27 白状
「「お世話になりましたー!」」
あたし達は大きな声でそう言い、お辞儀した。
「まったく、本当はしばらく出禁にしたいところだが…特にお前だ、リン」
「んな固いこと言うなってドクター!医者は治療をすんのが仕事だろぉ?」
「ケガをする前提でことを進めるな!仮にもアレンの保護者になるのなら、それくらいの自覚はしなさい!」
「わーーーってるって!ちょっとからかっただけだろ?」
2人は和気あいあいと話している。
あたしが目覚めた時、それはもう最悪で。
止まらない吐き気、頭が割れるほどの頭痛、目眩に体の痺れ。
これらに一日中苛まれてた。
「死ななかったからよかったろ!」と言ったリンさんをちょっと本気で殴りたかった。
痛みは二日間も続いたけどなんとか落ち着き、そんなこんなでリンさんも無事退院したってわけ。
「まぁでも…」とドクターはあたしの頭に手を当てた。
「二度もリンに命を救われたんだ。アレン、ちゃんとこっから恩返ししてくんだぞ」
「うん。そのつもり!」
「まじでそういうのいいから!ほら、帰るぞアレン!」
リンさんは顔を赤らめてあたしの手を引いた。
褒められることに慣れてないんだろう。
あたし達は家に帰った。
前に帰ってきたのがもう随分昔のことにように覚えた。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ疲れたっ!!!!」
リンさんはそう言ってクッションにダイブした。
「ほんとに、お疲れ様」
「悪いアレン、風呂沸かしてくれ。今すぐだ」
「うん!」
あたしは家の裏にある薪割りをいくつか取り、それを窯の中に焼べて火をつけた。
ある程度お湯が温かくなったところで、あたしはリンさんを呼んだ。
「リンさん、できたよ!」
「ん、……入る」
少し寝落ちしていたのか、声に元気がなかった。
重そうな体を持ち上げてそのままお風呂に入った。
「ふぁぁぁぁぁ極楽ぅぅぅ」
「熱くないー?」
「聞こえなかったか!極楽だ!」
外にも聞こえるように、リンさんは大きな声で言った。
よかった、とあたしは胸を下ろした。
『二度もリンに命を救われたんだ。アレン、ちゃんとこっから恩返ししてくんだぞ』
ドクターの言葉が蘇る。
ずっと…躊躇してたことがある。
話すべきかどうか。そもそも話していいことなのか。でも…
(リンさんには、言うべきだ)
あたしは腹を決めた。
「リンさん、話したいことがある」
「…それ、ここじゃなきゃダメか?」
「今、話したいの」
壁の向こうでザバーーンとお風呂から水が溢れる音がした。
そして小さな声で「わかった」と言った。
あたしはふぅ、と深呼吸をしてこれまでのことを話し始めた。
あたしの生い立ちのこと、研究所のこと、研究所のみんなのこと、どうしてこの島に来たのか…
何もかも包み隠さず話した。
リンさんは一度も口を挟まず、あたしの話に耳を傾けた(と思う)。
「…これで、全部。リンさんには…リンさんには隠し事をしたくないって思ったから」
「…」
リンさんは何を思ってるだろうか。
顔も見えないし、壁越しだからオーラも感じにくい。
ただただ"無"の時間が流れ、リンさんが最初に口を開いた。
「そのさ、研究所ってとこには今までどれくらいのガキがいたんだ?」
「あたしが覚えてるのは8人。でももっといたと思うよ」
「……許せねぇな」
その言葉からはひしひしと怒りが伝わった。
「その話、村長にはあたしから説明しとく。だけど他の奴らには言うな。また面倒ごとを連れてきたって勘違いする奴がいるだろうから」
「?…わかった」
「それから……あーーいいや、一回出る。いろいろ考えすぎてのぼせそうだ」
そう言ってザパーーンとリンさんがお湯から出る音がした。
あたしも慌てて家の中に戻った。
リンさんはタンクトップにハーフパンツ、そして頭にタオルを巻いた状態で出ていた。
「アレン、お前も入ってこい」
「え、でもさっきなんか言いかけてたよね?」
「あぁ、けどお前が上がってからでいい」
「…わかった」
(なんだろう、モヤモヤするな…)
あたしは自分の着替えを取りに行き、お風呂場に向かおうとした。
「アレン(‼︎)」
リンさんが後ろから声をかけ、振り向きざまあたしの背中をバシっと叩いた。
「痛っ!!何すんの!?」
ビリビリする背中を押さえながらあたしは言った。
するとリンさんは、ただ一言こう言った。
「背筋伸ばして、生きてこう!(‼︎)」
意味が分からなくて、あたしは「え??」と聞き返した。
「背筋伸ばせば、自然と視線は上を向くだろ?お前はこれから、過去も責任も全部背負って歩かなきゃいけねぇ。でも背負い込みすぎればいつか潰れる。潰れねぇためには背負い直せばいいんだ。だから背筋伸ばせ!見上げればよ、見える景色も変わるだろ?」
「……どうしたの?」
リンさんがあまりにらしくないことを言うので、思わず口をついてしまった。
すると「だから!そのっ…」と、少し頬を赤くしながら言葉を籠らせて続きを話した。
「嬉しかったんだよ……お前が、あたしを信用して話してくれたのが……(‼︎)」
その言葉を聞いて、あたしは思わずプッと吹き出して笑ってしまった。
リンさんがさっき言いたかったことは、きっとこれだ。
「なんだよ!!」
「アハハハ!!ごめん、可笑しくって……リンさん、子供みたい」
「う、うるせぇ!いくつ上だと思ってんだ!!」
また目を逸らした。
リンさんは本心を言うとよく目を逸らす。
リンさんに打ち明けてよかった。
リンさんに出会えてよかった。
心からそう思えた瞬間だった。
〜ブラフラ裏話〜
先週の話で慰謝料を断った村長とドクター。
しかしリンとアレンはこの後こっそり裏口に十分な慰謝料を診療所と村役場に置いて行ったそうです。
おかげで貧乏暮らしはまだまだ続きそう…!




