表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラッド・フラワー  作者: 御稲荷 薫
ジョワブル王国/ペティット村編
26/67

26 類

ドクターは引き出しをおぼつかない手で探り、聴診器を取り出した。


異常に震えた手でアレンの胸に聴診器を当てる。


「どうだ、ドクター!!」


顔を真っ白にした村長がドクターに尋ねる。

そんな村長の顔を見ることができないのか、ドクターは体を強張らせてただ首を振ることしかできない。


そんな2人の様子に、大臣はついに痺れを切らした。


「どういうことだシトラトス!!おれぁ死んだガキに会いに来たのか!?」

「も、申し訳ございません大臣様!!まさか、こんな事になっているとは…」

「村長、アレンの手にこれが…!(‼︎)」


ドクターは1枚の紙切れを手に持っていた。

それを村長が無理やり取る。


紙にはこう書かれていた。


『ありがとう

     またね

        アレソ』


「字体を見る限り間違いなくアレンのものかと…」

「とどのつまり、気づいていたんだろう?私が今日ここに来ることに。それで自ら命を絶った。まぁ、よくある話さ」

「………本当に、申し訳が立ちません」


そう言って村長は土下座をした。


「代わりといって済む話ではありませぬが、すぐに慰謝料を用意いたします。どうか、それで気をお沈めにできませぬでしょうか」

「当たり前だ。100万ギルで許してやる」

「ひゃ、100万も!?そんな金この村には…」

「なんだ、文句があるのか?それとも…」


大臣の冷たい視線がドクターを貫く。


「すぐにご用意致します。ですからどうか…!」

「ふん、さすがはシトラトス。世の渡り方を熟知しておる」


そう言って内ポケットからメモ用紙を取り出し、万年筆でサラサラと書きながら言った。


「ここにサインをしろ。期限内に必ず私の元に全額届けること」

「…承知致しました」


村長がサインをした。

それを見届けた大臣はメモを取り返し、「では」と言ってきびすを返すように帰って行った。


「本当に、申し訳ありませんでした!!」

「謝るな、私は国の法に従っただけ。正味ガキのことなどどうでもいいのだ。むしろ思わぬところで金が手に入って満足しとるぞ?ハハハ…」


大臣が見えなくなるまで2人は頭を下げ続けた。

そして怒りの怒号が、部屋に響き渡った。


「リン!!!!!」


村中に響いたのではないかというほどの声量。

あたしも思わず耳を塞いだ。


「アレンに象の家の話をしたな(‼︎)」

「…だからなんだ」

「やはりな…!あれほど釘を刺した!!なぜ言った!?」

「あいつにも知る権利があると思ったからだ」

「貴様のっ、貴様のその軽率な発言のせいで…!」


行き場を失った怒りは涙となって大概に溢れ出た。

村長は膝から崩れ落ちた。


「儚い命が消えてしまったではないか…!(‼︎)」


その姿を見てドクターも涙を堪えきれなくなった。


「象の家は、確かに非道な制度だ…本来あってはならぬもの。そんなことは貴様と同じくらい私にも分かっている!!だが、彼女がここにいることはいずれ必ずバレる。彼女が最も軽症で済む方法が、法を遵守することだったんだ!」

「豪に入っては郷に従うしかない…すまない、アレン…私がきちんと見張っていれば…!」


2人は子どものようにわんわん泣いていた。


(こんな薄汚い世界でも…いい奴ってのはいるもんだな…)


そう心で呟いて、あたしはハッキリと2人に伝えた。



「死んでねぇ」



その言葉に2人の動きはピクッと止まった。

あたしは壁にかかった時計を見ながら言った。


「もうそろそろ頃合いだろう。ドクター、アレンの様子をもう一度確認してくれ(‼︎)」

「リン……まさか」

「いいから」


そう言うと、ドクターはゆっくりと立ち上がって再びアレンの胸に耳を当てた。


ドクン……ドクン……(‼︎)


「鼓動が……!」


村長も口をあんぐりと開けて驚くしかなかった。

そう、話は数時間前に遡る。


ーーーーーーーーー


「え!?心臓を止める!?!?」

「ように見せかける!そう言ったろ?」


村に帰る道中、あたしはアレンをおぶりながら話した。


「お前がさっき買ったブツ。あれは睡眠薬だ。それにコイツを少々入れる…」

「それは?」

「心臓の動きを抑える薬だ(⁉︎)これを飲めば鼓動、呼吸、脈の動きを極限までゆっくりにして死んだふり(・・・・・)をすることができる」


アレンの顔が真っ青になる。まぁ、無理はないだろう。


「そんなものどこで??」

「とある売人からだ。大丈夫、配分を間違えなければ死ぬことはない。あたしが実証済みだ。まぁあの時は死にかけたが…」

「死にかけたんじゃん!!?」

「安心しろ、同じミスはしねぇ!それに、もう方法はこれしかねぇ。死んだ人間を誰も迎え入れちゃくれねぇだろ?」

「うーん…」


アレンは半分納得、半分不安と言いたげに顔を俯かせた。


「奴らが来る1時間前にこれを飲む。ドクターにも一錠だけ睡眠薬を飲んでもらおう。そうだ、遺書も書いた方がそれっぽいよな。お前、字書けるか?」

「少しだけなら。でもうまくいくかなぁ…」

「絶対上手くいく。いや、いかせる!信じろ」


あたしは勇気づけるように力を込めて言った。

少しして、アレンもそれに応えるように決断してくれた。


「…うん、やってみる!」


ーーーーーーーーー


「そいつの体のことも考えて少量しか薬は入れなかったから効果は長くない。あともう1時間もすれば目が覚めるだろう」

「では…アレンは、生きているのか」

「…えぇ、村長。意識はまだ戻っていませんが、生きてます」


ドクターは心の底から安堵した声で伝えた。

村長も全身の力が抜けたのか、手をぶらんと下に落とした。


「まったく…心臓に悪いことをしてくれる」

「あいつを騙すために2人にも黙ってた。本当に悪かった。ごめん」


2人は大きくため息をついた。


「たしかに…褒められた手立てではないな。だがこれで大臣が再びアレンを訪問しに来ることはなくなった」

「彼女はこの国の者ではありませんから、死亡届も出さなくていいですね」

「彼女の存在を知るのは我々だけで済むのか」


村長はコホンと咳払いをし、あたしを目を見てハッキリと言った。


「今回のことは、アレンのためにも大目に見てやる。だが今後このような事を二度とやらないことを誓いなさい。お前は危うく、この村の存在をも危うめるところだったのだぞ」

「二度とやらない。あの大臣に払う金も昨日換金した金から出す。2人にももちろん慰謝料を払う。アレンも了承してくれるだろう」

「我々は良い。アレンの無事を知れたことが慰謝料だ」

「まったくです」

「でも…!」


「それにしても…」と村長はゆっくりと椅子に腰をかけながらあたしの言葉を遮った。


「らしくないな」

「?」

「なぜ彼女を助けた?こんな無茶をしてまで。己にも他人にも厳しいお前のことだ、私情は挟まないと思ったのだが…」

「……私情ねぇ…」


あたしは枕に全体重を預け、腕を組んで天井を見上げた。


「直感…かな」

「…それだけか?」

「分からない。けど、もしアレンが普通のガキだったら…多分助けてない」

「彼女は特別だったのか?」

「それは違う。今までたくさんの子供を見てきた。アレンと似たような生い立ち、いや、もっとひどい子供だっていた。でも…」



『あたし、生きなきゃいけないの!!』

『あなたは心が綺麗だから』

『あたしは!!ただ自由になりたいんだ!!』



「…強いんだ、アレンは。あたしは強いやつが好きだ」


自然と頬が緩むのが分かる。いつの間にあいつのことをここまで気に入ってしまったのだろう。

そんなあたしの様子を見て村長も顔を和ませて言った。


「…なんだか、似ている気がするよ。君たちは」

「ん?そうか?」

「リン、さっきの誓約に追加だ」


村長はゆっくりと腰を持ち上げた。


「アレンを責任を持って育てなさい。先ほども言った通り、今回は上の手から運良く逃れることができた。だがこの先何度もアレンは危ない目に遭うろう。だがそれはアレンの責任ではない、手前の勝手でアレンをた…」

「わーーってるよ。みなまで言うな」


ふぅ、と小さく息を吐いてからいいな?と聞いた。


隣のベッドを見た。

だいぶ効果が切れたのか、スースーと寝息をたてながら腹部が上下しているのが分かる。


自分がしたことに後悔はしない。

自分が始めたのことだ。


「誓うよ。アレンは…」


あたしも村長の問いに答えるようにしっかりと言った。


「あたしが必ず守る」

最近堕落した生活を送りすぎてるので私も強くならなければ…

リン、私にも喝を入れてくれ…!


御稲荷 薫のツイッター↓

@oinarisandayo

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ