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ブラッド・フラワー  作者: 御稲荷 薫
ジョワブル王国/ペティット村編
19/67

19 木が集まって、森となる

リンさんがあたしを超えて船に近づこうとしたから、足にしがみついて抵抗した。

だけど呆気なく振り払われてあたしは床を転がった。


リンさんが船に滑車を付けようとする。

させるまいと立ち上がり、今度は背中をボコボコ叩いた。


リンさんはあたしを押し倒し、あたしは再び床に倒れる。

もう一回立ち上がって、あたしは背中にしがみついた。


「アレンちゃん!良しなさい!!」

村長の声に負けないようにあたしも大きな声を張り上げる。


「これはあたしの船よ!!何でリンさんなんかに取られなきゃいけないんだ!!」


ここで、リンさんの堪忍の尾が切れた。

ものすごい勢いであたしを押し倒す。


「お前、ほんっと分かってねぇな!!?(⁉︎)」


リンさんの荒い息遣いがすぐそこで聞こえる。


「これはお前の船でもあたしの船でもねぇ、カノンの船だ!!そしてカノンはそれをお前に託した。生きて欲しいからだ!!(⁉︎)いいか、生きるには金が必要なんだ。残念だがあたしにはお前を育てる金も義理もねぇ。けど人間として(・・・・・)、カノンが遺したその想いは無視できねぇ!なのにお前はそれを踏みにじろってか!?大した小娘だ!!」


その勢いに押し負けそうになった。


「あ、あたしはそんなつもりで言ったわけじゃ…!」

「結果そうなってんだろ?甘ったれんな。お前は今、命の恩人に一番ひでぇ仕打ちをしようとしてんだぞ?(‼︎)」


何も言い返せなかった。


何も考えてなかった。


自分の事しか考えてなかったんだ。


「大好きなんだろ?カノンってやつのこと」

「うん…」

「ならお前ができることは何だ?」

「……カノンさんのために…みんなのために、生き延びる」

「カノンのためじゃねぇ。てめぇのためだ(‼︎)」


リンさんはあたしから手を離した。


「ありがとうリンさん」

「フンっ」


リンさんが船を移動させるための残りの作業に取りかかった。


棒立ちになっていたあたしに、村長が声をかけてくれた。


「怪我はないかい?」

「うん」

「リンはな、短気で荒っぽくて口も悪いから、村でも少し距離を置かれてしまうことがある。だけど彼女は常に自分が正しいと思う方に進む。彼女の中の一本の軸は昔からしてブレることはないんだ」

「リンさんはずっとこの村に住んでるの?」

「いや、でも私はずっと彼女を知っていた。己の信念に忠実で、何事にも“まっすぐ“。変わらないよ、あいつは」


"まっすぐ"という言葉がリンさんの背中とピッタリ重なった。


「おい、行くぞ」


リンさんがいつの間に作業を終わらせ、あたし達の前に立っていた。


「何話してたんだ?」

「何でもさ。それと、リン。釘を刺すつもりはないが…」

「わーーってるって。これはカノンのものだからあたしが勝手に売るわけにはいかねぇだろ?だから代理人として連れてくだけだ」

「…なら良い。アレンちゃん、気をつけて行ってきなさい」

「…うん、いってきます」


(何が“良い“んだろう?)


少しモヤモヤした気持ちを残したまま、あたし達は役場を離れた。


・・・


村の入り口を通り過ぎると、本で見たことがある風景に囲まれた。


「これが、森?」

「“中間の森“。王国と村の間を縦断してる。結構歩くぞ。へばったら置いてく」


足場も結構悪いのに、リンさんは船を引きながらスイスイと進んでいく。

あたしは置いてかれないようにしながらリンさんに話しかけた。


「あたし、森って初めて見た。森って、木がたくさん集まって森になるんでしょ?」

「…別に驚くことでもねぇだろ?」

「ううん、すごいよ。あたしが知ってる木はあたしの背の高さくらいにしかならないもん」

「…あっそ」


スピードを落とさずに進み続けて、あたしも歩くのが精一杯になっていた。

リンさんとの距離も徐々に離れていく。見失ったら終わりだ。


(後どれくらい歩かなきゃいけないんだろう…?)


すると、リンさんが急に歩みを止めた。そして被っていたフードをさらに深々と被る。


「おい」


リンさんが顎で隣に来るように促す。

最後の力を振り絞ってリンさんの隣に立つ。


リンさんが上を見上げていたから、あたしも同じように上を見た。


あたしは思わず声を漏らした。


「うわぁ……!」


あの研究所(ラボ)よりも大きな建物。

絵本で見たことがある。お城だ。

お姫様と王子様が住んでるところ。

見上げきれなくて首が折れてしまいそうだった。


「すごい!今からあそこに行くの??」

「いや」


期待で胸がドキドキしてるあたしとは反対に、リンさんは暗い暗い声で言った。


「アレン 。あたしがお前を連れてきた理由はもう一つある(‼︎)」

「…なに?」

「お前の知りたいことが全部ここにあるからだ。世界がどんな場所で、どんな奴らがいて、どんな暮らしをしてるのか。…知りてぇだろ?」

「…うん」


リンさんはフワッと笑った。どこか悲しい笑顔だった。


リンさんはあたしに何を見せたいんだろう。

この先あたしは、一体どうなるんだろう…

梅雨が明けて暑くなってきた…!

夏だ夏だ夏だーーーーー!!!!


御稲荷 薫のツイッター↓

@oinarisandayo

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