22 国の恥晒し
「着いた!目的地の換金所だ」
「…」
「なんだ、元気ねぇな?」
「だって…これから無くなっちゃうんでしょ?カノンさんの船…」
「お前、まだそのこと…」
「分かってる!これがカノンさんのためだって。でも…」
まだどこか納得してない自分がいた。
頭では分かってるけど、やっぱりこれは自分の元に置いておくべきなんじゃないかと考えている自分もいる。
あたしが葛藤していると、ハァ、とため息を吐いたリンさんがポケットから何かを取り出した。
「ほれ(⁉︎)」
「えっ…!?」
模型だった。
てのひらサイズの小さな小さな船の模型。
「いつの間にこんなの!」
「お前が村長と話してた時に船の部品組み替えて簡単に作った。お前の言い分も…たしかに納得できたからな」
「そんな簡単にできることじゃ…!」
「いらねぇなら返せ。もらうなら…素直にもらっとけ」
リンさんは少し恥ずかしそうに顔を背けた。
「…ありがとう。大事にする」
あたしは壊れないようにハンカチで模型を包み、ポケットにしまった。胸の中がじんわり温かくなる。
「さ、入るぞ」
「うん!」
あたし達はお店の中に入った。シティ・セントロの中でもかなり立派な建物だ。
換金所ってところに物を売ると、それに見合ったお金をくれるそうだ。
リンさんによると、カノンさんの船はかなりの価値があるから期待できるって言ってた。
受け付けで手続きを済ませて、あたし達は待合室で待った。
「17番でお待ちのフィル氏」と呼ばれ、あたし達は鑑定室に移動した。リンさんはもう一度フードを深く被り直した。
「ごきげんよう、フィル氏。この度は何を蔵に入れましょうか?」
陽気な鑑定人が部屋で貼り付いたような笑顔であたし達を出迎えた。
「この船を。海に漂着したところを拾いました。機械仕掛けで珍しい部品もあるかと思われます。ぜひ鑑定をよろしくお願い致します」
また普段と似つかわない口調でリンさんは鑑定人に言った。
「では」と鑑定人は査定を始める。
虫眼鏡を取り出してあらゆる角度から、時々「おぉ」などと声を上げながら鑑定を進めた。
とても変だと思ったけど、これが普通なのかな?と横を見ると、リンさんは今にも吹き出しそうに笑いを堪えていた。
普通じゃないんだとすぐに察した。
「これはなんとまぁ…!!」
鑑定人が声を上げる。
「いゃあ、素晴らしい。奥様、なかなかの上物を」
リンさんはうふふと笑った。
「ここでは中々手に入らない品物かと存じます。ぜひご贔屓を」
「ええ、ぜひそうさせていただきたい!」
「やった!やったね姉さん!」
あたしはパッと顔を輝かせた。
「しかし、それはそうとフィル氏」と、鑑定人は急に声を暗くした。
「この住民証明書によると、ご出身はハルムダ村のようですね?(‼︎)」
「えぇ」
また出身の話だ。あたしは嫌な予感がした。
「フム。ウチは基本アウトフォレスター断っている。出品者がアウトフォレスターってだけで売値は半減。ろくな商売にならねぇからな」
「いつものことですよね?それを分かった上で私たちを招き入れたのでしょう?」
急に口調を変える鑑定人を他所に、リンさんは表情一つ変えずに聞く。
「そりゃこの品がとんでもねぇものだからさ!これにはこの国にはない鉄や技術がふんだんに使われてる。売りゃあ相当な値がつくぜ。だから今回は特別に買ってやろうってわけだ」
「それは感謝致します。では、査定結果は?」
鑑定人はリンさんの目を見て「15万ギル」と言った。
「少なすぎます」とリンさんら即座に反論した。
「何が少なすぎますだ。そっちの人間にしたら喉から手が出るほど欲しい額だろう??」
「この船にその額は見合ってないって言ってるんです。分かりませんかねぇ?」
「て、てめぇ…セントロの人間に向かって生意気な口叩くなよ!?次言ったらすぐ義勇団にチクるからな!!」
(またあたしの知らない言葉。ギユウダン??)
鑑定人が怒ると、リンさんはフゥとため息をついた。
「てめぇに一つ、いい事を教えてやる(‼︎)」
急にいつもの口の悪いリンさんに戻る。
そして被っていたフードをハラリと脱いだ(⁉︎)
リンさんの顔を見た瞬間、鑑定人は金縛りにあったように体を強張らせた。
「お、お前は…!」声を絞り出して言う。
「まだ生きてたのか…この国の恥晒しが!!」
「分かったならさっさと金を用意しろ。200万ギルだ」
「何を!?」
「交換条件だ。代わりにあたしを国に売る権利をてめぇにやる(⁉︎)もう逃げ疲れたんだ。この通り、武器もない。あたしを国に売れば…いくらの金が返ってくるかねぇ?」
「そんな都合のいい話があるか!!」
「嫌ならいいさ。帰らせてもらおう」
「い、いや、待て!!」
そう言って鑑定人は机の中をガソゴソ漁り、あるものを取り出した。
それをガシャンとリンさんに取り付けた。
「手錠か?」
「これで逃げれねぇな」
と言い、鑑定人は裏に行ったと思いきや、意外と早く戻ってきた。
そしてスーツケースを開けて中身を確認させた。
「現金200万ギルだ」
「…たしかに、金は受け取った。おい、受け取れ。絶対離すなよ?(!)」
リンさんはフードを再び被りながら言った。
あたしは恐る恐るケースを受け取った。
あまりにも重たくて地面にガンと落としてしまったが、なんとか手に持った。
鑑定人はケースと共に電話を手にしていた。
「これで俺は国の英雄…!待てよ、もしかするとこの功績が認められて貴族に昇進してシティ・ロマーノに住むことだって夢じゃない…!」
そんなことをぼやいていると、リンさんは勢いよく鑑定人が持っていた受話器を蹴飛ばし、破壊した(⁉︎)
「てっ、てめぇ!!」
「逃げるぞ!」
「うわっ!」
「このっ!!待て!!!」
リンさんは手錠をしたままあたしを肩に抱え、窓を割って店の外に出た。
「へへっ、せめて足に掛けるべきだったな!」
リンさんは勝ち誇ったようにつぶやく。
あたし達が店を出て数十秒後、怒り狂った様子で鑑定人が現れ、大きな声で叫んだ。
「誰かそいつを捕まえろ!!あいつは国家認定のA級犯罪者、ステニー・トンプソンだーーー!!(⁉︎)」
〜ブラフラ裏話〜
少し話は遡ってレイブン研究所編。
レイブンは花の契約後、娘のカノンの血をベースに人間を野性化させる研究を行っていました。
カノンが子供たちに贖罪をしたかったのは、このような意味も含まれていたのです。




