した。
超特急で家に帰り、扉を思いっきり開けて叫んだ。
「リンさん!!あたし、ダンデリオンに入る!!」
タバコを吸いながら料理をしていたリンさんが、しかめっつらをしながら吐き捨てた。
「はぁ??」
「だから、あたしも入りたいの!ダンデリオン!!」
タバコを灰皿に捨て、机に料理を並べた。
「まーたお前は訳分からんことを…」
「ね、いいでしょ!!村長から聞いたの!悪いブルーム・ハンターをやっつけるの!それにダンデリオンに入ったら世界中を旅できるんでしょ?そしたらあたしの両親も見つけられるかもしれない!」
「んな簡単な仕事じゃねぇ」
「そんなの分かってる!危険な仕事だって!でもやりたいの!決めたの!だから…」
バンッ!!!!という音に体がビクッと反応した。
リンさんが机を掌で思いっきり叩いたのだ。
リンさんは…怒っていた。
「無理だ」
「…え?」
「お前には無理だ」
「なんで決めつけるの!!」
「…来い。表に出ろ」
リンさんは扉を開けて外へ出た。
(リンさんってほんっとに怒りん坊!何だかあたしもイライラしてきた!)
少ししてあたしも外に出た。
裏庭に回ると、リンさんは「おい」と、あたしに太い木の枝をあたしに渡した。
「勝負だ。一回でも私の体にその棒をあたしに当ててみろ。当てられたら、お前が何を言おうが口を挟まねぇ。ダンデリオンにでも何でも勝手になりゃあいい」
「なんで急に勝負なんかしなきゃいけないの」
「なりてぇんだろ?ダンデリオンに」
あたしはハァ…とため息をついた。
リンさんの気まぐれは今に始まったことじゃない。
「当てられなかったら?」
「お前がこの村を出るまで…いやずっと。永遠にあたしの"何でも屋"を引き継いでもらう」
「…わかった。けどいいの?あたしは心波を読んで動きを予測できるけど、リンさんはできないんでしょ?不利じゃない?」
「へっ!アレンのくせに調子こいてるな?殺す気でかかってこいよ…(‼︎)」
その言葉には異常な圧があった。
けど引き下がれない。
あたしはここで、リンさんに勝つしか…!
今まででこんなにルビ(文字の上に書く読み仮名)を振ったことはない。
しばらく絵本は出てほしくないですね^ ^




